■エレマテック (T:2715)の中長期の成長戦略1. 前中期経営計画「エレマテック・クロス」の総括前回の中期経営計画である「エレマテック・クロス」は2020年3月期で終了したが、以下はその成果と課題である。
成果については、EV・HV関連商材の販売等による自動車領域の伸長に加えて、ドライブレコーダーや医療機器関連ビジネス等のモジュール・ODMビジネスの強化が挙げられる。
また、機構、筐体設計の強度・流動解析やソフトウェア担当の人材獲得等、人員・設備の拡充に伴う技術部の機能強化についても実現した。
一方で、課題も残った。
伸長する海外顧客(米系、中国系)の開拓や、顧客のニーズに合わせた新規商材の発掘や、モジュール化などの付加価値創造、新しい技術を取り入れた商品企画・提案などである。
2. 新中期経営計画「エレマテックNEXT」の概要と重点領域前回の中期計画が2020年3月期に終了したことに続いて、2021年3月期を初年度、2023年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画「エレマテックNEXT」を発表している。
その中期戦略の柱として、「高付加価値型ビジネスの拡大」、「国内外有力顧客の開拓」、「自動車領域への注力」の3つを掲げている。
3. 高付加価値型ビジネスの強化(1) 社内連携強化による顧客への提案力の向上ビジネスの前線である営業部門と後方支援とも言える開発部、技術部、環境品質支援部との連携を強化し、顧客への提案力を一段と向上させる。
独自の企画開発や設計機能の向上を図り、モジュール品や完成品(ODM)を拡販する。
具体例として「車載ユニット完成品」の受注が挙げられる。
これは今までの部材単品の納入ではなく、金型設計サポートから加飾、組立までをトータルコーディネートし、より付加価値の高いユニットとして納入するもの。
この受注の流れを要約すると、まず営業部門が顧客からの様々な要求・ニーズを汲み取り、それを技術部、環境・品質保証部などの関連部署へフィードバックすることで、各部署が連携して最適な解や条件等を導き出し、最終的には利益率の向上と品質の安定化につなげるということになる。
(2) 商材の使い分けによる最適な解決策の提案高機能な日本製商材と価格競争力に優れた新興国製商材を使い分けることで、顧客にとって最適な解決策を提案する。
一例として、汎用品には新興国製商材、専門品には日本製商材などを充当することが挙げられる。
以下のような具体例が進捗している。
a) 商材の拡充-1コロナの世界的な拡大により衛生関連製品への需要が急増しているが、同社が持つ各種素材や生産能力を活かしてコロナ関連の商材を拡充している。
具体的には、使い捨てマスク等のPPE製品の販売、中国の自社工場のでのフェイスシールドや眼鏡シールドの生産、抗ウィルス効果のある銅配合素材製品(抗菌マスク、抗菌手すりカバー等)の販売開始。
b) 商材の拡充-2同社は海外ネットワークを活かして、競争力のある新規仕入先の開拓を行っている。
コロナの影響による巣ごもり需要によってゲーム機の売上高が急増しているが、ゲーム機用の高性能放熱部材や環境対応型梱包材の提供によって同社の売上高も今期は大幅増となる見込みだ。
4. 国内外有力顧客の開拓(1) 海外有力顧客の開拓海外顧客をターゲットとした専属チーム新設に加え、海外有力顧客の開発拠点近くへ同社自身が出店している。
その結果、同社が持つ技術力、品質管理能力等を活用し、競争力のある商材や付加価値のあるサービスを提供する計画だ。
具体的には、サンノゼにショールームを設置し、日系商材を中心にデモの実演まで行うことで米系有力顧客へPRする。
また中国においては、深セン現地法人へ開発部員を駐在させることで日系商材のタイムリーかつ適切な展開を可能にして中国系有力顧客を開拓する。
(2) 国内有力顧客の開拓国内有力顧客開拓の施策としては、第一に組織横断型の専属チームを新設し、情報・人脈の共有、意思決定のスピード向上、組織的な対応力アップなどを図る。
これにより、開発案件獲得数の増加を目指す。
さらに第二として、営業力向上のためのリソースを投入し、顧客キーパーソンへのアプローチ強化、顧客ニーズの深堀りを進める。
自社工場(メーカー機能)をアピールすることで試作案件の受注を目指す。
5. 自動車領域への注力自動車業界は100年に一度の大変革期にあると言われており、同社でも、今後ますます電装化比率が上昇すると予想される自動車領域に注力する。
この自動車領域の拡大のためにリソースを重点的に配分する計画だ。
特に以下の分野に注力する。
(1) 海外Tier-1の攻略日本のTier-1だけでなく、海外(特に欧州・中国)のTier-1メーカー等を攻略するためにリソースを投入。
国内顧客だけにとらわれないビジネスを展開する。
施策としては、国内実績の横展開(コックピットモジュール、IRセンサー等)、有力商材のPR(温調カップユニットのデモ実施等)などを進める。
(2) EV/HVの強化豊田通商グループとの連携を強化する。
具体的には、国内自動車メーカー向け電動化チームを組織し、情報の共有、新規ビジネスの取り込みを進める。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)