[ワシントン 25日 ロイター] - 米商務省が25日発表した8月の耐久財受注統計は、民間設備投資の先行指標とされるコア資本財(非国防資本財から航空機を除く)の受注が前月比1.8%増と、市場予想の0.5%増を上回った。7月のコア受注は当初発表の1.9%増から2.5%増へ上方改定された。長期にわたり低迷した機器の設備投資が持ち直していることを示唆した。
ただ、企業や数千万人もの失業者を支援する政府資金が枯渇する中、新型コロナウイルスの危機による景気後退(リセッション)からの回復が鈍化しているとの見方は変わらない。地域によっては新型コロナ感染が増えており、個人消費が抑制される可能性がある。小売売上高は既に鈍化している。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は24日の議会証言で、さらなる財政支援の必要性を訴えた。これまでの経済回復のペースを維持するか、大幅に遅い経済回復となるかがかかっていると主張した。11月3日の大統領選までに追加支援策が導入される可能性は低い。
ウェルズ・ファーゴ証券(ノースカロライナ州)のシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「設備投資の回復が停止に向かう兆しは見られず、第3・四半期の経済成長の重要なけん引役になるだろう」と述べた。
コア資本財受注では機械や一次金属、電算機・電子製品の伸びが目立った。一方、組立金属と電機・家電は減少した。
国内総生産(GDP)の設備投資の算出に用いられるコア資本財の出荷は前月比1.5%増だった。7月は2.8%増。企業の設備投資は第2・四半期に年率26%減少し、過去最大の落ち込みを記録した。機器の設備投資は35.9%減と、過去最大のマイナスだった。機器の設備投資は5四半期連続で落ち込んでいる。
新型コロナの感染拡大を抑えるため3月中旬に強制的に事業が閉まった後、夏の間は事業再開に伴い経済活動が急速に持ち直した。GDPは第3・四半期に最大32%増と、過去最大の伸びとなる見込み。第2・四半期は31.7%減と、政府が記録を開始した1947年以降最も大幅なマイナスだった。
ただ財政支援が薄れる中、第4・四半期の成長見通しに陰りが見えている。ゴールドマン・サックスは23日、さらなる財政支援がないことを理由に第4・四半期のGDP見通しを6%増から3%増へ引き下げた。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズ(ペンシルベニア州)のチーフエコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「経済再開に伴う人為的な急回復が減速することは分かっているが、問題はどの程度減速するかだ。9月分の数字がその答えの手掛かりになるだろう」と述べた。
8月の全体の耐久財受注は前月比0.4%増だった。7月は11.7%増加していた。耐久財はトースターから航空機まで3年以上使われるモノを指す。8月は0.5%増加した輸送機器が押し上げ要因だった。ただ輸送機器のうち自動車と国防航空機は落ち込んだ。民間航空機の受注は2カ月連続でなかった。
米航空機大手ボーイング (N:BA)は、新型コロナ危機による航空需要の低迷で旅客機のキャンセルが出ており打撃を受けている。また、「737MAX」がインドネシアとエチオピアの墜落事故を受け2019年3月以降運航停止となっていることも重しだ。