(ブルームバーグ): ニュージーランド生まれのイアン・ジェーコブ氏は約15年間住んでいる香港を離れることを決めた。建築資材メーカーを経営する同氏と妻は昨年、政情不安を懸念していた。混乱によって学校が一時閉鎖された後は特に心配になった。「事態がどんどん悪くなるのを眺めていた」と同氏は振り返る。
今年になると今度は、新型コロナウイルス流行のため学校が再び休校となった。10歳の娘の自宅学習がさらに続くことを心配した両親は、ニュージーランドのオークランドに緊急避難。香港での学校の年度が終わったら、ニュージーランドに引っ越そうと考えている。
「子育てに適した環境ではなくなった」とジェーコブ氏は言う。
香港に住む外国人にとって、昨年から考えていた移住についての検討はコロナウイルス流行で緊急性を増した。2月17日の時点で香港の感染者数は少なくとも57人。日本やシンガポールより少ないが、市民に不安が広がるには十分だ。多くの会社員が在宅で勤務し、レストランは客足の減少に見舞われている。スーパーマーケットの棚からはトイレットペーパーと手を消毒する除菌用品が消えた。
シンガポールとの比較で香港政府の対応のまずさ指摘する向きもある。シンガポールでは学校は閉鎖されていない。香港がウイルスへの対応に追われている間に政治情勢は「日に日に、そして週ごとに悪化する可能性が十分にある」とリスクコンサルティング会社のスティーブ・ビッカース・アンド・アソシエーツが11日のリポートで指摘した。
香港を去ることを考えている人の数についての統計はないが、外国人の気持ちが脱出に傾いていることを示す兆候として、海外への引っ越しに関する問い合わせが増えている。
リンクス・インターナショナル・リロケーションの香港在勤マネジングディレクター、パトリック・オドネル氏によると、同社への問い合わせは2月第2週に前年同期比で45%増加した。
原題:Expats Flee Hong Kong After Double Whammy of Protests and Virus(抜粋)
--取材協力:Bei Hu、Manuel Baigorri、Sheridan Prasso、Vinicy Chan.
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