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パンチ Research Memo(2):金型用部品の専業で製造から販売まで、標準製品から特注品まで手掛ける

発行済 2017-01-10 16:00
更新済 2017-01-10 16:33
パンチ Research Memo(2):金型用部品の専業で製造から販売まで、標準製品から特注品まで手掛ける
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■会社概要

(1)会社沿革

パンチ工業 (T:6165)は1975年創業の金型用部品メーカーで、当初はプリント基板用穴あけピンの販売からスタートした。
同社の事業が大きく成長する契機となったのは、1982年に世界で初めてプラスチック金型用部品、ハイス(高速度工具鋼)エジェクタピンの標準化と量産化に成功したことである。


当時、主要取引先であったエレクトロニクスメーカーでは、SCM3エジェクタピン(クロムモリブデン鋼)を使用していたが、精度や耐久性の向上を求める声が強く、こうしたニーズに応えるべく当時は商品化が困難と言われていた高硬度のハイス鋼によるエジェクタピンの開発に取り組んだ。
同社では開発を進めるに当たって、金属の専門知識を持つ大学の研究機関に協力を仰ぐだけでなく、社員を大学の研究室に派遣し、金属についての知識や熱処理技術を修得させたほか、材料商社などの協力もあって従来のSCM3エジェクタピンよりも寸法精度を約2倍に高め、耐久性も飛躍的に向上したハイスエジェクタピンの開発に成功し、同社独自の規格で標準化し、量産化していった。


金型用部品業界において後発だった同社のシェアは、ハイスエジェクタピンの量産化によって一気に拡大し、また、1989年にはプラスチック金型用部品で蓄積してきた技術力や信頼性をベースにプレス金型用部品市場にも進出し、超精密・高耐久性といった要求度の高い顧客ニーズに応えながら市場を開拓してきた。
このように、同社の成長力の源泉は、新たな技術を開発する強い意思や柔軟な発想力、行動力などにあると言える。


また、第2の成長の契機となったのは、1990年の中国進出になる。
同社は国内での将来の人材確保難を予測し、また更なる生産コスト低減を図るために、中国での生産拠点を早期に構築してきた。
当初は大連に子会社を設立し、日本から原材料を持込み、半製品にして日本に逆輸入することからスタートしたが、その後、中国で家電製品や自動車の生産が拡大していくなかで、現地での金型用部品の需要が増大し、同社も2001年に販売拠点を設立し、中国での販売を拡大してきた。
現在では中国での生産拠点は6ヶ所、販売拠点は32ヶ所まで拡大し、同社グループの売上比率で48%(2016年3月期)と国内の43%を上回るまでに成長している。


その他の海外展開としては、2010年にインドに販売拠点を設立したほか、2013年にはマレーシアの金型用部品メーカーであるPanther Precision Tools Sdn. Bhd.(現:マレーシアパンチ)をグループ会社化し、2015年にはベトナムに新たな生産子会社を設立(2016年10月稼働)するなど、アジア圏での事業基盤強化を進めてきた。
また、2017年4月には米国で初めての販売子会社の営業を開始する予定となっている。


なお、株式上場は2012年12月で、東京証券取引所市場第2部に上場し、2014年3月に第1部銘柄に指定されている。


(2)事業内容

同社は金型用部品の専業で製造から販売まで、標準製品から特注品まで手掛けていることを強みとしている。
主にプラスチック製品の製造工程で用いられる射出成型用金型に組み込まれるエジェクタピンやスプルーブシュ等の金型用部品、プレス金型用のパンチ・ダイやダイセットガイド等の製造・販売を行っている。


生産拠点は国内4拠点、中国6拠点、東南アジア2拠点(マレーシア、ベトナム)の合計12拠点となり、販売拠点は国内14拠点、中国32拠点、その他で6拠点の52拠点となっている。
欧米市場については現地の販売代理店などを通じて販売しているが、米国では2017年4月に同社としては初めてとなる販売子会社の営業を開始する予定となっている。


国内の生産では社内で一気通貫の生産体制を構築しているほか、約300の協力工場などをニーズに合わせながら活用している。
外注品としては、ボルトやナットなど同社で生産する必要性がないものや、同社で対応できない一品モノなどがあり、一部生産工程を外注しているケースもある。
中国においてもビジネスモデルは国内と同じである。


また、同社の製品はカタログ品と呼ばれる標準製品と顧客のニーズに合わせた特注品があり、売上比率は半々となっている。
金型用部品の新規顧客開拓はカタログ品の取引からスタートするケースが一般的で、カタログ品で顧客の信頼を高めてから、付加価値の高い特注品の受注を獲得していく戦略となる。
収益性の観点で見ると、継続的な受注が見込まれるカタログ品が工場の稼働率を安定化させる役割を果たし、付加価値の高い特注品を獲得することで利益率を高めていくバランスのとれた構造になっていると言える。
こうした事業構造は、創業以来培ってきた高い技術力と一気通貫の生産体制、顧客密着型の営業体制を構築してきたことで実現可能なものとしており、同社の強みでもある。


2017年3月期第2四半期累計期間における顧客業種別売上構成比を見ると、自動車が46.0%、電子部品・半導体が18.6%、家電・精密機器が12.8%となっており、これら3業種で全体の約77%を占めることから、自動車及びエレクトロニクス業界の生産動向と相関性が高いと言える。
また、地域別売上構成比では日本が42.9%、中国が48.1%と両国で全体の約90%を占める。
中国では5割弱が自動車業界向けとなっており、外資系、ローカル系問わず取引関係がある。
顧客数は国内で約6,000社、中国で約8,000社と多く、特定顧客の生産動向に影響を受けることはほとんどない。


なお、為替変動が営業利益に与える影響は現段階では限定的である。
同社が輸出入取引を円建てで行っているためだ。
中国子会社の業績については、人民元を円換算した際の為替レート変動分が売上高に影響を与えるものの、営業利益面では日本向けに一定量、輸出しているため、大半が相殺される格好となる。
なお、中国子会社には金利の安いUSドル建ローンがあり、人民元安ドル高の局面では、営業外費用として評価損失が発生する可能性があるため、通貨オプション等により、為替変動リスクをヘッジしている。
また、海外子会社(インド除く)の決算は12月決算となっており、同社の連結業績には1四半期前の業績が組み込まれている。
例えば、2017年3月期第2四半期(2016年7月−9月期)の連結業績には、海外子会社(インド除く)の4月−6月期の業績が反映されることになる。


(3)市場規模と同社の業界ポジション

世界の金型市場については、自動車やエレクトロニクス製品の市場拡大を背景に、2010年以降緩やかな成長が続いており、2014年の7.0兆円から2015年は7.1兆円、2016年は7.3兆円に拡大すると同社では推計している。
金型部品市場は金型市場の約7%を占めると見られ、金型部品の市場規模としては2015年に4,900億円、2016年に5,100億円の規模となる。


同推計に基づき同社の地域別業界シェアで見ると、日本では約20%とミスミグループ本社 (T:9962)に次ぐ2位、中国では約10%でトップシェア、世界で見ると約7%となる。
ただ、金型用部品も千差万別で、同社が手掛ける精密金型用部品に絞れば、実際のシェアはもう少し高くなる。


地域別の市場環境及び顧客動向について見ると、国内市場は為替相場の変動が企業収益や景況感の下押し圧力となっており、製造業の景況感は弱含みの状態が続いている。
業界別で見ると、自動車業界は2016年4月の熊本地震の影響や軽自動税制見直しによる軽自動車の生産減少により当第2四半期累計期間の自動車生産台数は前年同期比1%減と若干のマイナス成長となった。
また、電子部品の生産動向についてはスマートフォン市場の成長鈍化や円高の進展が影響し、前年同期比で10%強のマイナス成長となった。
一方、家電についてはエアコンを中心に同1ケタ増と堅調に推移した。


中国市場では景気の減速はあるものの、GDP成長率は6%台の伸びと引き続き成長拡大が続いている。
自動車の生産動向については小型車の減税終了前の駆け込み需要もあって、前年同期比で2ケタ増と好調に推移している。
また、電子部品についても中国ローカルのスマートフォンメーカーの生産が拡大しており堅調な推移となった。
精密機器も堅調に推移したが、家電については在庫調整の影響もありやや低調な推移となった。


東南アジア・インド市場については、景気全般は緩やかな拡大ペースが続いている。
自動車業界については、タイやインドネシアの生産が堅調な一方で、マレーシアが低調だった。
また、電子部品は低価格スマートフォンの需要が引き続き旺盛だったほか、家電についても堅調を持続した。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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