キットアライブ Research Memo(4):Salesforce支援を軸に事業展開する札幌拠点のIT企業(3)

発行済 2025-04-24 18:44
更新済 2025-04-24 18:45
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*18:44JST キットアライブ Research Memo(4):Salesforce支援を軸に事業展開する札幌拠点のIT企業(3) ■キットアライブ (TYO:5039)の事業概要

5. 市場性・成長性
国内のパブリッククラウドサービス市場とCX関連ソフトウェア市場は、今後も高い成長が見込まれている。
パブリッククラウド市場は、企業のDX推進を背景に拡大を続けており、長期的な成長が期待される。
一方、CX関連ソフトウェア市場も、顧客体験の向上を目的とした企業の投資が増加しており、安定した成長が見込まれる。


これらの市場環境は、同社にとって事業拡大の好機となる。
同社はSalesforceを活用したクラウドソリューションの設計・開発・保守を提供しており、クラウド市場の成長とともに需要の拡大が期待される。
また、CX関連ソフトウェア市場の拡大は、CRM領域でのソリューション提供を強化する同社にとって追い風となる。
特に、企業のクラウド移行や業務効率化のニーズが高まるなか、同社のサービスは重要な役割を果たすことになると見られる。
しかし、成長市場であるがゆえに競争も激化している。
同社が持続的な成長を遂げるためには、技術力の向上や高付加価値サービスの提供が求められる。
また、エンジニアの採用強化、育成、サービス単価の適正化、新規市場開拓といった戦略を着実に実行することが、競争力を維持し、成長を加速させる鍵となる。


総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、日本のパブリッククラウドサービス市場は今後も拡大が続く見込みである。
成長率はやや緩やかになるものの、2028年まで堅調に市場規模が拡大すると予測されており、クラウド活用の高度化が進展している。
なかでも、PaaS(Platform as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)市場においては、大手クラウドベンダーの寡占傾向が強まっている。
特にAWS(Amazon Web Services)は、PaaS/IaaS利用企業の半数以上が利用しており、1年間で10ポイント以上のシェア増を示すなど、圧倒的な存在感を示している。
また、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platform(GCP)も高いシェアを維持しており、企業のクラウド基盤の選定においてはこれらの主要プレイヤーが中核を担っている。
このような市場動向は、クラウド導入支援やアプリケーション開発支援を行う事業者にとって、引き続き大きなビジネスチャンスが存在することを示している。
一方で、技術的対応力や大手ベンダーとの連携、専門人材の確保が差別化の鍵となる。


(1) クラウドサービス
クラウドサービスにより、低コストで拡張性が高いシステムを構築し、地理的な制約がなくリモートワークで柔軟な働き方を実現できる。
さらにはビッグデータ、AI、機械学習などの活用により、クラウドサービスはさらに高度な機能を発揮することから、需要はさらに増加し、市場規模も拡大すると見られる。


「クラウドサービス」の種類には、1) 「Salesforce」のようなSaaS、2) クラウド上でインフラストラクチャ※を提供するIaaS、3) クラウド上でアプリケーションを開発・運用するためのプラットフォームを提供するPaaSなどがある。


※ セキュリティや制御などを含めて、ソフトウェアやアプリケーションを運用するうえで必要な仕組みのこと。


(2) SaaS製品
SaaSは利用者にとって利便性が高く、導入が比較的容易であるため、クラウドサービスのなかでも多く利用されている。
IaaSやPaaSは、自らアプリケーションを開発したり、インフラストラクチャを構築したりするサービスである。
SaaSと比較するとある程度知識や技術が必要であり、導入するにはハードルが高いため、一般的な企業は導入しにくい。


SaaS製品には、営業、マーケティング、カスタマーサポートなどの業務を支援するCRM、人事・採用・研修などの業務を支援する「HRM(Human Resource Management)」、オンラインでの会議やセミナーなどを実施する「オンライン会議」、ECサイトやアプリなどで決済処理を行う「オンライン決済ツール」、AI・機械学習に特化した「AI・機械学習ツール」など様々な製品がある。
同社が得意とし、顧客への導入支援に注力する分野がクラウド型CRMであり、同社はその世界的シェアを持つSalesforceを中心に取り扱っている。


日本国内ではあらゆるビジネスの分野でデジタル化が進み、SaaS製品の需要も高まっている。
コロナ禍の影響によりリモートワークやテレワークなど働き方が変化し、SaaS製品を活用する企業が増加傾向にある。
一般的に、月額にて利用できるSaaS製品に比べて、商品を購入しなければならないパッケージ型製品は導入コストや保守コストが高いため、コストパフォーマンスに難がある。
従来パッケージ型製品でしか提供されていなかったサービスも、SaaSの進化によってSaaS製品でも提供できるようになり、SaaS製品のシェアが拡大している要因にもなっている。


日本国内にも、クラウド名刺管理サービスを提供するSansan (TYO:4443)、クラウド型CRMを提供するサイボウズ (TYO:4776)、「楽楽清算」をはじめとした業務支援サービスを提供するラクス (TYO:3923)、クラウド型会計ソフトを提供するマネーフォワード (TYO:3994)、同じくフリー (TYO:4478)といったSaaS製品を取り扱う企業(以下、SaaS企業)が数多く存在する。
SaaS製品は、継続した契約が続く間は定期的に収益をあげられる「ストック型ビジネス」であるため、将来的な収益予想が立てやすくなる。


日本のSaaS市場は欧米に比べて10年以上遅れており、近年ようやく成長期に突入したのに対し、欧米のSaaS市場は既に拡大期を迎えている。
世界市場においては、Salesforce、Microsoft (NASDAQ:MSFT)、Adobe (NASDAQ:ADBE)、Oracle (NYSE:ORCL)、SAP (NYSE:SAP)などのSaaS企業が既に多くのシェアを占めているのに対し、国内のSaaS企業のシェアはわずか数%しかない。
海外のSaaS企業の代理店やパートナー企業は幅広い裁量権があり自己責任でSaaS製品を販売し、自己負担で教育・サポートを行う場合が多い。
ルールの縛りが厳しい国内のSaaS企業の代理店・パートナー企業に比べ、同社をはじめとする「Salesforce」のパートナー企業は、それぞれ自由度が高い独自の販売システムを確立しているため、成長スピードが非常に速い。


(3) 「Salesforce」
「Salesforce」は、CRM分野の製品でMicrosoft「Microsoft365」「Dynamics 365」や、Adobe「Creative Cloud」、Oracle「Oracle Cloud Applications」、SAP「SAP S/4HANA Cloud」などと並び世界的なシェアを持っている。
また「Salesforce」を販売するSalesforceは世界最大手で、約15万社の国内外の取引先導入実績がある。
コロナ禍における好業績を受け、大幅に採用を増やしたが、2023年1月に経営環境の悪化により大幅な人員削減を発表し拡大路線を修正した。
しかしながら、同社は国内のクラウドサービス市場は今後も拡大すると見ており、特に影響はないと見ている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)

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