[フランクフルト 18日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事はロイターとのインタビューに応じ、7月の利上げ以降ユーロ圏のインフレ見通しは改善していないと述べ、来月の大幅な利上げを支持する考えを示唆した。
「7月に50ベーシスポイント(bp)の利上げを決めたのは、インフレ見通しを懸念したからだ」と説明。「7月に抱いた懸念は和らいでいない。この見通しが基本的に変わったとは思っていない」と述べた。
9月の利上げ幅は政策立案者の間で25─50bpで分かれており、シュナーベル氏の発言は同氏が積極的な利上げを主張する可能性を示唆している。
インフレ高進を受け市場ではECBの利上げ観測が高まり、現在は9月に55bp、年内に累計118bp利上げの可能性を織り込む。
問題は、エネルギー価格高騰が購買力を低下させ成長が鈍化しても、ECB目標の4倍以上となっているインフレ率がなお上昇する可能性があることだ。
シュナーベル氏は「短期的には、インフレ率がさらに上昇する可能性は排除できない」とし、「このようなインフレ圧力はしばらく続くとみられる。インフレ率が2%に戻るまでしばらく時間がかかるだろう」と述べた。
インフレ率は今後数年で急激に低下する公算だが、ここ数四半期はECBの予測が間違ってきたため、政策決定では実際のインフレ率により重きを置く必要があると指摘した。
<景気後退リスク>
ECBは、ユーロ圏にリセッション(景気後退)が差し迫る中で引き締めの必要に迫られている。
シュナーベル氏は景気後退のリスクを認めながらも、インフレ期待が不安定化する兆候がいくつもあると述べた。
「特に、ロシアからのエネルギー供給がさらに支障をきたせば、テクニカルリセッションに陥る可能性は否定できない」と述べた。
さらに「干ばつや主要河川の水位低下による供給サイドのショックで、経済成長の下振れリスクも高まっている」と指摘し、「ユーロ圏の大国の中でドイツが最も大きな打撃を受けているようだ」と語った。
景気後退は物価上昇圧力を弱めるだろうが、インフレ率を目標に戻すには十分ではないと予想した。
利上げは、域内の金利上昇に不均衡が生じ、イタリアなど多額の負債を抱える南欧諸国の借り入れコストが跳ね上がるリスクをはらむ。ECBはここ数週間、市場の圧力を緩和するために南欧諸国の国債を重点的に購入している。シュナーベル氏は、ボラティリティーが依然高く流動性は低いものの、市場は現在より安定していると述べた。