[10日 ロイター] - 米カリフォルニア州の銀行規制当局は10日、米金融持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行を閉鎖した。金融危機以降で最大の米銀破綻となり、株式市場では世界的に銀行株が売られ、巨額の時価総額が吹き飛んだ。
規制当局は米連邦預金保険公社(FDIC)を管財人として選任し、その管理下でシリコンバレー銀行の資産が処分されるという。
新興テクノロジー企業を主な取引先とする同行は、昨年末時点で総資産が約2090億ドルと全米16位だった。米銀の破綻としては、2008年の金融危機で起きた貯蓄金融機関ワシントン・ミューチュアルの破綻以来の規模となる。
突然の破綻の背景は多岐にわたるが、米連邦準備理事会(FRB)によるこの1年の積極的な利上げでスタートアップ業界の資金調達など財務面の状況が悪化したことも大きく影響したようだ。
シリコンバレー銀行は預金減少に対処するため資本調達を試みたが、FRBの利上げで価値が大きく低下した米国債で18億ドルの損失を出した。
FDICの声明によると、シリコンバレー銀行の本店および全支店は13日に再開され、遅くとも同日午前には預金引き出しに応じる。FDICによる保護対象の預金全額にアクセスできるという。
ただFDICによると、昨年末時点で同行の預金1750億ドルのうち89%が保護の対象外だった。こうした預金の扱いは未定だ。
ゲーム開発のロブロックスや動画配信機器のロクはシリコンバレー銀行に数億ドルの預金があると明らかにした。ロクは大部分が預金保護の対象外とし、株価が引け後の取引で10%急落した。
関係者によると、FDICはこの週末、シリコンバレー銀行との統合に応じる金融機関を探す予定。保護対象外の預金を守るためにも13日までに経営統合を取りまとめたい考えだが、合意が成立するかは不透明という。
<利上げ局面で銀行の脆弱性が表面化>
8日の資本増強策発表後に急速に悪化したSVBの問題は、FRBなど主要中央銀行が進める利上げの中で市場が抱える脆弱性を露呈した。
ロイターの試算によると、米国の銀行株が失った時価総額は過去2日間で1000億ドル以上。欧州の銀行株は約500億ドルを喪失した。10日の市場では地銀も値下がりした。
一部アナリストの間では、銀行セクターの隠れたリスクや資金調達コスト上昇への脆弱性を巡る懸念から、影響がさらに波及するとの懸念もある。
ウォーレン・グローバル・アドバイザーズの会長、クリストファー・ウォーレン氏は「来週は血の雨が降るかもしれない。銀行は問題を抱えており、空売り筋があらゆる銀行、特に小規模の銀行に売り仕掛けしようとしている」と述べた。
米財務省の声明によると、イエレン財務長官は10日、FRB、FDIC、通貨監督庁(OCC)の関係者と会談し、シリコンバレー銀行の動向について協議。イエレン長官は「銀行規制当局が適切に対応することに全幅の信頼を寄せており、銀行システムはなお弾力的で、規制当局はこのような出来事に対応する有効な手段を有している」と指摘したという。
ホワイトハウスも金融当局への信頼を表明。米大統領経済諮問委員会(CEA)のラウズ委員長は、米銀行システムは2008年の金融危機時より根本的に頑強だと強調した。
バンクレイトのアナリスト、マシュー・ゴールドバーグ氏は「2020年以来初の銀行破綻は警鐘を鳴らす」と指摘。「銀行破綻がない、または銀行破綻が少ない時期であっても、自身の預金が安全でFDICの上限額や規制の範囲内にあることを常に確認する必要がある」と述べた。
10日の米国株式市場では、S&P500地銀株指数が4%下落。週間の下落率は18%に達し、09年以降で最大となった。S&P500銀行指数はこの日0.3%安。週間では11%超の下げとなった。