[ワシントン 15日 ロイター] - 米商務省が15日発表した3月の小売売上高は前月比8.7%減と、調査を開始した1992年以来の大幅なマイナスとなった。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため事業閉鎖が強制される中、広範なモノの需要が抑制された。市場予想は8.0%減だった。
2月は当初発表の0.5%減から0.4%減に改定された。
3月の前年同月比は6.2%減だった。
自動車とガソリン、建材、食品サービスを除いたコア売上高は前月比1.7%増だった。2月は当初発表の横ばいから0.2%減へ下方改定された。コア売上高は国内総生産(GDP)の消費支出に最も大きく連動する。
MUFGのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「エコノミストは長らく新たな世界大恐慌がいつ起こるのかについて考えを巡らせてきたが、それが終わりを迎える」と指摘。「全国民が活動を控えるような事態が二度と起こらないことは明らかだ」と述べた。
3月の小売売上高は462億ドル減少。2007─09年のグレート・リセッション時にはピークから16カ月間で491億ドル減少しており、3月は1カ月でこれにほぼ匹敵する減少となった。
小売売上高統計を集計している商務省の国勢調査局は「事業運営を制限または停止している企業は多いが、今回発表した統計の推計値は公表基準を満たしている」とした。
3月小売売上高の内訳では、自動車が25.6%減少。ガソリン価格の低下により、ガソリンスタンドでの売上高は17.2%減少した。不要不急の小売店閉鎖に伴い、衣料品が50.5%減、家具が26.8%減、スポーツ用品・娯楽品が23.3%減、電子機器・家電が15.1%減となった。
レストラン・バーではテイクアウトや出前サービスに移行したものの、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)措置の影響を補えず、26.5%減少した。
一方、オンライン販売は3.1%増加。食料品は26.9%増、医療・日用品が4.3%増加した。建材は1.3%増だった。
消費者は食品やトイレットペーパー、掃除用具、薬品などの生活必需品を買いだめし、米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コム (O:AMZN)やスーパーマーケットなどの小売店は売り上げが増えたものの、社会生活の制約からその他の大半の小売店は売上が落ち込んでいる。こうした落ち込みは一部の小売店の売り上げ増加を大幅に上回る。
新型ウイルス危機のさなか、何百万人もの失業者が出ている。エコノミストは米経済が深刻なリセッション(景気後退)に陥っているとみており、この日の小売売上高の統計はこうした見方を後押しする。感染拡大を抑えるため、州や地方政府は「自宅待機」や「外出規制」を指示しており、90%以上の人口に影響している。経済活動は急停止した。
ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)の経営学教授、Sung Won Sohn氏は「経済はほぼ崩壊している」と述べた。「新型ウイルスの感染の伸びが落ち着けば底を打つだろう。かなり落ち込んだところから持ち直すことになる」との見方を示した。
個人消費は米経済の3分の2以上を占める。2019年第4・四半期の国内総生産(GDP)は年率2.1%増で、個人消費は1.8%増だった。新型ウイルスの感染拡大に対応するため米政権は、一部の世帯への現金給付や失業保険手当ての増加を盛り込んだ2兆3000億ドル規模の支援策を導入したものの、エコノミストは20年第2・四半期GDPが最大41%減となり個人消費も落ち込みが続くとみている。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのエコノミスト、ティム・クインラン氏は「一部の項目は底堅いものの個人消費は総じて、かつてないほどの落ち込みとなるだろう」とし、「スーパーマーケットでの買い占めは、その他の項目での落ち込みを相殺できない」と述べた。
エコノミストによると、米経済は3月にリセッション入りした。米国が景気後退に陥ったかどうかを判断する全米経済研究所(NBER)は、多くの国で採用されている基準である2四半期連続のマイナス成長ではなく、経済活動の停滞が広域にわたり数カ月以上続くかどうかをみている。