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ネクステージ Research Memo(3):独自ビジネスモデルで他社の追随を許さぬ差別化に成功

発行済 2018-08-22 17:33
更新済 2018-08-22 17:40
ネクステージ Research Memo(3):独自ビジネスモデルで他社の追随を許さぬ差別化に成功
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■ネクステージ (T:3186)の事業戦略

1. 中古車市場動向
かつての中古車ビジネスは、地域に限定されたBtoCによる買取・販売が主体だった。
業者と消費者間に情報の非対称が存在し、不透明な価格形成と非効率なオペレーションが行われていた。
しかし、車両査定が標準化され、画像と車両データをベースとしたBtoBのオートオークションが発達したため、地理的な制約を超えることになり、経営の自由度が高まった。
市場規模が拡大するにつれ、中古車買取専門店、自動車用品専門小売店、タイヤ専門店、車検専門店などのカテゴリーキラーが登場し、チェーン展開した。
一方、消費者は、インターネットの普及により得られる情報が飛躍的に増大した。
中古車情報サイトから、販売車両の車両データや価格を容易に閲覧でき、利用者による店舗の評価も得られる。
買取に関しては、複数の業者に出張査定を依頼できるようになり、消費者と業者の力関係が大きく変わった。
人口減少と高齢化により、市場は縮小もしくは良くて横ばいとなった。
このような経営環境下では、市場は価格競争のレッドオーシャンに陥りがちで、成功例が見られるとたちまち他社にまねされることになる。


2. 事業戦略
(1) 顧客生涯取引の獲得
中古車のビジネスサイクルは、車両販売→用品販売→保険→整備→点検→車検→買取で完結する。
一昔前と比較して現在では、サイクルがひと回転するには約8年を要する。
次回の来店までの間隔が長くては、顧客との接触が少なく、カスタマーロイヤリティを構築することは困難であり、来店動機の大きな要因が、価格に偏りがちになる。


以前のビジネスサイクルでは、車両販売や用品販売、保険までを重点的に行う一方、整備・車検から買取までのビジネスが手薄であった。
中型店から総合店に移行し、販売専門店から整備・点検・車検及び買取までフルラインで行う店舗に業態転換し、顧客生涯取引の獲得を図っている。
総合店は、カテゴリーキラーに分断されていた機能を再統合し、1拠点で車両販売・整備車検・買取までをワンストップで提供する。
大型店によるフルライン・オペレーションは、顧客の来店の頻度を上げ、生涯取引にかかわる機会を増やし、店舗の収益源を多様化し、店舗経営を安定化させる。
1拠点当たりの投資効率が上がり、ROEの向上に資する。



分断した機能を統合し、利便性と顧客満足度を高め、生涯取引を獲得へ
(2) 「強み」を増やし、店舗の魅力を高める
同社の従来型ビジネスモデルは商品競争力(価格・品質)に負うところが大きかった。
現行型ビジネスモデルでは、商品競争力に加え、品揃え、店構え・立地、地域一番規模、大型整備施設、ワンコインオイル、クルマ買取、世帯内取引と強みを増やした。
顧客との関係性を無料点検やオイル交換で維持し、保険や車検などの定期的なイベントに加え、タイヤ交換や事故修理などサービス提供機会を拡大している。
さらに、自動車保険では提案などで世帯内取引を進め、ターゲット顧客を個人から世帯人員に拡大している。


(3) 回転率と収益性の両立 −ROA 11.2%、ROE 22.0%
2017年11月期に、資産の運用効率を表す総資産回転率(=売上高÷総資産)と収益性の指標となる売上高経常利益率(=経常利益÷売上高)を掛け合わせたROA(総資産経常利益率=経常利益÷総資産)は11.2%と10%超となった。
ROE(自己資本当期純利益率)は、22.0%の高水準を記録した。


中古車ビジネスのKPI(Key Performance Indicator)は、来客数、成約率、1台当たりの収益になる。
商品在庫を含む資産の回転率と収益性はトレードオフの関係にある。
市場最安値で提供すれば来客数を上げることは可能だが、収益性が低下する。
成約率を高めるためには、品ぞろえや品質が重要になる。
また、クレームに対しては、役員も参加する会議を毎回開催し、情報をシェアして撲滅に努めている。


(4) 店舗戦略
現行の店舗戦略は、エッジを効かせた専門店「SUV LAND」と顧客の生涯価値「ライフタイム・バリュー」の獲得を目指す総合店の展開である。


a) エッジを効かせた専門店「SUV LAND」
2015年8月に愛知県名古屋市に展示車両数で日本最大級のSUV専門店「SUV LAND名古屋」をオープンした。
「SUV LAND」は、SUVを主要商材とする大型専門店で、常時約250台の在庫を用意しており、品ぞろえも軽SUV、国産SUV、輸入SUVと幅広く取りそろえている。
SUVと顧客ニーズが近いミニバンも置く。
近隣店舗の展示車数は50~100台程度にとどまり、商品の豊富さで圧倒的な差をつけている。
SUVと新たなライフスタイルを提案する体験型店舗である。
多目的スポーツ車のSUVは趣味性が高く、「モノからコトへ」の消費者の志向の変化に対応する。
同店は、車両を単に陳列販売するだけでなく、SUV LANDのWebサイトでは、アソビを楽しくするコンテンツを紹介している。


2018年4月に「SUV LAND堺」を、6月に「SUV LAND北九州」をオープンし、「SUV LAND」は計8店舗となった。
SUV在庫台数は日本一の1,700台を超える規模である。


b) 総合店
2018年7月にグランドオープンした「ネクステージ和歌山店」により、総合店は全国で10店舗となった。
同店は、国道24号線沿いに位置し、同社最大かつ地域最大級の在庫台数350台超を取り揃えた大型店舗になる。
車の購入や買取では、顧客がゆっくりと契約できるよう広い商談スペース設け、子供が遊べるキッズスペースやシアタールームを完備し、家族連れの来店の受入れ体制を整えている。
大型整備工場も完備している。


地域一番店を目指す総合店は、交通アクセスの良い好立地に大型店舗を構える。
地域最大級の在庫台数を取りそろえ、広々とした商談スペースでクルマの購入及び買取の相談ができ、整備ピットの様子を見ることができる店舗レイアウトにしている。
来店目的が、中古車購入、オイル交換、整備・点検、車検、買取と多岐にわたるため、常に商談スペースが埋まり、盛況感を醸し出す。
敷地面積は約3,000坪を必要とし、出店費用を抑えるため、他業種が撤退した店舗を居抜きで借りる出店が主流であるものの、1店舗当たりの設備投資額は3~5億円程度かかる。
250~300台の展示在庫を合わせると、1店舗当たり約8億円の出店資金が必要になる。
中型店では、敷地面積が500~600坪、在庫が50~60台、出店資金は設備投資に1億円、在庫に1億円の計2億円になる。
大型店の新規出店では、投資資金回収には約3年間を要する。
地域の中小企業では、用地の確保と資金負担から、総合店の出店は困難である。
同社は、フルライン・オペレーションのSUV LANDと総合店の大型店を、この3年間で既に18店舗出店している。
既存大型店の多くが既に年商が50億円に達しており、新規店舗の初期の損失を吸収して、増収増益基調を維持できる体制となっている。


(4) 新車ディーラー −顧客特性に応じた販売手法を適用
輸入車の正規新車ディーラー店舗は、グループ会社が運営するものも含めると12店舗となる。
ブランド別内訳は、アウディが4店舗、ボルボが3店舗、ジャガー・ランドローバーが3店舗、フォルクスワーゲンが1店舗、マセラティが1店舗である。
他社からのディーラー権の移転が主体であり、顧客ベースと店舗などを引き継ぐ。


同社の国産中古車の顧客は世帯年収が約600万円であるが、高級輸入新車の購買層の年収は1,000万円超であり、マセラティでは2,500万円程度になる。
国産中古車販売の“まず価格ありき”とは顧客特性が異なるため、同社グループはブランド価値を尊重し、高めるために、それぞれのブランドに相応しいマーケティング手法を取っている。


「マセラティ仙台」は、マセラティ ジャパンの全国24番目の店舗となる。
新設した東北初の正規ディーラー店舗は、利便性の高いロケーションに、ショールーム、サービス工場設備、検査設備を擁し、車両を常時5台展示可能としている。
ショールームデザインは、最新のマセラティCIをすべて導入しており、洗練された白とブルーを基調に、ラグジュアリースポーツブランドにふさわしいエレガントな雰囲気を提供している。
また、インテリアレザー、ウッドパネルなどマセラティモデルの多彩なパーソナリゼーションアイテムを展示した「コンフィギュレーションエリア」を設置。
細部にわたるカスタマイズ・ニーズに対応する。
マセラティファンの醸成を担う、豊富なマーチャンダイジングの展示エリアは、ウエアやバッグ、小物など最新のラインアップを揃えている。
仙台市と宮城県全域に加え、広く東北エリアを商圏としてマセラティモデルを訴求し、新車のみならず中古車を含めた拡販とサービスの強化を図っている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

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