(ブルームバーグ): 日産自動車の株価は14日、一時前日比10%安の511円と2009年7月以来の日中安値となった。前日発表した決算で今期(20年3月期)の業績見通しを下方修正したほか、期末の配当を無配としたことが嫌気された。
日産の時価総額は午前10時半ごろまでに2兆1673億円まで減少。企業規模がはるかに小さく、前日の終値ベースでは上回っていたSUBARU(スバル、約2兆1752億円)に抜かれた。スバルの上にはトヨタ自動車、ホンダ、スズキがおり、日産は国内自動車メーカーの時価総額ランキングで5位に転落した。
SMBC日興証券の木下壽英シニアアナリストは13日付のリポートで、日産の「本格回復には時間がかかると考えるべき」とし、5月に同社の中期経営計画が発表されるまでは「悪材料出尽くしのタイミングは迎えにくい」と述べた。シティグループ証券の吉田有史アナリストは13日付のリポートで、日産の業績の弱さは少なくとも21年3月期まで持続するとの見通しを示した。
日産は13日、今期の営業利益見通しを従来の1500億円から850億円に下方修正し、売上高と純利益の見通しも引き下げた。期末の配当を無配とし年間配当は1株あたり10円と前期比47円の減配になるとの見通しも示した。米国など主要市場での販売不振がこれまで以上に深刻化したことが要因で、同社は通期の世界販売台数見通しを505万台と従来の524万台から下方修正した。
横浜市の本社で会見した内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は「足元の販売減は想定を超えている」と語った。日産は経営課題となっている米国などで販売奨励金の削減などでブランド力の回復に取り組んできた。しかし、奨励金の削減が販売台数の低迷につながるジレンマに陥っている。内田CEOは北米の収益回復について「想定以上に時間をかける必要がある」とした。
業績悪化に加えて、日産の主力市場で生産拠点もある中国では新型コロナウイルスの感染が拡大している。ジェフリーズ証券の中西孝樹アナリストは13日付のリポートで、日産に対する新型肺炎の影響は相対的に大きい可能性があると指摘。その上で、現在の環境で日産株の下落傾向に歯止めがかかるのにはまだ時期尚早との見方を示した。
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