[エルサレム 23日 ロイター] - イスラエル銀行(中央銀行)は23日、政策金利を4.75%に据え置くと決定した。金利水準は2006年終盤以来の高水準。中銀は、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突を受けた通貨シェケルの下落によるインフレ高進を防ぐ必要があるとした。
据え置きは3会合連続で、予想通り。政策金利は昨年4月は0.1%だったが、中銀は10会合連続で利上げを実施。その後、7月と8月に金利据え置きを決定していた。
ヤロン中銀総裁は記者会見で、イスラエル経済がハマスとの戦争で打撃を受けるのは必至だが、すぐに回復すると予想。政策決定委員会は2日間にわたり経済が戦争で受ける影響について討議し、金利据え置きを決定したとし、「現時点で利下げを行うことで需要が押し上げられるとの見方にかなりの懐疑感を持っている」と述べた。
同時に、イスラエルのリスクプレミアムが上昇したとも指摘。金融面で問題が起きれば、実体経済にも大きな問題が生じるため、金融システムが確実に機能しているようにしたいと語った。
イスラエルのインフレ率は9月に3.8%と、前月の4.1%から緩和。ただ、目標レンジの1─3%はなお上回っている。当局者は、現時点で急激な利下げを行えば、すでに対ドルで8年半ぶりの低水準にあるシェケル相場が一段と下落し、インフレ高進につながると警告している。
中銀はインフレ率について、24年は2.9%、同年末には2.5%に低下すると予測。経済成長率予測については、10月7日に始まったハマスとの戦闘を受け、23年は2.3%、24年は2.8%にそれぞれ下方修正した。従来は両年とも3.0%と予測していた。
政策金利については、24年に4.0─4.25%に低下するとの見方を示した。
ヤロン総裁は、この予測は第4・四半期中は紛争がガザ地区との境界近辺のイスラエル南部にとどまるとの見通しに基づいていると言及。北部のレバノンとの国境地帯での親イラン武装組織ヒズボラとの戦闘激化など、紛争全体が拡大すれば予測は大きく変化するとした。
イスラエル政府当局者がハマスとの戦いに必要な財源を拠出すると表明する中、中銀は債務の対国内総生産(GDP)比が22年の60.5%から23年は62%、24年は65%に拡大すると予測している。
ヤロン総裁は「責任ある財政政策の継続が重要」とし、「市場ではイスラエルの動向がこれまで以上に注目されているため、責任ある財政政策を継続するということを市場に伝えることが重要になる」と語った。
イスラエルの格付けを巡っては、フィッチが17日、ハマスとイスラエルの衝突が大幅にエスカレートすれば、格付けにマイナスの影響が及ぶ恐れがあるとし、ソブリン債格付け「Aプラス」を「ネガティブウォッチ」に指定。ムーディーズは19日、格付け「A1」を引き下げ方向で見直すと発表した。