[ロンドン 31日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は31日公表した2023年の世界経済見通しで、英国の成長率を主要7カ国(G7)で唯一下方修正した。
IMFは、低迷する英経済が今年0.6%のマイナス成長に陥ると予測。昨年10月の前回予測では0.3%成長を見込んでいたが、大幅に下方修正した。
トラス前首相による「ミニ予算」発表で失った投資家の信頼を回復しようと、ハント財務相が年末に発表した増税も一因で英経済は苦戦を強いられると予想。また、英国は発電の大部分をガスに依存しているため、ロシアのウクライナ侵攻後のガス高騰で特に大きな打撃を受けており、労働者不足も足かせになっていると指摘した。
イングランド銀行(英中央銀行)は、インフレ高進リスクを回避するために政策金利を大幅に引き上げたが、これも大きな打撃となった。
IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は記者団に「これらの要因を全て合わせると、23年にはかなり急激な経済活動の縮小が起こるだろう」と述べた。
対照的に、22年の英経済は欧州諸国で最高水準の4.1%成長を達成する見込みだとした。
IMFのペチヤ・コエバ・ブルックス調査局長代理は、英国は米国などよりも変動金利型住宅ローンの割合が大きいため、金融政策の伝達はより即効性があり、迅速だと指摘した。
英国はG7で唯一、新型コロナウイルス禍前の経済規模を回復しておらず、欧州連合(EU)離脱が足かせになっているとみられている。
ハント財務相はIMFの報告書を受け、ほぼ全ての先進国が逆風に直面しており、IMFなどの過去の英経済見通しは暗すぎたことが証明されていると発言。「短期的な課題によって、長期的な展望が見えなくなるようなことがあってはならない」と述べた。
ハント氏は3月15日に発表する予算案で、成長加速に向けた施策を打ち出す予定だが、与党保守党からは即時減税を望む声が上がっている。
IMFは24年の英成長率を0.9%と予測。前回予測から0.3ポイント引き上げたが、なお日本、イタリアと並んでG7で最も低い水準だ。