Kentaro Sugiyama
[東京 23日 ロイター] - 岸田首相は23日、臨時国会の所信表明演説で、30年ぶりとなる日本経済の変化の兆しを後戻りさせないよう設備投資などによる「供給力の強化」と、税収増分の「国民への還元」を車の両輪として総合経済対策を取りまとめると述べた。物価高による家計負担を緩和するため、税収増分を国民に還元する措置を与党の税制調査会で早急に検討するよう指示する考えも示した。
首相は冒頭、「私の頭の中に今あるもの、それは『変化の流れを絶対に逃さない、つかみ取る』の1点だ」と述べた。そのための「一丁目一番地」は経済だとし、賃上げ率や株価など30年ぶりの水準に改善してきた今こそ大胆な取り組みに踏み込む必要があると強調した。
GDPギャップが解消に向かう中、経済対策では「供給力の強化」が第1のポイントになると説明。半導体や脱炭素のように安全保障に関係する大型投資をはじめ、「特に2年から3年以内に供給力強化に資する施策に支援措置を集中させ、変革期間の呼び水とする」と語った。
「国民への還元」は、急激な物価高に対して賃金上昇が追いつかない現状を踏まえ、一時的緩和措置として取り組む。首相は、所得税減税などを念頭に「税収の増収分の一部を公正かつ適正に還元し、物価高による国民の負担を緩和する」と述べた。
首相は、物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組み拡大や、エネルギー価格、電気・ガス料金の激変緩和措置を来春まで継続することも表明した。
<日中関係、首脳レベルでも対話を進める>
日中関係については、建設的・安定的な関係という考えのもと「首脳レベルでも対話を進めていく」と語った。東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡って中国政府がとっている日本産水産物の輸入停止措置に対し「即時撤廃を求める」とし、同時に、中国市場に依存しないよう販路拡大を支援する考えも示した。
日ロ関係は領土問題を解決し、平和条約を締結する方針を堅持。防衛力の抜本的強化のための税制措置の実施時期については、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向などを踏まえて判断していくと述べた。
また、皇族数の減少への対応も国の基本にかかわる重要な課題だと指摘。「立法府の総意」が早期に取りまとめられるよう、国会での議論進展に期待を示した。
首相は「歴史的な転換点の中で、変化の流れをつかみ、変化を力にしていく。私自身、その先頭に立って、職を賭して粉骨砕身取り組む覚悟だ」と締めくくった。