*15:07JST USENNEX Research Memo(7):「U-NEXT」ユーザー数が急拡大、「U-POWER」も急成長(1)
■USEN-NEXT HOLDINGS (TYO:9418)の業績動向
2. 2023年8月期のセグメント別業績動向
セグメント別業績は、コンテンツ配信事業が売上高85,150百万円(前期比19.2%増)、営業利益6,252百万円(同0.7%減)、店舗サービス事業が売上高63,440百万円(同9.1%増)、営業利益9,831百万円(同8.7%増)、通信事業が売上高56,201百万円(同10.7%増)、営業利益6,391百万円(同19.1%増)、業務用システム事業が売上高20,533百万円(同7.2%増)、営業利益3,172百万円(同3.2%減)、エネルギー事業が売上高54,865百万円(同31.8%増)、営業利益3,731百万円(同628.6%増)となった。
結果的に業績はまちまちだが、それぞれのセグメントで好材料があった。
(1) コンテンツ配信事業
アフターコロナで外出機会が増加し、ライブやコンサートなどのリアルイベントは活況である。
映像配信サービスは消費者による選択と集中が進行しており、大手の外資3社が伸び悩み、国内勢の試行錯誤が続くなど競合は一層厳しくなっている。
しかし「U-NEXT」は、もともと有しているラインアップなどの強みに加え「Paravi」統合もあって、会員数が一気に400万人に迫るなど、業界でのシェアを上昇させたと見られる(「U-NEXT」「Paravi」重複加入者の解約は既に一巡した模様である)。
さらに、「Paravi」統合を機に資本業務提携した(株)TBSホールディングスなどとの協業関係などを通じて、「アジアドラマ」、「スポーツ」、「ライブ配信」を中心にラインアップをさらに拡充させた。
こうした状況下で、同社は「ひとりひとりに、最高の時間を配信する。
」をミッションに掲げ、これまでの「カバレッジ戦略」に加えて「Paravi」が強みとする国内ドラマやバラエティジャンルを強化した。
さらに、サッカーや格闘技、ゴルフなど注目度の高いスポーツコンテンツ、音楽ライブなどを独占配信する「ONLY ON戦略」も強化した。
2023年7月に大型格闘技イベント「超RIZIN.2」を配信、2023年8月には、欧州5大サッカーリーグの1つであるスペイン「ラ・リーガ」全380試合のライブ配信を開始した。
また、「U-NEXT」のサッカー公式X(旧Twitter)アカウントを開設して、ラ・リーガの試合告知や、プレミアリーグやセリエAといった他のヨーロッパサッカーリーグを視聴できる「SPOTV NOWパック(オプション)」の導入など、独占的なコンテンツの拡充に取り組んだ。
「U-NEXT」が重視する「映画館で映画を観る体験」を楽しんでもらうため、「U-NEXTポイント」で映画チケットを購入できるようにするなど「映画館に送客できる動画配信サービス」の実現を目指した。
これにより売上高は大きく伸びたが、営業利益はわずかながら減益となった。
この要因は、ラインアップ強化に向けてコンテンツの積極的な確保を図ったこと、円安などにより海外コンテンツの原価が上昇したこと、順調にユーザーを獲得していることに伴う先行費用としての広告販促費の発生による。
しかし、同社の強みのコアである「カバレッジ戦略」と「ONLY ON戦略」は、資金が豊富で自社で制作したオリジナル作品で差別化を図りたい外資3社や系列色の強い国内勢に対して非常に有効な戦略である。
しかも業界環境から顧客確保のタイミングという判断もあり、戦略に則り計画どおりユーザーの獲得に向けて先行費用を投じた。
為替については外部要因のため変動の影響は避けられないが、ラインアップポートフォリオや契約条件の見直しによってカバーに努めた。
以上により、期初計画との比較で売上高は過達となったが、営業利益は未達となった。
(2) 店舗サービス事業
業務効率化や省人化、非接触化といった顧客ニーズに対し、フロントからバックオフィスまであらゆるオペレーションのDXを、サービス導入からアフターフォローまでパッケージで提供している。
特に高単価・高採算の配膳ロボットについては、人手不足の解消、生産性の向上という顧客の課題解決や、非接触で安心かつ効率的な接客を実現できるため好評で、飲食店への導入を積極的に進めた。
また、USEN Mediaが展開する飲食店向け集客支援サービス「ヒトサラ」や「食べログ」も、コロナ禍前の状態を取り戻しつつある。
訪日外国人向けグルメサイト「SAVOR JAPAN」では、中国人観光客の需要取り込みを狙って「Alipay」との連携を開始した。
バーチャルレストランは、サービス品質向上と認知拡大を狙って2023年8月に商号をWannaEatに変更し、コラボレーションによる新フードブランドを立ち上げるなど、グループ力を生かした加盟店獲得の促進やブランド開発に注力した。
さらに、WannaEatとのシナジーを見込んで、出前館やウーバーイーツなどフードデリバリーオーダーの一元管理サービス「Orderly」を展開するToremoroを子会社化した。
飲食店向け無利子・無担保融資の返済やアフターコロナの回復鈍化のため、飲食店の閉店解約が高止まりしているが、新規開店も少なからずあり、感染症法上の分類が5類へ移行したことが追い風となり、POSレジなどDX商材の契約が順調に伸び、2ケタ近い増収を達成した。
利益面では、業況回復に伴い人件費や減価償却費が増加したほか、経済環境悪化の中国から事業撤退するため一過性の貸倒引当金などが増えたが、増収効果でカバーし、売上高に近い伸びを確保できた。
期初計画との比較では、配膳ロボットが想定以上に伸びたため、売上高、利益ともに超過達成した。
配膳ロボットは、大手飲食店への普及は進んだが、中小飲食店への普及が進んでいないため、業績への貢献は今後も見込めそうだ。
なお、USENの1事業である家賃債務保証や機器などの保証延長サービスといった保証関連ビジネスが好評のため、グループを横断した柔軟性ある成長戦略としてサービス提供することを目的に、2023年7月に新たに設立したUSEN TRUSTに分割・承継した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
2. 2023年8月期のセグメント別業績動向
セグメント別業績は、コンテンツ配信事業が売上高85,150百万円(前期比19.2%増)、営業利益6,252百万円(同0.7%減)、店舗サービス事業が売上高63,440百万円(同9.1%増)、営業利益9,831百万円(同8.7%増)、通信事業が売上高56,201百万円(同10.7%増)、営業利益6,391百万円(同19.1%増)、業務用システム事業が売上高20,533百万円(同7.2%増)、営業利益3,172百万円(同3.2%減)、エネルギー事業が売上高54,865百万円(同31.8%増)、営業利益3,731百万円(同628.6%増)となった。
結果的に業績はまちまちだが、それぞれのセグメントで好材料があった。
(1) コンテンツ配信事業
アフターコロナで外出機会が増加し、ライブやコンサートなどのリアルイベントは活況である。
映像配信サービスは消費者による選択と集中が進行しており、大手の外資3社が伸び悩み、国内勢の試行錯誤が続くなど競合は一層厳しくなっている。
しかし「U-NEXT」は、もともと有しているラインアップなどの強みに加え「Paravi」統合もあって、会員数が一気に400万人に迫るなど、業界でのシェアを上昇させたと見られる(「U-NEXT」「Paravi」重複加入者の解約は既に一巡した模様である)。
さらに、「Paravi」統合を機に資本業務提携した(株)TBSホールディングスなどとの協業関係などを通じて、「アジアドラマ」、「スポーツ」、「ライブ配信」を中心にラインアップをさらに拡充させた。
こうした状況下で、同社は「ひとりひとりに、最高の時間を配信する。
」をミッションに掲げ、これまでの「カバレッジ戦略」に加えて「Paravi」が強みとする国内ドラマやバラエティジャンルを強化した。
さらに、サッカーや格闘技、ゴルフなど注目度の高いスポーツコンテンツ、音楽ライブなどを独占配信する「ONLY ON戦略」も強化した。
2023年7月に大型格闘技イベント「超RIZIN.2」を配信、2023年8月には、欧州5大サッカーリーグの1つであるスペイン「ラ・リーガ」全380試合のライブ配信を開始した。
また、「U-NEXT」のサッカー公式X(旧Twitter)アカウントを開設して、ラ・リーガの試合告知や、プレミアリーグやセリエAといった他のヨーロッパサッカーリーグを視聴できる「SPOTV NOWパック(オプション)」の導入など、独占的なコンテンツの拡充に取り組んだ。
「U-NEXT」が重視する「映画館で映画を観る体験」を楽しんでもらうため、「U-NEXTポイント」で映画チケットを購入できるようにするなど「映画館に送客できる動画配信サービス」の実現を目指した。
これにより売上高は大きく伸びたが、営業利益はわずかながら減益となった。
この要因は、ラインアップ強化に向けてコンテンツの積極的な確保を図ったこと、円安などにより海外コンテンツの原価が上昇したこと、順調にユーザーを獲得していることに伴う先行費用としての広告販促費の発生による。
しかし、同社の強みのコアである「カバレッジ戦略」と「ONLY ON戦略」は、資金が豊富で自社で制作したオリジナル作品で差別化を図りたい外資3社や系列色の強い国内勢に対して非常に有効な戦略である。
しかも業界環境から顧客確保のタイミングという判断もあり、戦略に則り計画どおりユーザーの獲得に向けて先行費用を投じた。
為替については外部要因のため変動の影響は避けられないが、ラインアップポートフォリオや契約条件の見直しによってカバーに努めた。
以上により、期初計画との比較で売上高は過達となったが、営業利益は未達となった。
(2) 店舗サービス事業
業務効率化や省人化、非接触化といった顧客ニーズに対し、フロントからバックオフィスまであらゆるオペレーションのDXを、サービス導入からアフターフォローまでパッケージで提供している。
特に高単価・高採算の配膳ロボットについては、人手不足の解消、生産性の向上という顧客の課題解決や、非接触で安心かつ効率的な接客を実現できるため好評で、飲食店への導入を積極的に進めた。
また、USEN Mediaが展開する飲食店向け集客支援サービス「ヒトサラ」や「食べログ」も、コロナ禍前の状態を取り戻しつつある。
訪日外国人向けグルメサイト「SAVOR JAPAN」では、中国人観光客の需要取り込みを狙って「Alipay」との連携を開始した。
バーチャルレストランは、サービス品質向上と認知拡大を狙って2023年8月に商号をWannaEatに変更し、コラボレーションによる新フードブランドを立ち上げるなど、グループ力を生かした加盟店獲得の促進やブランド開発に注力した。
さらに、WannaEatとのシナジーを見込んで、出前館やウーバーイーツなどフードデリバリーオーダーの一元管理サービス「Orderly」を展開するToremoroを子会社化した。
飲食店向け無利子・無担保融資の返済やアフターコロナの回復鈍化のため、飲食店の閉店解約が高止まりしているが、新規開店も少なからずあり、感染症法上の分類が5類へ移行したことが追い風となり、POSレジなどDX商材の契約が順調に伸び、2ケタ近い増収を達成した。
利益面では、業況回復に伴い人件費や減価償却費が増加したほか、経済環境悪化の中国から事業撤退するため一過性の貸倒引当金などが増えたが、増収効果でカバーし、売上高に近い伸びを確保できた。
期初計画との比較では、配膳ロボットが想定以上に伸びたため、売上高、利益ともに超過達成した。
配膳ロボットは、大手飲食店への普及は進んだが、中小飲食店への普及が進んでいないため、業績への貢献は今後も見込めそうだ。
なお、USENの1事業である家賃債務保証や機器などの保証延長サービスといった保証関連ビジネスが好評のため、グループを横断した柔軟性ある成長戦略としてサービス提供することを目的に、2023年7月に新たに設立したUSEN TRUSTに分割・承継した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)