■開発パイプライン
(2)テロメスキャン
○概要
テロメスキャンは、アデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲのGFPを組み込んだ遺伝子改変型アデノウイルスとなる。
テロメラーゼ陽性細胞(がん細胞、炎症細胞など)に感染することでGFPが発現し蛍光発光する作用を利用して、がん転移のプロセスに深く関与するCTCを高感度に検出する。
これまでPET検査などでは検出が難しかった直径5mm以下のがん細胞の早期発見や、転移・再発がんの早期発見などが可能となるほか、検出したCTCを遺伝子解析することによって最適な治療法を選択する「コンパニオン診断」※のツールとして利用することも可能となる。
当面は転移・再発がんの早期発見用検査薬としての事業化を目指している。
なお、検査方法としては、患者の血液を採取し、赤血球の溶血・除去を行ってからテロメスキャンを添加しウイルスを感染させる。
感染により蛍光発光したGFP陽性細胞を検出、CTCの採取といった流れとなる。
また、必要に応じて採取したCTCの遺伝子解析も行っている。
※患者によって個人差がある医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。
薬剤に対する患者個人の反応性を治療前に検査することで、最適な治療法を選択できるようにする。
新薬の臨床開発段階でも用いられる。
また、テロメスキャンF35はテロメスキャンに違う型のアデノウイルス遺伝子を組込み、感染率の向上とがん特異性を高めた改良型のテロメスキャンとなる。
それぞれの特性には一長一短があり、テロメスキャンは蛍光体の輝度が高く検出がしやすいものの、白血球にも反応し若干発光するため、白血球を取り除く工程が必要となる。
一方、テロメスキャンF35はがん細胞のみを発光させるため、白血球を取り除く工程は不要となるが、蛍光発光の強度が若干弱いといった難点がある。
○開発状況 テロメスキャンに関しては、2012年より国内で研究目的での受託検査を開始しており、順天堂大学及び独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンターと共同研究を開始している。
また、2015年11月には米ペンシルバニア大学発のバイオベンチャーであるLiquid Biotech社とライセンス契約を締結し、北米での事業展開に関する業務提携を発表した。
Liquid Biotech社は、2010年よりオンコリスバイオファーマ {{|0:}}とペンシルバニア大学で進めてきたテロメスキャンの共同研究の成果が良好だったことを受け、テロメスキャンの商業化を目的に設立された大学発ベンチャーである。
業務提携の内容は、北米でのテロメスキャンを用いたがん検査の事業化権の許諾と、契約締結から一定期間経過後に、テロメスキャンをLiquid Biotech社に有償販売していくこととなっている。
また、同社はLiquid Biotech社が発行する転換社債2百万ドルの引受を行い(すべて転換すると議決権比率20%)、また、Liquid Biotech社が一定の研究成果を獲得した場合には、追加で1百万ドルの転換社債の引受けを行う(すべて転換すると議決権比率30%)スキームとなっている。
なお、2015年12月期に契約一時金98百万円を売上高に計上したほか、今後は開発の進捗に応じてマイルストーン収入及び、テロメスキャンを有償販売した場合は、その販売額が売上高に計上される見込みだ。
また、2015年12月には米ディサイフィラ社が開発を進めている新規分子標的抗がん剤の臨床試験において、副次的な有効性評価項目測定のためにテロメスキャンを採用することが発表されている。
通常、抗がん剤の臨床試験ではがんの再発リスクも含めた検証を行う必要があるため、投薬後2~3年の観察期間が必要とされるが、テロメスキャンを用いれば、CTCの個数経時変化などを高精度に短期間で評価できるため、開発効率が向上する効果が期待されている。
一方、テロメスキャンF35 については、2014年に韓国のWONIK CUBE Corp.に韓国でのライセンス導出契約を締結しており、2014年12月期に契約一時金14百万円を売上高に計上している。
○競合状況 同社が事業対象としているCTCの検査市場では、現在米Veridex社のCellSearchシステムが唯一欧米市場で販売承認を受けており、既に乳がん・大腸がん・前立腺がんのCTC検出において使用されている。
また、同業他社もCTC検査機器の開発にしのぎを削っており、開発競争が激しい領域となっている。
しかし、これらの検査システムはEpCAM(上皮細胞接着分子)と呼ばれる細胞表面マーカーを検出する方法を用いており、その細胞表面マーカーの発現が低いと言われている肺がん細胞等の検出が困難であるという欠点を持っている。
一方、同社のテロメスキャンでは肺がん細胞を始めとするほとんどのがん種において、CTCの検出が可能なほか、生きているCTCや悪性度の高い間葉系がん細胞を捕捉することが可能で、がん転移後にCTCを分析することで最適な治療法を選択できるといった長所を持つ。
米ペンシルバニア大学で実施したCTCの検出率比較においても、7種のがん疾患のうち5種において検出率に顕著な優位差が出ているとの調査結果が発表されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
テロメラーゼ陽性細胞(がん細胞、炎症細胞など)に感染することでGFPが発現し蛍光発光する作用を利用して、がん転移のプロセスに深く関与するCTCを高感度に検出する。
これまでPET検査などでは検出が難しかった直径5mm以下のがん細胞の早期発見や、転移・再発がんの早期発見などが可能となるほか、検出したCTCを遺伝子解析することによって最適な治療法を選択する「コンパニオン診断」※のツールとして利用することも可能となる。
当面は転移・再発がんの早期発見用検査薬としての事業化を目指している。
なお、検査方法としては、患者の血液を採取し、赤血球の溶血・除去を行ってからテロメスキャンを添加しウイルスを感染させる。
感染により蛍光発光したGFP陽性細胞を検出、CTCの採取といった流れとなる。
また、必要に応じて採取したCTCの遺伝子解析も行っている。
※患者によって個人差がある医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。
薬剤に対する患者個人の反応性を治療前に検査することで、最適な治療法を選択できるようにする。
新薬の臨床開発段階でも用いられる。
また、テロメスキャンF35はテロメスキャンに違う型のアデノウイルス遺伝子を組込み、感染率の向上とがん特異性を高めた改良型のテロメスキャンとなる。
それぞれの特性には一長一短があり、テロメスキャンは蛍光体の輝度が高く検出がしやすいものの、白血球にも反応し若干発光するため、白血球を取り除く工程が必要となる。
一方、テロメスキャンF35はがん細胞のみを発光させるため、白血球を取り除く工程は不要となるが、蛍光発光の強度が若干弱いといった難点がある。
○開発状況 テロメスキャンに関しては、2012年より国内で研究目的での受託検査を開始しており、順天堂大学及び独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンターと共同研究を開始している。
また、2015年11月には米ペンシルバニア大学発のバイオベンチャーであるLiquid Biotech社とライセンス契約を締結し、北米での事業展開に関する業務提携を発表した。
Liquid Biotech社は、2010年よりオンコリスバイオファーマ {{|0:}}とペンシルバニア大学で進めてきたテロメスキャンの共同研究の成果が良好だったことを受け、テロメスキャンの商業化を目的に設立された大学発ベンチャーである。
業務提携の内容は、北米でのテロメスキャンを用いたがん検査の事業化権の許諾と、契約締結から一定期間経過後に、テロメスキャンをLiquid Biotech社に有償販売していくこととなっている。
また、同社はLiquid Biotech社が発行する転換社債2百万ドルの引受を行い(すべて転換すると議決権比率20%)、また、Liquid Biotech社が一定の研究成果を獲得した場合には、追加で1百万ドルの転換社債の引受けを行う(すべて転換すると議決権比率30%)スキームとなっている。
なお、2015年12月期に契約一時金98百万円を売上高に計上したほか、今後は開発の進捗に応じてマイルストーン収入及び、テロメスキャンを有償販売した場合は、その販売額が売上高に計上される見込みだ。
また、2015年12月には米ディサイフィラ社が開発を進めている新規分子標的抗がん剤の臨床試験において、副次的な有効性評価項目測定のためにテロメスキャンを採用することが発表されている。
通常、抗がん剤の臨床試験ではがんの再発リスクも含めた検証を行う必要があるため、投薬後2~3年の観察期間が必要とされるが、テロメスキャンを用いれば、CTCの個数経時変化などを高精度に短期間で評価できるため、開発効率が向上する効果が期待されている。
一方、テロメスキャンF35 については、2014年に韓国のWONIK CUBE Corp.に韓国でのライセンス導出契約を締結しており、2014年12月期に契約一時金14百万円を売上高に計上している。
○競合状況 同社が事業対象としているCTCの検査市場では、現在米Veridex社のCellSearchシステムが唯一欧米市場で販売承認を受けており、既に乳がん・大腸がん・前立腺がんのCTC検出において使用されている。
また、同業他社もCTC検査機器の開発にしのぎを削っており、開発競争が激しい領域となっている。
しかし、これらの検査システムはEpCAM(上皮細胞接着分子)と呼ばれる細胞表面マーカーを検出する方法を用いており、その細胞表面マーカーの発現が低いと言われている肺がん細胞等の検出が困難であるという欠点を持っている。
一方、同社のテロメスキャンでは肺がん細胞を始めとするほとんどのがん種において、CTCの検出が可能なほか、生きているCTCや悪性度の高い間葉系がん細胞を捕捉することが可能で、がん転移後にCTCを分析することで最適な治療法を選択できるといった長所を持つ。
米ペンシルバニア大学で実施したCTCの検出率比較においても、7種のがん疾患のうち5種において検出率に顕著な優位差が出ているとの調査結果が発表されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)