■要約オンコリスバイオファーマ (T:4588)は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャー。
開発品の上市実績はまだなく、現在は臨床試験を国内外で行う開発ステージの企業となる。
1. テロメライシンの開発動向主要パイプラインであるテロメライシンの臨床試験が国内外で進んでいる。
国内では食道がんを対象とした放射線治療との併用療法(外科手術等の治療法を受けられない患者を対象)による第1相臨床試験が進んでおり、早ければ2019年内にも第2相臨床試験に進む可能性がある。
放射線治療との併用療法では岡山大学で実施した医師主導臨床研究で高い治療効果が得られたことが発表されており、同社は先駆け審査制度※1を使って早期の上市を目指している。
また、食道がん等の固形がんでステージ4の患者を対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用による医師主導治験の第1相臨床試験も進んでおり、その中間報告が2019年3月末に米国で開催される学会で発表される予定となっている。
同発表において免疫チェックポイント阻害剤の単独療法に対して高い治療効果が確認できれば、ライセンス契約の締結に向けて前進することになる。
なお、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法については、米国でコーネル大学が中心となってステージ4の胃がん/胃食道部接合がん患者を対象とした医師主導治験の第2相臨床試験が2019年前半にもスタートするほか、中国では提携先のハンルイ※2が自社開発製品(承認申請中)との併用による第2相臨床試験の開始を目指している。
その他にも国内外のアカデミアから併用療法でテロメライシンの臨床研究を行いたいとの引き合いがここにきて増えており、テロメライシンの注目度が上昇している。
※1 先駆け審査指定制度は、対象疾患の重篤性など、一定の要件を満たす画期的な新薬などについて、薬事承認に関する相談・審査で優先的な取扱いをすることで、承認審査の期間を短縮し、早期の実用化を目指すもの。
通常の新医薬品の場合、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行っているが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月に短縮することが可能となる。
※2 ハンルイはがん治療薬を中心とした中国の大手製薬メーカーで、2017年度の売上高は約2,400億円、従業員数は約1.5万人を有している。
2. その他パイプラインの開発動向その他のパイプラインでは、「OBP-801」(HDAC阻害剤)の眼科領域での開発を進める予定。
京都府立医科大学との共同研究により、加齢黄斑変性症の動物モデルにおいて新生血管の抑制作用だけでなく、網膜の線維化を抑制する効果が確認されたためだ。
同社では年内にも前臨床試験を行い、データの再現性が確認できれば、眼科領域の製薬企業にライセンスアウトしていく方針となっている。
また、がん検査薬のテロメスキャンに関しては、非小細胞肺がん、子宮頸がん、膵がんの3つの領域に絞って、アカデミアなどと共同で臨床試験を進め、承認取得を目指して行く方針となっている。
既存の検査薬と比較して高い検出力が得られており、がんの早期発見や術後検査等での需要拡大が見込まれる。
なお、テロメスキャンについては、米国と韓国で現地企業とライセンス契約を締結しているが、今後、中国や欧州でも契約締結に向けた取り組みを進めていく。
3. 業績動向2018年12月期の業績は、売上高で前期比26.4%減の168百万円、営業損失で1,247百万円(前期は1,078百万円の損失)となった。
テロメライシンやテロメスキャンのマイルストーン収入が無かったことが減収要因となっている。
また、費用面では、販管費の圧縮を図ったものの研究開発費等が前期比1.5億円増加したことが営業損失の拡大要因となった。
2019年12月期については未確定な要素が多いため業績見通しは発表していない。
研究開発費等については国内外で臨床試験が進展することにより前期比6.7億円増の13.9億円を見込んでいる。
なお、2018年12月期末の現預金は2,463百万円となっており、テロメライシンのライセンス契約締結時期によって再度、資金調達を行う可能性が出てくる。
ただ、テロメライシンの臨床試験で今後も良好なデータが発表されれば、ライセンス契約は数百億円規模のディールになる可能性があると弊社では見ている。
当面は3月末に米国の癌学会で発表されるペムブロリズマブとの併用療法に関する臨床試験の中間発表に注目したい。
■Key Points・ウイルス製剤を用いた医薬品事業及びがん検査薬事業を展開・食道がんの放射線併用療法で高い治療効果を確認、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法での中間発表にも注目が集まる・テロメライシンの契約締結により黒字化を実現し、成長拡大フェーズへの移行を目指す(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)