[東京 2日 ロイター] - 桜井真・元日銀審議委員は2日、ロイターとのインタビューで、景気回復が続けば来年、次の日銀正副総裁の下で金融緩和の微調整を行う可能性があると述べた。具体的には、10年金利の許容変動幅の拡大、誘導対象の短期化、マイナス金利の撤廃などが考えられるとした。
もっとも、微調整は金融緩和の範囲内で行うことになると強調。当面はイールドカーブ・コントロール(YCC)が続き、次の執行部の下で出口戦略に踏み切ることができるかは不透明だと述べた。
日銀は9月の金融政策決定会合で、新型コロナウイルス対応の特別オペを来年3月に終了することを決めた。桜井氏は「日銀はこのまま動かないだろう」と指摘。来年4月までの黒田東彦総裁の任期中は金融政策やフォワードガイダンスの修正は考えにくいと語った。
日銀は10月の決定会合で取りまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しを前年度比プラス2.9%に引き上げた。23年度も引き上げてプラス1.6%としたが、物価目標の2%は下回った。
桜井氏は、来年1月くらいが物価上昇のピークになる可能性が高いと発言。23年前半はコアCPIの伸び率がプラス3%前後で推移するものの、同年後半には伸び率が縮小するとの見方を示し「展望リポートの物価の見通しは妥当なのではないか」と話した。
桜井氏は、政策の微調整のためには国内景気の回復が続くことが条件だと強調。「来年、平均で1.5―2%程度の成長が維持できるのであれば微調整も可能になってくるかもしれない」と述べた。リスク要因として、世界経済の減速を挙げた。
政策の微調整の場合、具体的には10年金利の許容変動幅の拡大、YCCの下での誘導対象の年限短期化などが考えられるとした。実体経済が良好で安定していれば、マイナス金利の撤廃もありうると述べた。
ただ「あくまで微調整で、金融緩和ということは変わらない」とした。物価情勢によるものの、米国のような連続利上げは考えにくく「微調整したまま、その状態がしばらく続くと思う。日本経済が今、それほど活力があるわけではない」と語った。
今回の物価高局面で物価が上がりにくいという日本社会に根づいた意識が変化し、持続的なインフレになる可能性は「まだない」と述べ、「需給ギャップが大幅にプラスの状況が続けば、ディマンドプルによる物価高で金利を上げていく選択肢も出てくるかもしれないが、おそらくそういう展開にはならないだろう」と話した。
(和田崇彦、木原麗花)