■LeTech (TYO:3497)の事業概要
1. 不動産市場の概況
(一財)日本不動産研究所「第45回不動産投資家調査」(2021年10月調査)によると「今後1年間の投資に対する考え方」としての回答のうち95%(前年同期は92%)が「新規投資を積極的に行う」と回答している。
金融緩和が継続し、不動産投資家の積極的な投資姿勢は、コロナ禍により一時若干低下したものの依然として積極的であることが分かる。
リーマン・ショック時(2009年4月調査)にはこの指標は45%程度まで下落したが、当時と比較して変化は軽微である。
また投資意欲は窺えるものの、対象物件によって明暗が分かれている。
上記調査で「新規投資を積極的に行う」と回答した127名の対象物件として、オフィスビルや賃貸住宅、物流施設は46%~61%という回答となり相対的に高く、商業施設及び宿泊施設では7~19%となり相対的に低いという結果となった。
同社では賃貸住宅を主力としているものの、ホテルへの投資を一部行っており、出口戦略が課題となる。
2. 不動産ソリューション事業
第1の「不動産ソリューション事業」は、同社の主力事業である。
様々なソースの物件情報から不動産を仕入れて最適なバリューアップを実施して資産価値を高めたうえで、主に個人富裕層や資産保有目的の事業法人に対して個々の顧客ニーズに即した物件を販売している。
販売する収益不動産は、独自の営業ルートにより仕入れた物件を建物管理状態の改善、用途変更、テナントの入れ替え、大規模修繕等を施すことによって、資産価値の向上を図っている。
すなわち、土地有効活用、住宅(マンション)開発、オフィス・ホテル・民泊施設等の商業開発、コンバージョン(既存の建物の用途変更を行って全面的に改装して全く新たな建物として再生させること)及びリノベーション(既存の建物に対して大規模な改装工事を行うことで建物を新築の状態にまで美しくして価値を高めること)等によってバリューアップを図り、売却をしている。
同社の主力商品は低層賃貸マンションシリーズ「LEGALAND」である。
敷地面積30~200坪程度、総戸数10~35戸であり、狭小な敷地面積や地域特有の制限下でも開発可能な単身・少人数世帯向け賃貸マンションである。
外観・ディテールにこだわり、地下フロアの設置、エレベーターや梁・柱をなくすなど企画開発ノウハウを詰め込んだ設計構造が特徴である。
富裕層の相続税対策ニーズに対応しており、販売単価約5~8億円、販売利回り約4~6%であり、一棟販売をしている。
開発中の案件も含め(2022年1月末時点)、東京エリアに84棟、大阪エリアに7棟あり、すべて都心に集中している。
不動産ソリューション事業の業績は、セグメント業績を開示し始めた2017年7月期から2020年7月期まで右肩上がりで推移してきたが、2021年7月期はコロナ禍の影響で売上高・セグメント利益ともに減少を余儀なくされた。
利益率は12.1%(2021年7月期)であり、一定水準以上を維持している。
2022年7月期第2四半期はインバウンド向け大規模物件の売却に伴う棚卸資産の評価減(2,836百万円)計上の影響で大幅損失となったが、その影響を除くと黒字(170百万円の利益)を維持している。
3. 不動産賃貸事業
第2の「不動産賃貸事業」は、同社の安定的な収益基盤の指標となるセグメントであり、同社保有の収益不動産及び販売に至るまでの所有不動産からの賃貸収入を収益の柱としている。
ソリューション力を生かした効率の良い運用、情報を生かした仕入による良質な資産、不動産開発のノウハウを駆使した幅広い用途への投資などが同社の強みである。
また、不動産管理会社と入居者をより良い形でつなぎ、建物をサポートするマンション・ビルの修繕・原状回復工事を主としたファシリティマネジメント事業(FM事業)を併せて行っている。
FM事業では、不動産賃貸事業における賃料の増収や稼働率の向上をテーマとして、同社保有物件の退去時の立会いや原状回復工事、リノベーション工事、補修工事なども行っている。
不動産賃貸事業の業績は、セグメント業績を開示し始めた2017年7月期から2019年7月期まで堅調に推移し、2020年7月期以降は長期的な収益と引き合いの状況を考慮し保有不動産を売却した結果、売上高・セグメント利益ともに減少している。
セグメント利益率は3事業の中では最も高い。
4. その他事業
第3の「その他事業」では、不動産コンサルティング事業における任意売却を中心とした不動産仲介を行っている。
不動産コンサルティング事業は同社創業以来の事業で、法的側面から生じる弁護士からの民事訴訟案件や金融機関等からのローン延長案件に対して、任意売却の仲介及びコンサルティングなどの課題解決法を提案してきた。
不動産の専門家として、債務者への買主仲介から関係各所との交渉、別除権者(破産手続や民事再生手続に左右されずに実定法上の担保権の対象となる財産等を処分することで回収する権利を有する担保権者)との接触、配分案作成、不動産の調査や価格査定、権利譲渡、リーシング、入札、場合によっては同社での買い取りなど、顧客のニーズに合わせた多様なサービスを展開している。
現在では、法的案件整理以外でも同社が培った不動産コンサルティングのノウハウを生かして、様々な場面で課題解決法を提案している。
なお、介護事業は2021年7月に業界大手の(株)ニチイ学館へ譲渡した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
1. 不動産市場の概況
(一財)日本不動産研究所「第45回不動産投資家調査」(2021年10月調査)によると「今後1年間の投資に対する考え方」としての回答のうち95%(前年同期は92%)が「新規投資を積極的に行う」と回答している。
金融緩和が継続し、不動産投資家の積極的な投資姿勢は、コロナ禍により一時若干低下したものの依然として積極的であることが分かる。
リーマン・ショック時(2009年4月調査)にはこの指標は45%程度まで下落したが、当時と比較して変化は軽微である。
また投資意欲は窺えるものの、対象物件によって明暗が分かれている。
上記調査で「新規投資を積極的に行う」と回答した127名の対象物件として、オフィスビルや賃貸住宅、物流施設は46%~61%という回答となり相対的に高く、商業施設及び宿泊施設では7~19%となり相対的に低いという結果となった。
同社では賃貸住宅を主力としているものの、ホテルへの投資を一部行っており、出口戦略が課題となる。
2. 不動産ソリューション事業
第1の「不動産ソリューション事業」は、同社の主力事業である。
様々なソースの物件情報から不動産を仕入れて最適なバリューアップを実施して資産価値を高めたうえで、主に個人富裕層や資産保有目的の事業法人に対して個々の顧客ニーズに即した物件を販売している。
販売する収益不動産は、独自の営業ルートにより仕入れた物件を建物管理状態の改善、用途変更、テナントの入れ替え、大規模修繕等を施すことによって、資産価値の向上を図っている。
すなわち、土地有効活用、住宅(マンション)開発、オフィス・ホテル・民泊施設等の商業開発、コンバージョン(既存の建物の用途変更を行って全面的に改装して全く新たな建物として再生させること)及びリノベーション(既存の建物に対して大規模な改装工事を行うことで建物を新築の状態にまで美しくして価値を高めること)等によってバリューアップを図り、売却をしている。
同社の主力商品は低層賃貸マンションシリーズ「LEGALAND」である。
敷地面積30~200坪程度、総戸数10~35戸であり、狭小な敷地面積や地域特有の制限下でも開発可能な単身・少人数世帯向け賃貸マンションである。
外観・ディテールにこだわり、地下フロアの設置、エレベーターや梁・柱をなくすなど企画開発ノウハウを詰め込んだ設計構造が特徴である。
富裕層の相続税対策ニーズに対応しており、販売単価約5~8億円、販売利回り約4~6%であり、一棟販売をしている。
開発中の案件も含め(2022年1月末時点)、東京エリアに84棟、大阪エリアに7棟あり、すべて都心に集中している。
不動産ソリューション事業の業績は、セグメント業績を開示し始めた2017年7月期から2020年7月期まで右肩上がりで推移してきたが、2021年7月期はコロナ禍の影響で売上高・セグメント利益ともに減少を余儀なくされた。
利益率は12.1%(2021年7月期)であり、一定水準以上を維持している。
2022年7月期第2四半期はインバウンド向け大規模物件の売却に伴う棚卸資産の評価減(2,836百万円)計上の影響で大幅損失となったが、その影響を除くと黒字(170百万円の利益)を維持している。
3. 不動産賃貸事業
第2の「不動産賃貸事業」は、同社の安定的な収益基盤の指標となるセグメントであり、同社保有の収益不動産及び販売に至るまでの所有不動産からの賃貸収入を収益の柱としている。
ソリューション力を生かした効率の良い運用、情報を生かした仕入による良質な資産、不動産開発のノウハウを駆使した幅広い用途への投資などが同社の強みである。
また、不動産管理会社と入居者をより良い形でつなぎ、建物をサポートするマンション・ビルの修繕・原状回復工事を主としたファシリティマネジメント事業(FM事業)を併せて行っている。
FM事業では、不動産賃貸事業における賃料の増収や稼働率の向上をテーマとして、同社保有物件の退去時の立会いや原状回復工事、リノベーション工事、補修工事なども行っている。
不動産賃貸事業の業績は、セグメント業績を開示し始めた2017年7月期から2019年7月期まで堅調に推移し、2020年7月期以降は長期的な収益と引き合いの状況を考慮し保有不動産を売却した結果、売上高・セグメント利益ともに減少している。
セグメント利益率は3事業の中では最も高い。
4. その他事業
第3の「その他事業」では、不動産コンサルティング事業における任意売却を中心とした不動産仲介を行っている。
不動産コンサルティング事業は同社創業以来の事業で、法的側面から生じる弁護士からの民事訴訟案件や金融機関等からのローン延長案件に対して、任意売却の仲介及びコンサルティングなどの課題解決法を提案してきた。
不動産の専門家として、債務者への買主仲介から関係各所との交渉、別除権者(破産手続や民事再生手続に左右されずに実定法上の担保権の対象となる財産等を処分することで回収する権利を有する担保権者)との接触、配分案作成、不動産の調査や価格査定、権利譲渡、リーシング、入札、場合によっては同社での買い取りなど、顧客のニーズに合わせた多様なサービスを展開している。
現在では、法的案件整理以外でも同社が培った不動産コンサルティングのノウハウを生かして、様々な場面で課題解決法を提案している。
なお、介護事業は2021年7月に業界大手の(株)ニチイ学館へ譲渡した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)