[31日 ロイター] - 日銀の中川順子審議委員は31日、函館市金融経済懇談会であいさつし、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比伸び率が2%を超えているものの、日銀が目指しているのは緩和的な金融環境が企業収益の増加や労働需給の改善を促し「賃金と物価が持続的に上昇していく好循環の形成だ」と指摘した。好循環が実現し、賃金上昇を伴う形で物価目標を持続的・安定的に実現できるよう、引き続き金融緩和を継続する必要があると語った。
9月末に期限を迎える新型コロナウイルス対応の特別オペについては「感染症の影響について見極めた上で、次回9月の決定会合で取り扱いを検討する」と述べるにとどめた。
日銀が月次で発表している物価の基調を示す指標では、品目ごとの上昇率分布で上下10%を機械的に除いて算出した「刈込平均値」が7月に前年同月比プラス1.8%となる一方、品目別分布で最も頻度の多い上昇率である「最頻値」はプラス0.7%にとどまっている。中川委員は、一部の原材料高が反映される財・サービスにけん引される形での価格上昇がみられているが「全体としてみると、原材料価格の上昇ほどには販売価格は上昇していない」と述べた。
中川委員は、物価高の影響を受けつつも、感染抑制と消費活動の両立が次第に進み、雇用・所得環境も改善していくもとで、個人消費も緩やかに増加していくことが「基本シナリオだ」とする一方、こうしたシナリオには一定の不確実性があるとして、物価上昇が家計の消費に与える影響は注意して見ていく必要があると述べた。
(和田崇彦 編集:青山敦子)