[ドバイ 10日 ロイター] - 複数の関係筋によると、米銀大手JPモルガン (N:JPM)は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンドに行った融資について、ディスカウント価格で貸出債権を売却することを検討している。
ペルシャ湾岸地域では原油安を背景に融資需要が膨らんでおり、一部の融資債権を売却して貸し出し余力を高める狙いがあるという。
湾岸地域では、政府向けの融資債権を売却せず、そのままま保有することが多い。売却する場合も、融資先との関係を悪化させないよう水面下で個別に売却するケースが多い。また、流通市場では貸出債権が総じて額面で取引されおり、貸出債権を購入するメリットも少ない。
ただ湾岸地域では、最近の原油急落や新型コロナウイルスの感染拡大を背景に政府の借り入れ需要が膨らんでおり、関係筋によると、複数の銀行が貸出債権の一部を売却して貸し出し余力を高めようとしている。
ロイターが入手した文書によると、JPモルガンは今週、サウジの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」やUAEのアブダビ首長国の政府系ファンド「ムバダラ」などに実行した融資の貸出債権の売却を模索した。
同行は少なくとも5000万ドルのPIF向け融資(2023年満期)の債権を1ドル当たり98.75セント、ムバダラ向けの融資少なくとも7000万ドルを1ドル当たり99セントで売却することを検討している。
JPモルガンとムバダラはコメントを控えている。PIFのコメントはとれていない。
湾岸地域のある関係筋によると、他の銀行もここ数週間、湾岸地域の政府向け融資債権の売却を模索している。
同筋は「誰もが資金を必要としているが、全員に融資することはできない」とし「現在の市場環境を別にしても、この地域は過去数年で融資の需要が増えている。このため貸し出し余力が必要だ」と述べた。
この関係筋は、貸出債権の売却について、融資先の財務状況は変わっていないと強調。予定通り返済が行われるとの見通しを示した。