■中期経営計画3. 売上拡大のための具体的戦略成長戦略の中でエンジンとなるのがグミである。
グミは1990年代に普及したため、現在も子供の頃にグミを食べて育った世代が増えるに従い市場が拡大しているところである。
また、子供の頃に食べたことのないシニア層向けや、若い母親が咀嚼のサポートとして子供に与える市場も拡大している。
カンロ (T:2216)は、グミを知らないシニア世代とグミに慣れ親しんだ世代の双方にアプローチすることで、シェア拡大を目指している。
このためグミの製造ラインを新設したわけで、本稼働の2019年2月以降、生産能力の倍増と原価低減を見込んでいる。
また、これまでグミ生産のボトルネックから思い切った拡大策や新ジャンルなど新製品の発売を控えざるを得なかったが、反面アイデアはストックされている。
加えて、地方スーパーやドラッグストアなど新たな販売見込み先も開拓中である。
大きく期待が膨らむが、収益への貢献は中期経営計画の後半の、まさにこれからである。
逆に言えば、中期経営計画の中盤まではハードキャンディが期待以上に頑張ったと言える。
ハードキャンディの需要は低迷気味だったが依然大きな市場であり、近年も同社の「金のミルク」や「ボイスケアのど飴」など新しい美味しさや機能を持つ製品が受け入れられている。
このため、多様化する消費者ニーズに応えて付加価値の高い製品を開発していけば、今後もハードキャンディが収益貢献することは可能と思われる。
そこで同社は、2018年12月期に「カンロ飴」と「健康のど飴」のブランド再生をスタートさせるなど、中期経営計画中盤までハードキャンディで積極果敢に市場を攻めた。
このことが飴市場全体を拡大に転じさせたと言って過言でないと考える。
加えて、手軽に持ち歩きやすいコンパクトタイプのニーズが強いことから、中期経営計画後半においてもハードキャンディの収益押し上げ効果に期待したい。
中期経営計画のとおりに成長力が高まれば、海外進出や新規菓子開発の計画が復活することも考えられる。
ドメインの拡大は成長戦略に欠かせないものであり、いつまでも取り止めのままで良いはずはないからである。
まったく新しいセグメントの開発については、ハードキャンディもグミも好調なことから中長期的な課題となりそうだが、海外については、日本の飴に対する需要が根強いアジアが今まさに進出のチャンスと言えるだろう。
このような新たなドメインに打って出ることこそ、「老舗」の進化を象徴することと言え、その際、三菱商事と連携している強みが一層発揮されるものと期待する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)