Orathai Sriring Kitiphong Thaichareon
[バンコク 19日 ロイター] - 2023年第4・四半期のタイの国内総生産(GDP)は予想外のマイナス成長となった。政府は今年の経済成長予測も下方修正。市場では中央銀行が首相の利下げ要求を受け入れるのではないかとの見方が浮上している。
タイのセター首相は国内経済が危機的状況にあるとし、中銀に利下げを要請。これに対し、中銀のセタプット総裁は、タイ経済は首相が言うような「危機」ではなく、応急的な景気刺激策で対応すべき状態ではないと述べていた。
タイ国家経済社会開発評議会(NESDC)が19日発表した23年第4・四半期のGDPは季節調整済みの前期比で0.6%減と、予想に反して縮小した。高水準の家計債務や中国経済減速によるリスクが高まっている。
マイナス成長は1年ぶり。市場予想は0.1%増、第3・四半期(改定値)は0.6%増だった。
前年比では1.7%増と第3・四半期(改定値)の1.4%増からやや加速したが、市場予想の2.5%増は下回った。
キャピタル・エコノミクスは、第4・四半期のGDPについて、予算の遅れなどにより、固定投資が減少したことが大きな重しになったと指摘。個人消費も停滞し、輸出はほぼ横ばいだったと述べた。
カシコン銀行の資本市場調査責任者、コブシッティ・シルパチャイ氏は第4・四半期のマイナス成長で定義上のリセッション(景気後退)に足を一歩踏み入れたと指摘。
リスクの高さや中国の景気減速がタイ観光部門に与える影響により中銀に利下げ圧力がかかるだろうと予想。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が利下げする前にタイ中銀が動けば為替市場の変動率を高めることになるため、動くのは難しいかもしれないとした。
統計を受け、タイ中央銀行が4月10日の次回政策決定会合で利下げする可能性が高まった。
スタンダード・チャータード銀行のエコノミストは、第2・四半期に25ベーシスポイントの利下げが2回あると予想した。
NESDCのダヌチャー長官は記者会見で、金融政策が経済を支えるべきとし、迅速な利下げが有益になるとの見方を示した。セター政権は中銀に利下げを繰り返し促してきた。
セター首相は19日、「利下げは全国民の負担軽減につながる」と改めて求め、24年予算は早ければ4月に準備されるべきと述べた。
タイ中銀のシニアディレクター、サッカポップ・パニャヌクル氏はロイターの取材に対し、低調な第4・四半期GDPはサプライズではなく、いくつかの指標は従来予想よりも高かったと述べ、最新の経済データは次回の政策決定会合で議論されるとした。
23年のGDPは前年比1.9%増加と、市場予想を下回る伸びにとどまり、22年(改定値)の2.5%増から減速した。観光客数や個人消費の増加が追い風となったが、その一部が製造業や公共支出の落ち込みに相殺された。
24年の成長率見通しは2.2─3.2%と、昨年11月時点の2.7─3.7%を下方修正した。
24年の輸出見通しも2.9%増に引き下げ、インフレ率見通しは0.9─1.9%とした。中銀の目標レンジは1─3%。
NESDCは輸出が回復すれば24年第1・四半期GDPはマイナスにならない見込みとした。