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ヒマラヤ Research Memo(8):足元は大手2社に遅れを取るも、収益改善施策により収益力は回復に向かう

発行済 2017-08-04 15:57
更新済 2017-08-04 16:00
ヒマラヤ Research Memo(8):足元は大手2社に遅れを取るも、収益改善施策により収益力は回復に向かう
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■同業他社比較

スポーツ用品小売で同業大手のゼビオホールディングス(以下、ゼビオ) (T:8281)、アルペン (T:3028)との直近の経営数値の比較をまとめてみた。


1. 月次売上高、売場面積
既存店売上高の前年同月比伸び率推移を見ると、2016年は7月を除いて3社ともほぼ前年同月の水準を割り込んで推移してきたが、2017年3月以降は各社とも前年を上回る月が増えてきており、ほぼ同様の傾向となっている。
このうちヒマラヤについては、客数が伸び悩んでいるものの買い上げ点数の増加により客単価が上昇していることがプラス要因となっている。
アウトドア用品が好調を持続していることや、衣料関係を中心に販売価格のミスマッチが縮小していることが背景にあると考えられる。
7月以降は九州での大雨の影響が懸念されるものの、既存店ベースでは堅調な売上げが続くものと予想される。


売場面積については、2015年までは3社とも出店数の増加に伴い拡大傾向が続いていたが、2016年に入ってアルペンが不採算店舗の見直しを始めたことにより頭打ちの傾向となっているほか、ヒマラヤ (T:7514)についても2017年に入って大量閉店を実施したことで、売場面積は減少に転じている。
EC市場の拡大や異業種企業参入による市場環境の変化とともに、スポーツ用品量販店の店舗戦略も変化していると考えられる。
同社においては、今後の新規出店について慎重に進めていくスタンスであり、実店舗での売場面積は伸び悩む可能性があるものの、東北・北海道など未進出エリアがまだ残されていること、新業態店舗の開発によりマスターゲットでの展開が期待されることなどから、長期的には売場面積を拡大していく余地はあると考えられる。


2. 収益性指標
収益性について比較すると、売上総利益率は3社の中でアルペンが安定して40%台をキープしており最も高い水準となっている。
ゼビオと同社は2015年まで35~40%とほぼ同水準で推移していたが、2016年以降は同社の利益率が低下し、やや差が開いた状況となっている。
これは前述したように、デフレ環境下での販売価格ミスマッチに対応した値引き推進と、冬物商材の販売ピーク時に暖冬の影響を受けたこと、とりわけ西日本でその影響が顕著だったことが要因と考えられる。
ただ、直近四半期では同社の売上総利益率も35%台に回復しており、今後は再び格差が縮小していくものと予想される。


在庫回転率(売上原価÷期中平均在庫)を見ると、直近2四半期においては同社の改善が顕著となっており、3社の中ではもっとも回転率が高くなっている。
店舗の大量閉店を実施したことに加えて、スキー・スノーボード用品や季節商材等の在庫適正化に取り組んだことが改善要因になっていると考えられる。
在庫水準の適正化は値引き販売リスクの軽減につながるため、今後の売上総利益率の改善が期待されることになる。


販管費率に関しては、各社ともここ数年は人件費の増加を主因として上昇傾向となっていたが、同社に関しては2016年後半以降、前年同期比で低下傾向となっている。
特に、2017年8月期第3四半期は30.5%と連結決算を開始した2012年8月期以降では最も低い水準となっている。
前述したように不採算店舗等の削減を実施したことで店舗運営費用が減少したことが主因だ。
店舗の見直しについてはほぼ一巡したことから、今後更に低下する可能性は低いものの、収益体質の改善が進んだことが見て取れる。


なお、3社の比較ではアルペンの水準が高くなっているが、これは他社に対して人件費率の水準が高いことが要因と考えられる。
売上規模が同水準のゼビオとの比較で見ると、全従業員数が1割程度多いほか、正社員数の比率も約39%とゼビオの約27%に対して12ポイントほど高くなっている。
ちなみに、同社の2016年8月期の正社員比率は約38%となっている。
ゼビオに関しては、店舗でのアルバイト従業員比率が高くなっていることが要因と考えられる。


2011年度以降の営業利益率の推移を見ると、大手2社が2014年度を底にして回復トレンドに入っているのに対して、同社は逆に収益性が低下している。
ここ2年間は記録的な暖冬(特に、西日本エリア)によりスキー・スノーボード用品が低調だったこと、他2社と比較して相対的に売上構成比が高いサッカー用品の低調が続いていることなどが要因と考えられる。
ただ、同社では不採算店舗を中心に大量閉店を実施したことで、直近の収益は2四半期連続で増益となるなど回復しており、2017年8月期の営業利益率も前期比で上昇に転じる可能性が高いと弊社では見ている。


3. 健全性・効率性指標
財務の健全性について見れば、大手2社の自己資本比率が50%以上で推移しているのに対して、同社は30%台とやや低水準となっている。
これは同社の有利子負債依存率 (有利子負債÷総資産) が高いことが主因となっている。
直近四半期の水準で見ると、同社は2017年5月末で24.9%と大手2社 (2017年3月末でアルペン13.7%、ゼビオ0.1%)に対して格差があり、その差が自己資本比率の差となって表れている。
ただ、有利子負債の水準そのものは健全な水準であり、自己資本比率も上場企業の中で見れば極端に見劣りするわけではない。


株主資本効率の観点で見れば、2014年度まで同社のROEは大手2社よりも上回る水準で推移していたが、2015年度は収益悪化によりもっとも低い水準となった。
2016年度も会社計画で見るとヒマラヤが最も低くなる計算だが、業績の上振れによりROEの水準もさらに上昇する可能性がある。
また、今後も財務レバレッジを効かせた経営を継続していくことから、収益の回復傾向が続けばROEは大手2社を上回る水準で推移することが予想される。


4. 株価指標
主な株価指標を見ると、予想PERに関してはゼビオが20倍台と最も低いが、東証1部上場企業平均の約16倍と比較すればいずれも平均を上回る水準となっている。
一方、PBRについては3社とも0.8倍前後でほぼ同水準の評価となっている。
1部上場企業平均が約1.3倍であることから、株式市場からの評価は決して高いとは言えない水準と言える。
ここ数年、スポーツ用品小売市場の競争激化によって業界全体の利益率が低下しており、今後の収益成長期待も後退していることが、株価に反映されているものと考えられる。


このため、株価上昇には収益回復の実行と今後の成長シナリオを明確に示していくことが重要と弊社では考えている。
同社に関しては、2017年8月期第2四半期以降収益が回復に転じており、最悪期は脱したものと考えられる。
ただ、不採算店舗の削減等が主な要因であり、成長に向けた道筋については今後の取り組み次第と言える。
赤字が続いている子会社のB&Dの立て直しや新業態の開発による新規顧客層の取り込み、EC事業の収益性向上に向けた取り組みなどが業績面でプラスに寄与し始めれば、株価面でも再評価されるものと弊社では考えている。
当面は月次売上の動向が注目されるが、既存店売上高で前年同月比を上回る水準が続けば収益回復期待も一段と高まるものと予想される。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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