■主要開発パイプラインの動向4. 急性呼吸窮迫症候群治療候補薬アンジェス (T:4563)は2018年7月にカナダのバイオベンチャーであるVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品の共同開発契約を締結している。
具体的には、Vasomuneが創製した化合物(Tie2受容体アゴニスト化合物)について全世界を対象とした開発を共同で進め、開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して、契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払うというもの。
同社はHGF遺伝子治療用製品の開発を通じて蓄積した血管疾患に関する知見とノウハウを、今回の共同開発で生かしていくとしている。
最初の適応疾患として重症の呼吸不全である急性呼吸窮迫症候群(以下、ARDS)※を想定した非臨床開発を進めている。
ARDSについては新型コロナウイルス感染症患者が重症化した場合に発症しやすく、死に至るケースが報告されている。
2019年までの年間患者数は米国とEUで年間約37万人、平均死亡率は40%に達し、現時点では根本的な治療薬の無い疾患となる。
新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、ARDS治療薬の開発について国内外で活発化しており、注目度が上昇している。
Vasomuneでは2020年5月にARDS治療薬の開発に向けて、専門医等で構成される臨床科学諮問員会を立ち上げたことを発表しており、今後、同委員会のアドバイスも受けながら開発戦略を策定し、2020年内に第1相臨床試験の開始を目指している。
Vasomuneと同社は臨床試験によりPOCを取得した段階で、製薬企業に開発・販売権を導出することを想定している。
※ARDSは根本的な治療薬がなく、有効なARDS治療薬が開発できた場合の潜在的な事業機会は世界で25億米ドル以上と見られている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)