■業績動向
1. 2018年3月期の業績概要
早稲田アカデミー (T:4718)の2018年3月期の連結業績は、売上高が前期比7.1%増の22,143百万円、営業利益が同4.2%増の1,112百万円、経常利益が同3.0%増の1,107百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.0%増の727百万円となり、売上高で7期連続増収、営業利益、経常利益、当期純利益は4期連続の増益となった。
※なお、前頁までと異なり、本業績動向以降の項目での期中平均塾生数については、(株)集学舎の塾生数(2018年1月〜3月の3ヶ月の期中平均塾生数1,887人)を含んでいる。
売上高については、期中平均生徒数が前期比12.7%増の36,485人と順調に拡大したことが増収要因となった。
生徒数の伸長率に関しては、小学部が前期比16.3%増と大幅伸長したほか、中学部、高校部もそれぞれ9.0%増、11.0%増と堅調に推移し、ここ数年では最も高い伸長率となった。
小学部の伸び率が好調だった要因としては、1)2017年春の中学入試において合格実績が伸び、他塾に対する優位性が高まった、2)2017年春に難関中学校に合格した芦田愛菜(あしだまな)さんを広告に起用し、大きな反響を呼んだ、3)ホームページを全面リニューアルし、ユーザーが求める情報にアクセスしやすい表示やニーズに合わせたコンテンツを開発した、などが挙げられる。
特に小学部(単体)では3-4年生が前期比16.4%増と大幅増となったほか、中学部でも1年生が6.8%増と高い伸びを示すなど低学年生の生徒数が好調だったのが特徴となっている。
これら生徒については、次年度にも大半が継続していくため、今後の生徒数の動向を見るうえでの先行指標となる。
また、同社では公立難関高校への合格者実績拡大を重要施策の一つとして取り組むなかで、公立中学校進学予定の生徒向けであるKコースにも注力しているが、2018年3月期は小学5年生で前期比62%増、小学6年生で同4%増と順調に増加したことも生徒数の増加要因となった。
なお、当期の新規出校数は「早稲田アカデミー」で1校(2018年3月)だけにとどまり、グループ全体の校舎数は前期末比横ばいの161校(英語教室除く)となった。
売上高営業利益率は前期の5.2%から5.0%と0.2ポイント低下した。
内訳を見ると、売上原価率は前期比で1.5ポイント改善した。
地域特性に合わせた校舎営業日・時間の見直しや変形労働時間制の活用、事務管理業務を中心とした業務フローの改善に加えて、校舎当たり生徒数が増加したこともあり労務費率が同0.9ポイント改善したほか、地代家賃も増収効果によって同0.6ポイント改善した。
一方、販管費率については前期比1.6ポイントの上昇となった。
広告宣伝費が同0.5ポイント低下したものの、本社機能の強化を図るため人材開発部や営業戦略部、国際部を新たに立ち上げたほか、教務部小学課及び中学課をそれぞれ部に昇格させたこと等により労務費率が同0.5ポイント上昇したほか、集学舎のM&Aにかかる付随費用が発生したこと、新基幹システムの稼働に伴うソフトウェア償却費や教材管理・配送業務などのアウトソーシング化に伴う費用の発生(それぞれ2017年8月より発生)並びに運送業者の値上げによる配送費用の増加等により、その他項目で1.7ポイントの上昇となった。
金額ベースで見ると労務費は売上原価・販管費全体で前期比557百万円増加し、その他販管費項目で同482百万円の増加となっている。
期首の会社計画比について見ると、売上高は生徒数の上振れにより1.4%上回ったが、営業利益は4.5%下回った。
これは、M&Aに係る関連費用の増加、新基幹システムの追加機能拡充による償却費用の増加、運送業者の値上げに伴う配送費用の増加等が主因となっている。
当期純利益は特別利益として校舎移転に伴う補償金83百万円を計上したことにより、ほぼ会社計画どおりの着地となった。
なお、新基幹システムの稼働に伴い、教材デリバリー(家庭への配送)及び在庫管理のアウトソーシング化、校舎受付でのキャッシュレス化、管理業務のペーパーレス化等が実現しており、顧客サービスの向上と業務効率の大幅な改善が見込まれている。
これら効果により2019年3月期以降は校舎における事務職員の労働時間を削減できると予測しており、労務費率の低減効果が期待できる。
子会社の業績動向について見ると、医歯薬専門予備校の野田学園は平均単価の高い既卒生が一時的要因で減少したことにより、売上高で前期比13.3%減の507百万円、経常利益で同58.4%減の44百万円と減収減益となった。
期中平均生徒数については251人(前期272人)、うち既卒生は107人(同130人)、現役高校生は144人(同142人)となり、現役高校生に関しては過去最高を連続で更新している。
水戸アカデミーについては県立難関校への高い合格実績を背景に生徒数が着実に増加し、売上高で前期比9.4%増の205百万円、経常利益で同33.8%増の10百万円と増収増益となった。
期中平均生徒数では358人(同334人)と過去最高を更新している。
そのほか、集学舎については第4四半期のみの計上となるため、売上高、利益ともに業績に与える影響は軽微となっている。
第4四半期の平均生徒数については1,887人と堅調に推移した。
M&Aや新基幹システムへの投資で、2018年3月期の自己資本比率は50%割れとなったが、2019年3月期以降は再度上昇に転じる見通し
2. 財務状況と経営指標
2018年3月末の財務状況を見ると、総資産は前期末比1,806百万円増加の14,382百万円となった。
流動資産が561百万円減少した一方で、固定資産が2,367百万円増加した。
流動資産では現預金が897百万円減少し、営業未収入金が305百万円、たな卸資産が110百万円増加した。
現預金の減少は集学舎の株式取得費用が主因となっている。
固定資産では集学舎の子会社化を主因として、有形固定資産が664百万円、のれんが1,094百万円それぞれ増加したほか、新基幹システムの稼働に伴いソフトウェア及びソフトウェア仮勘定が461百万円増加した。
負債合計は前期末比1,847百万円増加の7,383百万円となった。
集学舎の株式取得資金として有利子負債が1,430百万円増加したほか、未払金及び前受金が257百万円増加した。
また、純資産は前期末比41百万円減少の6,998百万円となった。
親会社株主に帰属する当期純利益727百万円を計上した一方で、自己株式の取得682百万円、配当金支払い250百万円が減少要因となった。
経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は前期の56.0%から当期は48.7%に低下した。
自己株式取得を進めた一方で、有利子負債が増加したことが要因だ。
新基幹システムへの投資なども重なり、2018年3月期は資金需要が一時的に増加(投資キャッシュ・フローで1,461百万円の支出)したことでネットキャッシュ(現預金-有利子負債)も6期ぶりにマイナスに転じている。
ただ、2019年3月期以降は資金需要も一段落するため、ネットキャッシュは再度プラスに転換し、自己資本比率も上昇に転じるものと予想される。
また、収益性に関してはROAが前期の8.7%から8.2%に、売上高営業利益率で5.2%から5.0%に若干低下したものの、ROEについては自己株取得を実施したこともあり、10.0%から10.4%に上昇した。
2019年3月期以降は新基幹システム稼働による効果が業績面で本格的に顕在化してくるため、各指標とも上昇するものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
1. 2018年3月期の業績概要
早稲田アカデミー (T:4718)の2018年3月期の連結業績は、売上高が前期比7.1%増の22,143百万円、営業利益が同4.2%増の1,112百万円、経常利益が同3.0%増の1,107百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.0%増の727百万円となり、売上高で7期連続増収、営業利益、経常利益、当期純利益は4期連続の増益となった。
※なお、前頁までと異なり、本業績動向以降の項目での期中平均塾生数については、(株)集学舎の塾生数(2018年1月〜3月の3ヶ月の期中平均塾生数1,887人)を含んでいる。
売上高については、期中平均生徒数が前期比12.7%増の36,485人と順調に拡大したことが増収要因となった。
生徒数の伸長率に関しては、小学部が前期比16.3%増と大幅伸長したほか、中学部、高校部もそれぞれ9.0%増、11.0%増と堅調に推移し、ここ数年では最も高い伸長率となった。
小学部の伸び率が好調だった要因としては、1)2017年春の中学入試において合格実績が伸び、他塾に対する優位性が高まった、2)2017年春に難関中学校に合格した芦田愛菜(あしだまな)さんを広告に起用し、大きな反響を呼んだ、3)ホームページを全面リニューアルし、ユーザーが求める情報にアクセスしやすい表示やニーズに合わせたコンテンツを開発した、などが挙げられる。
特に小学部(単体)では3-4年生が前期比16.4%増と大幅増となったほか、中学部でも1年生が6.8%増と高い伸びを示すなど低学年生の生徒数が好調だったのが特徴となっている。
これら生徒については、次年度にも大半が継続していくため、今後の生徒数の動向を見るうえでの先行指標となる。
また、同社では公立難関高校への合格者実績拡大を重要施策の一つとして取り組むなかで、公立中学校進学予定の生徒向けであるKコースにも注力しているが、2018年3月期は小学5年生で前期比62%増、小学6年生で同4%増と順調に増加したことも生徒数の増加要因となった。
なお、当期の新規出校数は「早稲田アカデミー」で1校(2018年3月)だけにとどまり、グループ全体の校舎数は前期末比横ばいの161校(英語教室除く)となった。
売上高営業利益率は前期の5.2%から5.0%と0.2ポイント低下した。
内訳を見ると、売上原価率は前期比で1.5ポイント改善した。
地域特性に合わせた校舎営業日・時間の見直しや変形労働時間制の活用、事務管理業務を中心とした業務フローの改善に加えて、校舎当たり生徒数が増加したこともあり労務費率が同0.9ポイント改善したほか、地代家賃も増収効果によって同0.6ポイント改善した。
一方、販管費率については前期比1.6ポイントの上昇となった。
広告宣伝費が同0.5ポイント低下したものの、本社機能の強化を図るため人材開発部や営業戦略部、国際部を新たに立ち上げたほか、教務部小学課及び中学課をそれぞれ部に昇格させたこと等により労務費率が同0.5ポイント上昇したほか、集学舎のM&Aにかかる付随費用が発生したこと、新基幹システムの稼働に伴うソフトウェア償却費や教材管理・配送業務などのアウトソーシング化に伴う費用の発生(それぞれ2017年8月より発生)並びに運送業者の値上げによる配送費用の増加等により、その他項目で1.7ポイントの上昇となった。
金額ベースで見ると労務費は売上原価・販管費全体で前期比557百万円増加し、その他販管費項目で同482百万円の増加となっている。
期首の会社計画比について見ると、売上高は生徒数の上振れにより1.4%上回ったが、営業利益は4.5%下回った。
これは、M&Aに係る関連費用の増加、新基幹システムの追加機能拡充による償却費用の増加、運送業者の値上げに伴う配送費用の増加等が主因となっている。
当期純利益は特別利益として校舎移転に伴う補償金83百万円を計上したことにより、ほぼ会社計画どおりの着地となった。
なお、新基幹システムの稼働に伴い、教材デリバリー(家庭への配送)及び在庫管理のアウトソーシング化、校舎受付でのキャッシュレス化、管理業務のペーパーレス化等が実現しており、顧客サービスの向上と業務効率の大幅な改善が見込まれている。
これら効果により2019年3月期以降は校舎における事務職員の労働時間を削減できると予測しており、労務費率の低減効果が期待できる。
子会社の業績動向について見ると、医歯薬専門予備校の野田学園は平均単価の高い既卒生が一時的要因で減少したことにより、売上高で前期比13.3%減の507百万円、経常利益で同58.4%減の44百万円と減収減益となった。
期中平均生徒数については251人(前期272人)、うち既卒生は107人(同130人)、現役高校生は144人(同142人)となり、現役高校生に関しては過去最高を連続で更新している。
水戸アカデミーについては県立難関校への高い合格実績を背景に生徒数が着実に増加し、売上高で前期比9.4%増の205百万円、経常利益で同33.8%増の10百万円と増収増益となった。
期中平均生徒数では358人(同334人)と過去最高を更新している。
そのほか、集学舎については第4四半期のみの計上となるため、売上高、利益ともに業績に与える影響は軽微となっている。
第4四半期の平均生徒数については1,887人と堅調に推移した。
M&Aや新基幹システムへの投資で、2018年3月期の自己資本比率は50%割れとなったが、2019年3月期以降は再度上昇に転じる見通し
2. 財務状況と経営指標
2018年3月末の財務状況を見ると、総資産は前期末比1,806百万円増加の14,382百万円となった。
流動資産が561百万円減少した一方で、固定資産が2,367百万円増加した。
流動資産では現預金が897百万円減少し、営業未収入金が305百万円、たな卸資産が110百万円増加した。
現預金の減少は集学舎の株式取得費用が主因となっている。
固定資産では集学舎の子会社化を主因として、有形固定資産が664百万円、のれんが1,094百万円それぞれ増加したほか、新基幹システムの稼働に伴いソフトウェア及びソフトウェア仮勘定が461百万円増加した。
負債合計は前期末比1,847百万円増加の7,383百万円となった。
集学舎の株式取得資金として有利子負債が1,430百万円増加したほか、未払金及び前受金が257百万円増加した。
また、純資産は前期末比41百万円減少の6,998百万円となった。
親会社株主に帰属する当期純利益727百万円を計上した一方で、自己株式の取得682百万円、配当金支払い250百万円が減少要因となった。
経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は前期の56.0%から当期は48.7%に低下した。
自己株式取得を進めた一方で、有利子負債が増加したことが要因だ。
新基幹システムへの投資なども重なり、2018年3月期は資金需要が一時的に増加(投資キャッシュ・フローで1,461百万円の支出)したことでネットキャッシュ(現預金-有利子負債)も6期ぶりにマイナスに転じている。
ただ、2019年3月期以降は資金需要も一段落するため、ネットキャッシュは再度プラスに転換し、自己資本比率も上昇に転じるものと予想される。
また、収益性に関してはROAが前期の8.7%から8.2%に、売上高営業利益率で5.2%から5.0%に若干低下したものの、ROEについては自己株取得を実施したこともあり、10.0%から10.4%に上昇した。
2019年3月期以降は新基幹システム稼働による効果が業績面で本格的に顕在化してくるため、各指標とも上昇するものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)