© Reuters.
*09:00JST ユーロに試練の秋【フィスコ・コラム】
欧州中央銀行(ECB)が利上げ終了を示唆し、ユーロに下落圧力が強まっています。
ユーロ圏の高インフレと低成長で、スタグフレーション懸念は再燃。
コロナ禍やウクライナ戦争の打撃から持ち直すことなく、ユーロは試練の秋を迎えるのでしょうか。
ユーロ・ドルは7月18日に付けた1.1275ドルをピークに下落基調へ転じ、9月に入ってからは下げ足を速めています。
ECBは14日の理事会で政策金利据え置きの予想に反し、10会合連続の利上げを決定。
ただ、ラガルド総裁は引き締めサイクルの頂点かどうかの明言を避けたものの、利上げ終了の思惑が広がりました。
足元は下値支持線として意識される1.06ドルに近づき、そこで下げ止まるか注目されます。
ユーロ・ドルは昨年も軟調で、7月には1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)を20年ぶりに割り込みました。
インフレが消費マインドを弱め、スタグフレーション入りは避けられないとの見方が浮上。
ECBがこの時に始めた引き締めのスタンスを強めるたびに警戒の売りが膨らみます。
その後、2ケタ台の消費者物価指数がピークを越えると、ECBのタカ派姿勢を背景にユーロは上向きました。
しかし、ユーロは完全に回復しないうちに、再び下落圧力にさらされています。
北海ブレント先物は9月に入って1バレル=90ドルの節目を突破。
エネルギー相場を押し上げ、天然ガス価格も上昇基調を強めています。
オーストラリアにある米シェブロンの液化天然ガスのプラントで労働者がストライキを回避したものの、欧州天然ガス価格の指標であるオランダTTFは底堅く、インフレ圧力は弱まっていません。
ECBが四半期ごとに公表する経済見通しでは、2024年のインフレ率が上方修正されていますが、コア指数は下方修正。
23-25年の域内総生産(GDP)は下方修正されました。
このうち、24年は前回の+1.5%から+1.0%へと大きく減速するとみられ、高インフレと低成長が同時進行するスタグフレーション的な流れが警戒されます。
引き続き物価関連指標と景況感指数がユーロを下押しする手がかりとなりそうです。
もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)は現時点で年内あと1回の利上げが予想されるものの、直近の米インフレ率は強弱まちまち。
今後インフレが沈静化すれば利上げ終了の思惑が広がり、ドル売りが見込まれます。
また、日銀が年内にマイナス金利を解除するとの観測から、ドル・円は下落基調を強める可能性もあります。
いずれもユーロを下支えする要因のため、昨年のようなパリティ割れは回避されると予想します。
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
(吉池 威)
意見を投稿する
他のユーザーと交流したり、あなたの見通しを他の人と共有したり、筆者に質問するにはコメントを使うことをお勧めします。
我々みんなが高いレベルの議論を維持するために以下の事を心に留めてください。
スパムや乱用の加害者は、サイトから削除され、Investing.comの裁量により今後の登録が禁じます。