■クロス・マーケティンググループ (T:3675)の業績動向
2. 評価上の費用・損失の販管費・特別損益への計上について
親会社株主に帰属する当期純利益が赤字になったのは、営業利益の低迷に加え、2014年に買収したKadenceとの契約に絡んで、951百万円の特別損失が発生したためである。
具体的な契約の内容は、買収時の2014年11月に約14百万USドルを支払い、3年後の業績の達成状況により、2017年10月に追加的に0~最大15百万USドルを支払うというものであった。
結果として、2017年6月期決算でKadenceの営業利益が5,112千USドルに膨らんで、2015年6月期の353千USドルからV字回復を達成したため、10百万USドルを2017年8月に追加的に支払うことになったのである。
これに伴い、まず、追加支払い分を買収時に支払ったものとみなして、のれんと3年間ののれん償却額を修正、2015年~2017年第2四半期の追加償却額220百万円を、2017年12月期第2四半期の販管費に過年度のれん償却として一括計上、また、買収時に計上したとみなされる金額全額216百万円を減損損失として特別損失に計上した。
さらに、2017年12月期第3四半期において子会社の状況をより厳しく査定したことなどにより、減損損失676百万円を特別損失に計上することになった。
以上により、販管費で220百万円、特別損失で951百万円の一時的コストが発生したのである。
ちなみに、追加的に発生したのれん償却を販管費から除くと、営業利益は947百万円となり減益率は29.4%に縮まることになるが、苦戦に変わりない。
また、多額の償却費や特別損失はある程度予見できたものと考えられる。
これらは、今後の糧となれば、真に成長のための一時的なコストと言うことができる。
3. 財政状態
クロス・マーケティンググループ (T:3675)の2017年12月期末の財政状態は、総資産は9,564百万円(前期末比369百万円減)となり、主な項目として現金及び預金2,047百万円(同114百万円減)、受取手形及び売掛金3,229百万円(同156百万円減)、のれん1,516百万円(同188百万円減)となった。
負債は5,966百万円(同507百万円増)となったが、買掛金1,379百万円(同181百万円増)、借入金2,833百万円(同688百万円増)であった。
純資産は3,598百万円(同875百万円減)となり、利益剰余金が835百万円減少した。
同社の財務諸指標にも、Kadenceにまつわるのれん償却や減損損失の影響が顕著に表れている。
資産収益性であるROAとROEは2014年12月期を底に改善傾向がみられたが、2017年12月期のROAは水準を低下、ROEはマイナスとなった。
ともに利益率の悪化が主因で、回転率やレバレッジは悪化していない。
また、安全性比率も軒並み悪化しているが、今のところ致命的な状況に陥っているわけではない。
したがって、収益性にフォーカスして早急に改善させればよいということになる。
特に先行的・固定費的な投資と費用については慎重を期したほうがいいかもしれない。
4. 2018年12月期の業績見通し
クロス・マーケティンググループ (T:3675)は2018年12月期業績を、売上高18,614百万円(前期比11.1%増)、営業利益1,250百万円(同72.1%増)、経常利益1,172百万円(同95.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益600百万円(前期は703百万円の損失)と見込んでいる。
2018年12月期は、主力事業である国内リサーチ事業を中心に業績回復を予想している。
一部にやや保守的な印象もあるが、前期業績未達後としては、非常に現実的な業績予想となったと言うことができる。
国内リサーチ事業は、人員増強が一巡することに加えスキルアップによる生産性向上が見込まれるため、営業を積極化する方針で、2ケタ成長で売上高100億円の大台を狙う。
生産性向上から収益性も改善することが期待される。
海外リサーチは、M&Aが一旦一巡し海外の土台作りを終えたことから、次の成長へ向けて人員の入れ替えや増加した子会社の整理統合など、組織を安定化させていく考えである。
このため、業績計画にあまり特殊な要件を織り込んでおらず、売上高は横ばいの予想となっている。
但し、過年度のれん償却がなくなるため増益は期待できそうである。
ITソリューションは、受託開発の需要が強い上アウトソーシングが安定してきているため、強い成長を見込んでいる。
その他事業は、広告プロモーションが伸び盛りであることから売上成長は衰えないが、人材投資が先行するため利益貢献は小さいと思われる。
以上から、2018年12月期は、国内リサーチとITソリューションの売上増により、人件費など販管費の増加をカバー、2017年12月期に発生した過年度のれん償却もなくなるため、利益水準が元に戻るという計画になっている。
また、特別損失もなくなることから、親会社に帰属する当期純利益は大きく黒字を回復する見込みである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
2. 評価上の費用・損失の販管費・特別損益への計上について
親会社株主に帰属する当期純利益が赤字になったのは、営業利益の低迷に加え、2014年に買収したKadenceとの契約に絡んで、951百万円の特別損失が発生したためである。
具体的な契約の内容は、買収時の2014年11月に約14百万USドルを支払い、3年後の業績の達成状況により、2017年10月に追加的に0~最大15百万USドルを支払うというものであった。
結果として、2017年6月期決算でKadenceの営業利益が5,112千USドルに膨らんで、2015年6月期の353千USドルからV字回復を達成したため、10百万USドルを2017年8月に追加的に支払うことになったのである。
これに伴い、まず、追加支払い分を買収時に支払ったものとみなして、のれんと3年間ののれん償却額を修正、2015年~2017年第2四半期の追加償却額220百万円を、2017年12月期第2四半期の販管費に過年度のれん償却として一括計上、また、買収時に計上したとみなされる金額全額216百万円を減損損失として特別損失に計上した。
さらに、2017年12月期第3四半期において子会社の状況をより厳しく査定したことなどにより、減損損失676百万円を特別損失に計上することになった。
以上により、販管費で220百万円、特別損失で951百万円の一時的コストが発生したのである。
ちなみに、追加的に発生したのれん償却を販管費から除くと、営業利益は947百万円となり減益率は29.4%に縮まることになるが、苦戦に変わりない。
また、多額の償却費や特別損失はある程度予見できたものと考えられる。
これらは、今後の糧となれば、真に成長のための一時的なコストと言うことができる。
3. 財政状態
クロス・マーケティンググループ (T:3675)の2017年12月期末の財政状態は、総資産は9,564百万円(前期末比369百万円減)となり、主な項目として現金及び預金2,047百万円(同114百万円減)、受取手形及び売掛金3,229百万円(同156百万円減)、のれん1,516百万円(同188百万円減)となった。
負債は5,966百万円(同507百万円増)となったが、買掛金1,379百万円(同181百万円増)、借入金2,833百万円(同688百万円増)であった。
純資産は3,598百万円(同875百万円減)となり、利益剰余金が835百万円減少した。
同社の財務諸指標にも、Kadenceにまつわるのれん償却や減損損失の影響が顕著に表れている。
資産収益性であるROAとROEは2014年12月期を底に改善傾向がみられたが、2017年12月期のROAは水準を低下、ROEはマイナスとなった。
ともに利益率の悪化が主因で、回転率やレバレッジは悪化していない。
また、安全性比率も軒並み悪化しているが、今のところ致命的な状況に陥っているわけではない。
したがって、収益性にフォーカスして早急に改善させればよいということになる。
特に先行的・固定費的な投資と費用については慎重を期したほうがいいかもしれない。
4. 2018年12月期の業績見通し
クロス・マーケティンググループ (T:3675)は2018年12月期業績を、売上高18,614百万円(前期比11.1%増)、営業利益1,250百万円(同72.1%増)、経常利益1,172百万円(同95.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益600百万円(前期は703百万円の損失)と見込んでいる。
2018年12月期は、主力事業である国内リサーチ事業を中心に業績回復を予想している。
一部にやや保守的な印象もあるが、前期業績未達後としては、非常に現実的な業績予想となったと言うことができる。
国内リサーチ事業は、人員増強が一巡することに加えスキルアップによる生産性向上が見込まれるため、営業を積極化する方針で、2ケタ成長で売上高100億円の大台を狙う。
生産性向上から収益性も改善することが期待される。
海外リサーチは、M&Aが一旦一巡し海外の土台作りを終えたことから、次の成長へ向けて人員の入れ替えや増加した子会社の整理統合など、組織を安定化させていく考えである。
このため、業績計画にあまり特殊な要件を織り込んでおらず、売上高は横ばいの予想となっている。
但し、過年度のれん償却がなくなるため増益は期待できそうである。
ITソリューションは、受託開発の需要が強い上アウトソーシングが安定してきているため、強い成長を見込んでいる。
その他事業は、広告プロモーションが伸び盛りであることから売上成長は衰えないが、人材投資が先行するため利益貢献は小さいと思われる。
以上から、2018年12月期は、国内リサーチとITソリューションの売上増により、人件費など販管費の増加をカバー、2017年12月期に発生した過年度のれん償却もなくなるため、利益水準が元に戻るという計画になっている。
また、特別損失もなくなることから、親会社に帰属する当期純利益は大きく黒字を回復する見込みである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)