■要約スリー・ディー・マトリックス (T:7777)は2004年に設立されたバイオマテリアル(医療用材料)のベンチャー企業である。
米マサチューセッツ工科大学において開発された「自己組織化ペプチド技術」を使って、外科医療分野の吸収性局所止血材(以下、止血材)「PuraStat®」や粘膜隆起材、再生医療分野の歯槽骨再建材や創傷治癒材のほか、医薬品分野では核酸医薬向け等のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の開発を国内外で進めている。
1. 2019年4月期業績2019年4月期の事業収益は前期比43.8%増の328百万円、営業損失は2,267百万円(前期は1,874百万円の損失)となった。
止血材売上は欧州向けが前期比25.5%増の192百万円、アジア・オセアニア向けが同86.8%増の127百万円と大幅増となり、特に第4四半期だけで見ると前年同期比122.7%増の130百万円、前四半期比でも75.7%増と大きく伸張した点は注目される。
ドイツやイギリスで内視鏡領域、オーストラリアでは内視鏡領域及び耳鼻咽喉科領域(以下、ENT領域)で、同社製品を利用する医師が増え始めたことが主因だ。
オーストラリアについては第3四半期以降、卸販売から直販に切り替えたことで販売価格が2倍に上昇したことも増収要因となっている。
なお、欧州全域における独占販売権契約については、期末までには纏まらなかったものの2019年6月に消化器内視鏡領域で富士フイルムホールディングス (T:4901)の子会社、FUJIFILM Europe BV(以下、FUJIFILM)と締結したことを発表している。
2. 主要パイプラインの開発動向国内で実施されている止血材の臨床試験は、2020年4月期第1四半期中に予定症例数の組入れ完了し、第2四半期中の製造販売承認申請を予定している。
また、粘膜隆起材についてはPMDAとの協議により、性能と安全性が既承認品と同等であることが非臨床試験で検証できれば、「改良医療機器(臨床試験なし)」での申請が妥当であるとの見解を得たことから、2020年4月期第4四半期頃の承認申請を目指す考えだ。
いずれも、早ければ2021年4月期後半に販売承認を得られる可能性がある。
また、米国ではENT領域を対象とした癒着防止材の販売承認を2019年4月に取得しており、2019年秋より直販を開始、販売実績を積み重ねた上で2022年4月期にも独占販売権契約の締結を目指す。
米国市場のENT領域における癒着防止材の潜在需要は100~200億円と推計されるだけに、今後の成長期待は大きい。
3. 2020年4月期業績見通し2020年4月期の事業収益は882~1,432百万円、営業損失は1,866〜1,316百万円を計画している。
収益変動幅は止血材に関する契約一時金及びマイルストーン収入の有無によるもので、主に欧州市場での内視鏡領域以外を対象とした独占販売権契約一時金で500百万円を想定している。
現在、1社と協議を進めているようで、内視鏡領域と同様に販売実績を積み重ねることで契約締結を目指す。
製品売上高の内訳を見ると、止血材は欧州向けで前期比171.8%増の522百万円、アジア・オセアニア向けで同135.4%増の299百万円とそれぞれ大きく伸張する見通し。
欧州向けに関しては、FUJIFILMとの協業により、顧客基盤の短期間での拡大と認知度向上に取り組み、売上成長を加速していく考えだ。
FUJIFILMの営業スタッフに対する教育研修に時間を要するため、実際に販売面で効果が出てくるのは下期以降になると予想される。
4. 中期経営計画中期経営計画での業績数値目標としては、2022年4月期に事業収益で5,305〜7,255百万円、営業利益で1,539〜3,489百万円を掲げた。
収益変動幅は癒着防止材の米国市場での独占販売権契約一時金1,800百万円が主な要因となっている。
製品売上高に関しては止血材を中心に5,305百万円を見込んでおり、製品売上高だけで営業利益の黒字化を目指している。
2019年4月期後半以降、欧州、オーストラリアで販売が本格的に伸び始めており、今後も右肩上がりで売上成長が期待できるものと弊社では予想している。
■Key Points・2019年4月期は開発費や販管費の増加で営業損失が拡大するも、止血材の売上は急速に伸び始める・2020年4月期は北米での販売がスタート、製品売上高は前期比2.7倍に急拡大する見通し・国内で止血材と粘膜隆起材の製造販売承認申請を2020年4月期に行い、2021年4月期の上市を目指す(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)