[東京 29日 ロイター] - 東京株式市場は強気の相場展開を続けており、日経平均株価は29日、約1年ぶりに一時2万3000円を回復した。外部環境も追い風だが、とりわけ目立つのは、業績悪化銘柄が上昇する物色動向だ。反対に好業績銘柄が売られるなど、市場は現在の状況を「石が浮かび木の葉が沈む」と例える。その背景には「今が業績の底」という期待感があり、株価上昇の原動力になっている。
日経平均株価は寄り付きから間もなく2万3000円台を回復し、立ち会い時間中としては昨年10月以来の高値水準を付けた。米中通商合意への期待による米国株式の上昇、1ドル109円台まで振れた円安が好感されている。
一方、3月期企業の上半期決算の発表が本格化し企業業績にも関心が集まっているが、その反応に違和感を覚える市場関係者が多い。通常であれば、好決算銘柄が買われ内容が悪化した銘柄が売られるところ、正反対の動きとなっているためだ。
第1・四半期に続いて再度の業績予想下方修正となり「復活の兆しのようなものがみえたら良かったが、それがなかった」(あかつき証券の投資調査部長・藤井知明氏)と指摘されたファナック (T:6954)[nL3N27D0RG]はさすがに軟化したものの、ショック安を引き起こすことはない。むしろ、下げ率が1%前後にとどまったことが市場に安心感を与えたほどだ。
象徴的なのは、29日の東証1部値上がり率ランキングで上位に入っている日本航空電子工業 (T:6807)だ。前日に通期見通しの下方修正を発表しながら急騰、4月につけた年初来高値1898円を大幅に更新した。
その半面、アイチ コーポレーション (T:6345)は上半期の営業利益が46%増と大幅増益を発表したものの、株価は東証1部値下がり率ランキング上位となっている。
こうした動きについて大和証券・チーフグローバルストラテジストの壁谷洋和氏は「決算で悪いものが出ても、そのまま受け止めないというトレンドになっている。年度後半への回復期待が勝っているイメージだ」と指摘する。今が業績のボトムだとすれば、株価は先行きを見通すため、これ以上は売れないというロジックだ。
もっとも、下半期の業績回復期待の背景には、米中対立の緩和に対する期待感があるのは語るまでもない。みずほ証券・シニアテクニカルアナリストの三浦豊氏は「根底には、米中対立の緩和によって下期から収益環境が好転するとの読みがある」とした上で、「期待感が崩れた時は警戒する必要が出てくるだろう。報復合戦にピリオドが打たれるにしても、既存の関税が残るようならその影響に注意しなければならない」とみている。
また、当面の注目材料として米連邦公開市場委員会(FOMC)がある。市場では「悪い内容のものまで買うというのは金融相場の特色。金融相場で最大の材料は金融政策であるため、FOMCでネガティブサプライズがあった場合は、再び警戒感が高まることになりそうだ」(SBI証券・投資調査部長の鈴木英之氏)との指摘もある。
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