[東京 19日 ロイター] - 公正取引委員会の古谷一之委員長は19日、ロイターのインタビューで、地方銀行の合併について、独占禁止法の適用除外になっても、利用者の利便性の観点から問題だと考えれば金融庁との協議の場で問題点を指摘することもあり得ると述べた。
一方、携帯電話市場について再調査を早期に始めたいとも話した。公取委は2018年に調査しているが、その後の状況の変化や菅義偉政権の携帯料金値下げ要請も踏まえ、競争環境が確保されているか、問題が生じていないか調査する方針を示した。「MNO(携帯電話事業者)が値下げに向けて動き出しているし、競争環境に問題が残っているということがあれば、われわれとしても早くコメントできるような調査はやっておきたい」と述べた。
<政権の主要テーマ、公取委も協調して検討>
人口減や低金利の継続で収益環境が悪化している地銀について、古谷委員長は「地銀自身、これからのビジネスモデルをどのように開拓していくのか、それぞれが検討していると思う」と指摘。「地方銀行同士の合併、業務提携も1つの選択肢」と述べた。
地銀合併を独禁法の適用除外とする特例法は11月に施行予定。古谷委員長は、主務官庁である金融庁が認可する際に公取委と協議する仕組みに触れ、利用者の利便性が損なわれる恐れがあれば、「協議の中で意見を言うことになると思う」と述べた。
古谷氏は1978年に東京大学法学部を卒業、旧大蔵省に入省。2012年に国税庁長官、第2次安倍政権下の13年4月に官房副長官補。今年9月、定年退官した杉本和行氏の後任として公取委の委員長に就任した。
公取委は政府から独立して職権を行使する「独立行政委員会」。古谷委員長は杉本前委員長時代に公取委が地銀合併を独禁法の適用除外とする議論に加わっていたことなどを例に、「政府の大きな政策課題ということであれば、公取委として何ができるかは当然、並行して考える」と話した。
<デジタルプラットフォーマー規制、各国と連携>
古谷氏はGAFAに代表されるデジタルプラットフォーマーについて「米国でも欧州でも日本でも、彼らがやっている業務の手法や取引慣行は同じ」と指摘。「米国や欧州の競争当局と連携しつつ、日本でも反競争的動きがあれば公取委として問題にしていかなければいけない」と述べた。
公取委は19年、デジタルプラットフォーマーの取引慣行などについて実態調査を実施。特定の事業者を指定し、契約条件や変更時の事前通知などを義務付ける新法が成立した。
古谷委員長は「消費者との間で個人情報の利用等の仕方について、デジタルプラットフォーマー側が優越的地位の濫用をするようなことがあれば独禁法上問題にするということまで、われわれは言っている」と指摘。「企業活動自体がアジャイル(機敏)なので、こちらもスピード感をもって知恵と体力を使わなければいけない」と述べた。
欧州連合(EU)の規制当局は8月、米アルファベット (O:GOOGL)傘下のグーグルによるウエアラブル端末メーカーのフィットビット (N:FIT)買収計画について調査を開始した。[nL4N2F63TQ]
古谷委員長は「企業結合審査の手続きに入るための(要件である)国内での一定の売り上げがあれば、当然審査の対象になる」と指摘。欧州の動向も含めて注視していくと話した。
(和田崇彦、木原麗花 編集:山川薫) OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20201019T065150+0000