■事業概要
1. 売上構成
ナガイレーベン (T:7447)の製品は、医療白衣及びその関連製品である。
アイテム別売上高構成比(2016年8月期)は、ヘルスケアウェア58.5%、ドクターウェア16.1%、ユーティリティウェア3.6%、患者ウェア9.8%、手術ウェア9.5%、シューズ1.2%、その他1.3%となっている。
ヘルスケアウェアとは主に看護師向け製品のことで、ユーティリティウェアは白衣などの上に着るエプロンやカーディガンなどを指す。
各アイテムの利益率は大きくは変わらないが、仕入商品であるシューズやその他の利益率は相対的に低い。
地域別の売上高構成比(2016年8月期)は、東日本51.6%、西日本36.8%、中部日本10.4%、海外1.2%となっており、ほぼ全国をカバーしている。
商品(機能)別の売上高構成比(2016年8月期)は、高機能性商品52.7%、標準機能性商品37.5%、量販品5.4%、DCブランド4.4%となっている。
ナースウェアでおおよその価格帯分類をすると、量販品(5,000円以下)、標準機能性商品(5,000~7,500円)、高機能性商品(7,500~10,000円)、DCブランド(10,000円以上)となる。
高価格なほど利益率は高い傾向にあるが、今後は特に高機能性商品の拡販に注力していく方針だ。
2. 販売ルートと生産状況
同社のエンドユーザーは看護師、医師などで、製品の購入者は主に病院等の医療施設や介護施設などとなっている。
ただ、直接販売は行っておらず、これらの医療施設などと取引している業者を経由した販売が100%を占める。
これによって販売経費を抑えているが、大病院などへは常に同社の営業社員がコンタクトを取っており、顧客ニーズをくみ取っている。
これまでは病院内で自ら医療白衣の洗濯を行うケースが多かったが、近年は、洗濯のアウトソーシングの普及に伴って、リースに切り替わってきている。
このリース期間は通常は4年であることから、4年ごとにリースの切り換え需要が発生するため、同社の業績を安定的に支えていると言える。
ただしリース更新のサイクルは必ずしも前回と同じ時期に発生するとは限らず、多少前後する(ずれ込む)場合もあるため、四半期ごとの売上高(前年同期比)には、ぶれが生じる場合もある。
生産体制については、2016年8月期の実績で、製品の98.6%が自社及び協力工場(国内生産51.2%、海外生産47.4%)で生産され、仕入商品は1.4%となっている。
海外生産はインドネシア・ベトナム・中国で行われているが、自社工場を持たずに現地のパートナー企業の工場で生産を行っており、投資リスク軽減とコスト削減を両立させている。
3. 特色と強み
同社は医療白衣の専業メーカーだが、その強みの1つは企画から原材料の調達、製造、販売まで一貫して行う体制が整っていることである。
製品企画の面では、ユーザーのニーズを的確につかみこれを製品に反映させている。
具体的には働きやすい(動きやすい)、静電気が発生しにくい、制菌(細菌の増殖を抑える)などの機能面に加え、デザイン性にも優れた製品を提供することで、ユーザーから高い評価を得ている。
同時に製造面においては素材を共同開発する東レ (T:3402)を始めとする大手合繊メーカーや繊維商社などと直接やり取りすることで、最適な素材を確保して安価に製造し、適正マージンを乗せて販売することが可能になっている。
また、多くの提携工場を持つことに加えて、資金力が豊富であることから常に数千種類に及ぶ製品アイテムの在庫をそろえており、オーダーメードにも対応している。
幅広いユーザーニーズに対して、希望する製品を指定された期日に即納する迅速な生産・販売体制(Quick Response体制)が整っており、このことも顧客からの信頼を厚くしている。
販売面においては、既述のように全国に1,000社近くの代理店網を有しており、販売力が強固でありながら、同社自身は販売経費を可能な限り押さえている。
その結果、看護師向け白衣では国内シェアは60%超となっており、医療白衣のリーディングカンパニーとしての確固たる地位を維持している。
また、売上総利益率は46.8%(2016年8月期実績)と高水準を確保。
高い利益率と高い市場シェアを両立できているということは、多くの顧客が同社の製品・サービスに満足していることであり、これこそが最大の強みと言える。
医療白衣というニッチ市場に経営資源を集約させていることで、企画から生産、販売まで一貫した効率的な経営が可能となっている。
また、ニッチ市場ではあるが、同社では、「当分はこの医療白衣で事業を伸ばすことは可能であり、今後積極的に周辺市場の開拓を行う」としている。
4. 企業としての方針(CSR/ESGの取り組み)
同社は2015年で創業100周年を迎えたが、この間に「人の和」「利益の創出」「社会への貢献」の3つを中心とした「ナガイズム」という企業精神を醸成させてきた。
具体的には以下のような施策を実行してCSR/ESGに取り組んできた。
(1) 女性活躍:女性主役産業をサポート
同社の製品の多くは病院や介護施設の現場で働く女性向けであり、また同社の生産現場では多くの女性スタッフが縫製作業に関わっている。
同社の事業活動が、多様なライフイベントを持つ女性が活躍できる場を創出し、働く女性への支援につながっている。
(2) 地域貢献
a) 生産拠点を通じた地域貢献
国内では秋田県、海外では大連(中国)、インドネシア、ベトナムなどの地域で生産を行うことで雇用を創出、地域経済に貢献している。
b) メディカルキッズプロジェクト
病院が地域社会との交流を深め、子供達が安心して通院・入院できるようにとの考えから始められたもので、医師や看護師に模した子供用白衣の病院貸出しや、ミッフィー着ぐるみの病院訪問を実施している。
(3) 顧客への貢献:ナース向け憩いの場である「ITONA」ギャラリーの開設
2015年の創業100周年を記念して、主要顧客であるナースへの「ありがとう」の気持ちを形にするため、日本で初めてのナースのための心のコミュニケーションスペース「INATOいとな」ギャラリーを開設した。
(4) 社会貢献
a) 障害者雇用支援
積極的に障害者の雇用を行っているが、障害者雇用・促進に貢献した事業所として、優良事業所の1つに選ばれ、厚生労働大臣から表彰を受けた(2016年9月)。
今後も積極的に障害者雇用を行う方針。
b) 災害支援
SARSやインドネシア大地震、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの災害発生時に、看護協会や日本赤十字を通じた寄付や白衣の提供、車椅子の寄贈などを実施している。
(5) 環境への取り組み
2005年にISO14001を取得済み。
原材料の裁断クズを再利用したフール材加工などの取り組みを実施している。
また病院の手術現場向けにリユース商品「コンペルパック」を開発・販売している。
従来のディスポーザルからリユースに転換することで病院内での医療廃棄物削減を可能にし、環境問題へ貢献している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
1. 売上構成
ナガイレーベン (T:7447)の製品は、医療白衣及びその関連製品である。
アイテム別売上高構成比(2016年8月期)は、ヘルスケアウェア58.5%、ドクターウェア16.1%、ユーティリティウェア3.6%、患者ウェア9.8%、手術ウェア9.5%、シューズ1.2%、その他1.3%となっている。
ヘルスケアウェアとは主に看護師向け製品のことで、ユーティリティウェアは白衣などの上に着るエプロンやカーディガンなどを指す。
各アイテムの利益率は大きくは変わらないが、仕入商品であるシューズやその他の利益率は相対的に低い。
地域別の売上高構成比(2016年8月期)は、東日本51.6%、西日本36.8%、中部日本10.4%、海外1.2%となっており、ほぼ全国をカバーしている。
商品(機能)別の売上高構成比(2016年8月期)は、高機能性商品52.7%、標準機能性商品37.5%、量販品5.4%、DCブランド4.4%となっている。
ナースウェアでおおよその価格帯分類をすると、量販品(5,000円以下)、標準機能性商品(5,000~7,500円)、高機能性商品(7,500~10,000円)、DCブランド(10,000円以上)となる。
高価格なほど利益率は高い傾向にあるが、今後は特に高機能性商品の拡販に注力していく方針だ。
2. 販売ルートと生産状況
同社のエンドユーザーは看護師、医師などで、製品の購入者は主に病院等の医療施設や介護施設などとなっている。
ただ、直接販売は行っておらず、これらの医療施設などと取引している業者を経由した販売が100%を占める。
これによって販売経費を抑えているが、大病院などへは常に同社の営業社員がコンタクトを取っており、顧客ニーズをくみ取っている。
これまでは病院内で自ら医療白衣の洗濯を行うケースが多かったが、近年は、洗濯のアウトソーシングの普及に伴って、リースに切り替わってきている。
このリース期間は通常は4年であることから、4年ごとにリースの切り換え需要が発生するため、同社の業績を安定的に支えていると言える。
ただしリース更新のサイクルは必ずしも前回と同じ時期に発生するとは限らず、多少前後する(ずれ込む)場合もあるため、四半期ごとの売上高(前年同期比)には、ぶれが生じる場合もある。
生産体制については、2016年8月期の実績で、製品の98.6%が自社及び協力工場(国内生産51.2%、海外生産47.4%)で生産され、仕入商品は1.4%となっている。
海外生産はインドネシア・ベトナム・中国で行われているが、自社工場を持たずに現地のパートナー企業の工場で生産を行っており、投資リスク軽減とコスト削減を両立させている。
3. 特色と強み
同社は医療白衣の専業メーカーだが、その強みの1つは企画から原材料の調達、製造、販売まで一貫して行う体制が整っていることである。
製品企画の面では、ユーザーのニーズを的確につかみこれを製品に反映させている。
具体的には働きやすい(動きやすい)、静電気が発生しにくい、制菌(細菌の増殖を抑える)などの機能面に加え、デザイン性にも優れた製品を提供することで、ユーザーから高い評価を得ている。
同時に製造面においては素材を共同開発する東レ (T:3402)を始めとする大手合繊メーカーや繊維商社などと直接やり取りすることで、最適な素材を確保して安価に製造し、適正マージンを乗せて販売することが可能になっている。
また、多くの提携工場を持つことに加えて、資金力が豊富であることから常に数千種類に及ぶ製品アイテムの在庫をそろえており、オーダーメードにも対応している。
幅広いユーザーニーズに対して、希望する製品を指定された期日に即納する迅速な生産・販売体制(Quick Response体制)が整っており、このことも顧客からの信頼を厚くしている。
販売面においては、既述のように全国に1,000社近くの代理店網を有しており、販売力が強固でありながら、同社自身は販売経費を可能な限り押さえている。
その結果、看護師向け白衣では国内シェアは60%超となっており、医療白衣のリーディングカンパニーとしての確固たる地位を維持している。
また、売上総利益率は46.8%(2016年8月期実績)と高水準を確保。
高い利益率と高い市場シェアを両立できているということは、多くの顧客が同社の製品・サービスに満足していることであり、これこそが最大の強みと言える。
医療白衣というニッチ市場に経営資源を集約させていることで、企画から生産、販売まで一貫した効率的な経営が可能となっている。
また、ニッチ市場ではあるが、同社では、「当分はこの医療白衣で事業を伸ばすことは可能であり、今後積極的に周辺市場の開拓を行う」としている。
4. 企業としての方針(CSR/ESGの取り組み)
同社は2015年で創業100周年を迎えたが、この間に「人の和」「利益の創出」「社会への貢献」の3つを中心とした「ナガイズム」という企業精神を醸成させてきた。
具体的には以下のような施策を実行してCSR/ESGに取り組んできた。
(1) 女性活躍:女性主役産業をサポート
同社の製品の多くは病院や介護施設の現場で働く女性向けであり、また同社の生産現場では多くの女性スタッフが縫製作業に関わっている。
同社の事業活動が、多様なライフイベントを持つ女性が活躍できる場を創出し、働く女性への支援につながっている。
(2) 地域貢献
a) 生産拠点を通じた地域貢献
国内では秋田県、海外では大連(中国)、インドネシア、ベトナムなどの地域で生産を行うことで雇用を創出、地域経済に貢献している。
b) メディカルキッズプロジェクト
病院が地域社会との交流を深め、子供達が安心して通院・入院できるようにとの考えから始められたもので、医師や看護師に模した子供用白衣の病院貸出しや、ミッフィー着ぐるみの病院訪問を実施している。
(3) 顧客への貢献:ナース向け憩いの場である「ITONA」ギャラリーの開設
2015年の創業100周年を記念して、主要顧客であるナースへの「ありがとう」の気持ちを形にするため、日本で初めてのナースのための心のコミュニケーションスペース「INATOいとな」ギャラリーを開設した。
(4) 社会貢献
a) 障害者雇用支援
積極的に障害者の雇用を行っているが、障害者雇用・促進に貢献した事業所として、優良事業所の1つに選ばれ、厚生労働大臣から表彰を受けた(2016年9月)。
今後も積極的に障害者雇用を行う方針。
b) 災害支援
SARSやインドネシア大地震、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの災害発生時に、看護協会や日本赤十字を通じた寄付や白衣の提供、車椅子の寄贈などを実施している。
(5) 環境への取り組み
2005年にISO14001を取得済み。
原材料の裁断クズを再利用したフール材加工などの取り組みを実施している。
また病院の手術現場向けにリユース商品「コンペルパック」を開発・販売している。
従来のディスポーザルからリユースに転換することで病院内での医療廃棄物削減を可能にし、環境問題へ貢献している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)