[東京 11日 ロイター] -
10月ロイター企業調査によると、今後景気が「後退局面を迎える」と考える企業が4割強を占め、その過半数が後退は2021年まで継続するとみていることがわかった。景気悪化懸念の強まりで、日銀の追加緩和が必要と考える企業の割合は夏場に比べて大幅に増えているが、それでも「追加緩和をすべきでない」との意見が6割近くと過半数を占めている。緩和の副作用として金融機関弱体化への懸念が強まっていることが背景にある。
調査期間は9月26日─10月7日に実施。調査票発送企業は504社程度、回答社数は240社程度だった。
<景気停滞、増税巡る混乱と海外不透明感で>
10月の消費増税後から来年にかけて、日本経済は「景気後退局面となる」との回答が全体の41%を占めた。「横ばいで推移」は58%で、合わせてほぼ全社が景気は停滞するとみている。
消費増税については、政府がそれを上回る規模の経済対策を打っていることもあり、「8%に上がった時に比べて上昇率は小さく、大きな影響はないだろう」(電機)との見方がある。むしろ「税率の混在がかえって混乱を助長し、消費マインドを確実に冷やしている。影響は多大」(卸売)との指摘があるほか、「軽減税率の導入で、せっかくの税収増の効果が低下することを懸念している」(サービス)、「軽減税率は判断を誤った政策」(建設)など厳しい声も目立つ。
加えて「景気はグローバル経済の動きによる」(運輸)、「予測不可能な状態」(紙・パルプ)など不透明感が意識され、「景気拡大に向かうきっかけが想定しがたい」(機械)との見方もある。
この結果、景気底打ちの時期については、来年前半との見方は18%に過ぎず、来年末までに回復するとの見通しも半数以下に留まる。回答者の過半数となる56%が底打ちは2021年以降になるとみている。
<景気悪化でも追加緩和反対は過半数に>
米中摩擦による世界経済減速や、消費増税による景気押し下げ懸念が強いにもかかわらず、金融緩和での景気下支えには否定的な声が7月調査に続き過半数を占めた。
日銀は「追加緩和すべきではない」は57%となり、7月調査の88%から大きく減少したものの、依然として半数を上回っている。
その理由として「過去の事例において景気押し上げ効果は極めて限定的だということが実証されている」(電機など)、「緩和マネーがうまく循環していない。出口戦略がより難しくなることを懸念」(情報サービス)といった意見がある。「金融緩和よりも公共投資など実需等を喚起する政策を優先すべき」(鉄鋼)など財政出動の方が有効との声もある。
さらに追加緩和に「デメリットを感じる」企業が全体の約3割を占め、その半数以上がマイナス面として「金融機関の弱体化」を挙げている。「これ以上の負担は銀行システムを崩壊させ、マイナスの効果がはるかに大きくなる」(機械)との指摘が複数寄せられた。
追加緩和は「ほとんど経済に影響はない」との回答も42%を占めた。
一方、「追加緩和をすべき」との回答は43%を占め、今年7月調査の12%から大幅に増えた。「消費増税による影響に対応するため」(輸送用機器など)との声が目立つ。
追加緩和は「メリットが大きい」と感じる企業は3割と、デメリットを感じる企業とほぼ同程度。メリットの具体的な効果として「実質金利低下による設備投資促進」を挙げる企業が多かった。このほか円安効果をあげる声もあり「米欧の金融政策との相対関係から対応せざるを得ない」(機械)、「通商戦争に勝つためにも、通貨安競争への予防的緩和も含めて積極的な政策が必要」(卸売)などのコメントがあった。
ただそれでも追加緩和への支持は5割を下回り、景気悪化に対する金融政策への期待感はさほど高くないことがうかがえる。
物価目標の2%については目標を維持すべきとの回答が54%と過半数を占めたが、引き下げるべきが23%、目標設定をやめるべきが21%となった。
(編集:石田仁志)