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アングル:カタールがサッカーW杯前に巨額投資、宴の後の失速に懸念

発行済 2022-05-08 07:43
更新済 2022-05-08 07:45
© Reuters. FILE PHOTO: Vehicles are seen in a traffic jam in front of government buildings next to skyscrapers in Doha, Qatar December 21, 2021. REUTERS/Amr Abdallah Dalsh

[ドーハ 5日 ロイター] - サッカーの2022年ワールドカップ(W杯)が開催されるカタールの首都ドーハ。海辺の計画都市・ルサイルでは、砂漠をパリのシャンゼリゼ通りのような大通りに生まれ変わらせる3億ドル規模の建設プロジェクトが進行中だ。その影に隠れるように一軒だけコンビニがある。

ルサイルにはメインスタジアムのほか、超高層ビル4棟や約20万人が入居できるマンション群が建設される。コンビニの店長、ヨウネスさんは、今年11月にW杯が開幕すれば商売が繁盛すると予想しながらも、どこか不安げな面持ちでレジに立っていた。

「W杯後に何が起きるだろうか。商売が悪くなるか良くなるか、私たちには分からない」と話す。

天然ガスが豊富なカタールは、W杯誘致が決まってからの11年間でインフラ整備に少なくとも2290億ドルを投じた。中東のライバルであるドバイやアブダビの劇的な変化に倣う狙いだ。

カタールはエネルギー依存から脱却するため、経済の多角化を推進。地域のビジネス拠点になり、観光客を2030年までに新型コロナウイルス感染拡大前の2019年から約3倍となる年間600万人に増やす目標を掲げている。

だが、アナリストや学者は、28日間のW杯終了後にその夢がかなうとは考えていない。

カタールは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など中東のライバル勢との厳しい競争に直面している。こうした国々の市場は既にしっかり根を下ろしており、観光客の種類も多様だ。

小国ながら資金豊富なカタールはそんなことにはひるまず、国際舞台にのし上がるために投資を進めた。建設ブームがピークを迎えた2016年には、国内総生産(GDP)の18%をインフラ建設に支出。過去のW杯開催国よりはるかに多くの資金を投じた。

南アフリカは2010年、W杯に向けたインフラ整備に33億ドルを支出。ブラジルは14年のW杯で116億ドルのインフラ投資を行ったが、プロジェクトの半分は実行されなかった。

しかし、ルサイルは違う。今年4月には600店舗を擁するショッピングモール「プラス・バンドーム」がオープン。パリをイメージして設計され、買い物客は水路からボートで到着、音楽に合わせて吹き上がる噴水を眺めながら屋外で食事ができ、「クリスチャン・ディオール」や「ルイ・ヴィトン」といった高級ブランドの巨大店舗も営業する。

カタールはサッカーの競技場だけでなく、高速道路や地下鉄網、港湾、空港にも多額の資金を投じた。

だが、W杯後には新たな建築物の大半で「閑古鳥が鳴くのではないか」との懸念もある。外国人居住者が流出し、需要が落ち込み、非エネルギー部門経済が減速するかもしれないからだ。

アラブ湾岸諸国研究所(ワシントン)の上級研究員、Robert Mogielnicki氏は、多くのインフラはW杯後に別の目的に転用する必要があると指摘した。

<跳躍台>

カタール政府高官はロイターの取材に対し、中東で初めてのW杯は、訪問客を呼び込む「マーケティングの跳躍台」になるという政府の見方を明らかにした。

南アフリカでは2010年のW杯をきっかけに観光ブームが始まり、訪問者はパンデミック前の最多となった19年の1020万人まで着実に増えていた。19年には観光業がGDPの10%近くを占めた。当局者らが明らかにした。

カタールの企業や民間投資家は政府の支援を受け、何十億ドルもの資金をショッピングモールやホテル、住居用物件、テーマパークといったベンチャー事業に投じている。

カタール計画・統計局の2021-23年経済見通しによると、これまでのところ政府を後ろ盾とした建設ブームは非エネルギー部門経済をけん引しており、建設部門はGDPの約12%を占めている。

建設業はカタールの労働人口の約半分を占め、そのおかげもあって人口は2011年から67%増えた。

だが、建設ブームの終了に伴い、非エネルギー部門経済は減速する見通しだ。

不動産業者やアナリストの話では、新たなマンションは国内全体で少なくとも6万4000室がW杯の観客の宿泊用に確保されている。このため現時点では住居への需要は強く、開幕に向けてさらに強まる見通しだ。

しかし、W杯後に部屋が空くと、市場に物件があふれ返る恐れがある。

<ガスへの回帰>

世界最大級の液化天然ガス(LNG)生産国であるカタールは1人当たりの資産額も世界屈指で、人口約280万人の85%は外国人居住者だ。

だが、国際通貨基金(IMF)の推計では、W杯後には人口が年間約1.2%のペースで減少し、27年には250万人になる見通しだ。

東南アジアから来た建設作業員の多くも、建設ブームの収束に伴って出国すると見込まれている。

ジョージタウン大学カタール校の経済学教授、アレクシス・アントニアデス氏は、終わりが近いプロジェクトに取り組んでいるエンジニアやデザイナー、管理者といった高給のホワイトカラー専門家もカタールから離れると話した。

ルサイルのコンビニの店長、ヨウネスさんが気がかりなのはそこだ。「ワールドカップが終わったら、これらは空っぽのビルになるかもしれない。見て下さい、マンションだらけでしょ。住居が多過ぎる」と建物群を見上げた。

IMFはカタールの経済成長率について、今年はW杯効果で3.4%になるが、24年には1.7%に減速すると予想している。

ただ、たとえ非エネルギー部門経済への投資が実を結ばなかったとしても、天然ガスが再び経済を支え続けるだろう。ロシアのウクライナ侵攻が世界的なエネルギー危機に拍車をかけ、LNGの需要は強まっている。

IMFの予想では、カタールの経済成長率は、新たなLNG生産施設が稼働する27年には3.8%に回復する見通しだ。

(Andrew Mills記者)

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Major projects in Qatar by value https://tmsnrt.rs/3KLgB58

Qatar: population (1980 - 2027) https://tmsnrt.rs/3vH8LVF

REFILE-ANALYSIS-Qatar scores as World Cup host but may not net long-term goals

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