John Revill
[チューリヒ 21日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行)は21日、主要金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げ、1.50%とした。予想外の決定で主要中銀として初めて利下げに踏み切った。
ジョルダン総裁が任期満了を待たずに9月末で退任すると発表して以来初の金利決定だった。
ロイター調査では大半のアナリストが金利を1.75%に据え置くと予想していた。スイス中銀の利下げは9年ぶりとなる。サイトデポジット(要求払い預金)金利も1.50%に引き下げた。
この決定を受け、通貨スイスフランは対ユーロで8カ月ぶりの安値を付け、スイス国債利回りは低下。一方、スイス証券取引所に上場する株式は上昇した。
スイスのインフレ率は2月に1.2%へ低下し、9カ月連続で中銀が目標とする0─2%内となった。
中銀は声明で「過去2年半のインフレとの闘いが効果的であったため、今回の金融緩和が可能になった」と説明した。
インフレ率は数カ月前から2%を下回り、物価安定の範囲内にあると指摘。最新の予測によると、今後数年間この範囲にとどまる可能性が高いとした。
インフレ圧力の低下と過去1年間の実質的なフラン高を考慮。「政策金利の引き下げは経済活動も支援する」と表明した。
最新の経済予測では、今年のインフレ率見通しを平均で1.4%と、昨年12月時点の1.9%から下方修正。来年についても1.6%から1.2%に引き下げた。
<追加利下げ示唆との見方も>
エコノミストは、今回の利下げはいつも慎重姿勢の同中銀にしては大胆な行動だと指摘する。
UBSのエコノミスト、アレッサンドロ・ビー氏は「サプライズだが、スイスのインフレ率が低いため可能性は常にあった。欧州中央銀行(ECB)や米連邦準備理事会(FRB)に先んじた勇気ある行動だが、スイス中銀はそのようには考えず、他の中銀も年内に追随すると考えているのではないか」と語った。
ロンバー・オディエIMの債券ストラテジスト兼ポートフォリオマネジャー、フィリップ・ブルクハルト氏は、経済と市場の状況に伴う論理的な帰結であり、今後の追加利下げを示唆するものだと指摘。「これはジョルダン総裁からの送別の贈り物でもあり、後任に方向性を明確に示している」と述べた。