[16日 ロイター] - 米国の銀行株はリセッション(景気後退)と利ざや縮小を巡る懸念で12月に入ってから打撃を受けている。
S&P500銀行株指数は今月、約11%下落。5.5%安のS&P総合500種を上回る落ち込みとなっている。下げがきついのはバンク・オブ・アメリカで16%安。また、ウェルズ・ファーゴが約14%下落し、JPモルガン・チェースも6%以上値を下げている。
この数週間、景気に対する悲観的な見方が資産価格に表れている。積極的な金融引き締めが経済成長を損なうのではないかとの懸念が投資家に広がっているためだ。
銀行は二重苦に直面しており、景気後退が融資の伸びを鈍らせ、信用損失を増大させる一方、金利上昇は預金に支払う利子が融資から得る利息を食いつぶし、利ざやを縮小させる恐れがある。
人員削減は銀行に予想されるストレスの大きさをさらに示唆する。関係筋が16日に明らかにしたところによると、ゴールドマン・サックスが厳しい経済環境を乗り切るため数千人の人員削減を計画している。
ミラー・タバックのチーフ市場ストラテジスト、マット・マリー氏は「銀行株はリセッション下では順調とはならず、ますます多くの投資家がハードランディング(強硬着陸)を懸念している」と述べた。
銀行株は年間を通じてS&P総合500種とほぼ同じ動きをしてきたが、ここ数週間で下落が加速。銀行株指数は2022年に入ってから24%以上値を下げている。一方、S&P総合500種は年初来で19%下落しており、08年以来最大の年間下落率となるペースだ。
グリーンウッド・キャピタルの最高投資責任者、ウォルター・トッド氏は「最近の銀行株のパフォーマンスは23年の経済見通しに対する懸念が高まっていることの証拠だ」と指摘。景気減速見通しにより、同社は今年、保有する銀行株の一部を売却した。
RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ジェラルド・キャシディ氏は最近の銀行株安の一因について、純利ざやが来年ピークに達するという予想のほか、23年に景気減速が見込まれるため貸倒引当金が増加するとの懸念を反映していると指摘した。
一方、経済が安定推移すると信じている投資家にとっては銀行の割安な株価は魅力的だろう。
リフィニティブ・データストリームによると、S&P500銀行株指数の予想PER(株価収益率)は約9倍で、長期平均PERの12倍を下回っている。
ベイカー・アベニュー・ウェルス・マネジメントのチーフストラテジスト、キング・リップ氏は、同社が最近銀行株を購入したと明らかにした上で「われわれの考えでは23年に大幅なリセッションに陥ることは避けられるはずだ。銀行に対する投資家心理は改善するだろう」と語った。
(Lewis Krauskopf記者)