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カナダドルは対ドルで緩やかに持ち直しているものの、目先は下押し圧力が意識されそうです。
カナダ中銀がタカ派姿勢を弱めたほか、トルドー政権の人気凋落で政策運営が懸念されています。
もっとも、原油相場は下げづらく、カナダドルを下支えするとみます。
ドル・カナダドル相場は年明け以降、1.3684カナダドルを大底に足元は1.33カナダドルを上抜けました。
テクニカル上の重要な節目である1.32カナダドルを目指す展開です。
隣国アメリカのインフレにピークアウトの兆しがみられ、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締め姿勢を後退させていることがドル売りを招き、カナダドルを押し上げる要因になっています。
ただ、ドル売りが一服すれば、今度はカナダドル売りに振れる可能性があります。
カナダ銀行(中銀)は1月25日の定例会合で政策金利の引き上げ幅を前回の0.50ptから縮小し、0.25ptとしました。
同国の消費者物価指数(CPI)は6%台に鈍化し、中銀の予測通りに物価が落ち着けば利上げは休止する方針です。
マックレム総裁は利下げには否定的な見解ですが、ハト派に傾きつつあります。
足元で発表されたカナダの経済指標は強弱まちまちながら、アメリカ同様、製造業で景況感の低迷が目立ちます。
1月31日の月次国内総生産(GDP)は前年比+2.8%と、前月の+3.1%を下回る内容でした。
政府目標である成長率について2022年の+3.6%を達成できても、2023年は+1.0%へと減速は避けられない見通しです。
批判の矛先はトルドー政権に向かうことになるでしょう。
トルドー首相はコロナ対策を名目に、2023年10月に行われる予定だった総選挙を2年前倒ししました。
同首相率いる中道左派の自由党は前回2019年よりも議席を小幅に上積みしたものの、過半数を下回り、政策ごとに他党と連携する少数与党の不安定な状況です。
最近の世論調査では野党第1党の保守党が常にリード。
コロナ政策で政権への反発が強まるなか、総選挙が行われれば政権交代の可能性は高いでしょう。
自由党を支えてきた中道左派の新民主党との関係にも、医療問題であつれきが生じているもようです。
トルドー氏は2015年の総選挙に勝利して首相に就任すると、知的で容姿の優れたリーダーとして世界中のマスコミが持ち上げてきました。
同氏の支持率は40%前後と低くはありませんが、不支持率は60%台に上昇し政局リスクを考慮すればカナダドルは買いづらいでしょう。
一方、相関性の高い原油相場は下げづらく、カナダドルをサポートするかもしれません。
ウクライナ戦争をきっかけに国際社会は新たな「冷戦」で欧米と非欧米に分断されたことにより、主にユーロ圏で需要過多が続くため原油相場は底堅い値動きが予想されます。
イランの核合意をめぐる欧米との交渉もとん挫。
国際政治の不安定化による構造的な問題が目先も原油安を抑えそうです。
(吉池 威)
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