[モスクワ/ロンドン 30日 ロイター] - ロシア連邦保安庁(FSB)は30日、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)モスクワ支局のエバン・ガーシュコビッチ記者の身柄をウラル連邦管区のエカテリンブルクで拘束したと明らかにした。スパイ容疑が拘束理由で、モスクワの裁判所は同氏を約2カ月勾留する命令を出した。
FSBは、ガーシュコビッチ記者が米国側からある軍需企業の情報収集を指示されていた疑いがあるとしている。WSJはガーシュコビッチ記者の拘束は虚偽の申し立てに基づくものとしており、ロシアによるウクライナ全面侵攻開始後で外国人ジャーナリストに対する最も深刻な公的措置となった今回の動きを受け、米ロ関係が一段と悪化するおそれがある。
FSBは声明で「ガーシュコビッチ氏が米国側の要請に基づき、ロシアの軍産複合体企業1社の活動に関する国家機密として分類される情報を収集していたことが立証された」とし、スパイ容疑で身柄を拘束したと表明。ガーシュコビッチ氏が情報を収集していたとする工場の名称や場所は明らかにせず、ウラル地方の都市エカテリンブルクで身柄を拘束したとのみ明らかにした。同氏の疑惑を裏付ける文書や映像も公表していない。
ロシアの法律では、スパイ行為は最長で20年の懲役が科される可能性がある。
WSJは声明で、ガーシュコビッチ記者の安全を「深く憂慮」しているとし、「FSBの申し立てを強く否定する。WSJの信頼できる記者の即時解放を求める」とした。
ガーシュコビッチ氏は法廷で無罪を主張。WSJは、今回の件はソ連崩壊後のロシアで外国人ジャーナリストに対するスパイ容疑の刑事事件としては初めてのものとしている。
ロシア紙コメルサントは、ガーシュコビッチ氏はモスクワに移送され、FSBの取調拘置所であるレフォルトボ刑務所に収容されると報道。モスクワのレフォルトボにある地方裁判所はこの日、ガーシュコビッチ氏の5月29日までの公判前勾留を命じた。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、エカテリンブルクでのガーシュコビッチ氏の活動は「ジャーナリズムとは無関係」だったとし、外国人ジャーナリストの役割が他の活動の隠れみのとして使われたのは今回が初めてではないと指摘。さらに、ガーシュコビッチ氏がジャーナリズムとは無関係の活動に従事していたというロシアの主張について「公の場でそれを検証する機会が与えられるだろう」と述べた。
ロシア大統領府は、ガーシュコビッチ氏は「現行犯逮捕」されたと理解しているとし、米国の報道機関のためにロシアで働く他のジャーナリストは、適切な証明書を持ち、「通常のジャーナリスト活動」と見なされるものを行っている限り、その職に留まることができるとの立場を示した。
在ロシア米大使館から現時点でコメントは得られていない。
ガーシュコビッチ氏は31歳。2017年からロシアを取材しており、昨年1月からWSJのモスクワ支局で勤務していた。
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