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アンジェス Research Memo(3):新型コロナウイルス感染症ワクチンは高用量製剤による追加試験を実施

発行済 2021-09-07 15:03
更新済 2021-09-07 15:15
© Reuters.
■新型コロナウイルス感染症ワクチン及び治療薬の開発状況

1. 新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況
新型コロナウイルス感染症ワクチンについては、2020年12月以降、欧米などで米ファイザー (NYSE:PFE)やモデルナ〈MRNA>、イギリスのアストラゼネカ (NASDAQ:AZN)など大手製薬企業の開発した製品の承認が相次ぎ、集団接種が進んでいる。
国内においても2021年2月にファイザー、5月末にはモデルナやアストラゼネカのワクチンが承認され、高齢者から接種が進んでおり、2021年8月15日時点で、全人口の約37%が2回接種を終えている(65歳以上の高齢者は約84%)。
政府では10月初旬までに約8割が2回接種を完了することを目指す考えを示している。
ただ、ここにきて感染力の強い変異株が世界的に拡大する状況となっており、3回目の接種を開始した国も出始めるなど、感染拡大の収束には程遠い状況となっている。


こうしたなか、アンジェス (T:4563)では2020年3月より大阪大学と共同で開発しているプラスミドDNA※1製法を用いたワクチンの開発を進めている。
同ワクチンは、新型コロナウイルスの遺伝子をプラスミドに挿入し、このプラスミドを大腸菌で大量培養した後にDNAを抽出して製剤化する。
無害化されたDNAワクチンを投与することで、新型コロナウイルスに対する免疫(抗体)※2を作り、感染症の発症や重症化を防ぐことが可能となる。


※1 プラスミド(plasmid)とは、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称。
一般的に環状の2本鎖構造を取り、染色体のDNAからは独立して複製を行う。
その独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして創薬などで利用されている。
このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅する。
プラスミド製法では、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」が上市済みであり、製法そのものについての安全性は確認されている。

※2 ウイルスや細菌などの抗原が体内に入り込んだとき、そのたんぱく質に反応し、体から追い出すためにできる対抗物質。



現在の開発状況については、2020年12月より開始した第2/3相臨床試験(予定症例数500例)の被験者登録が2021年3月に終了し、データ収集・解析を行っている段階にある。
当初は初夏に結果を公表する予定であったが、データ解析に時間を要しており、秋頃に発表される見通しだ。
また、同社は2021年7月に高用量製剤での第1/2相臨床試験を追加で行うことを発表した。
有効性としての免疫原性をより高めるための取り組みとなり、プラセボ(偽薬)を使わない実薬のみの非盲検試験となる。
他社ワクチンと同等程度の予防効果の高いワクチンを開発する必要があり、追加で臨床試験を行うこととなった。


接種方法としては、筋肉内接種に加えて新たに皮内接種も実施する。
皮内接種については、2020年に大阪大学医学部で実施した医師主導の臨床研究で、筋肉内接種よりも少ない投与量で同等程度の効果が得られる可能性のあることが示唆されるデータが得られたことから、今回、試験することになった。
皮内接種のデバイスはダイセル (T:4202)が開発する薬剤送達デバイス「アクトランザTMラボ」を用いる。
火薬を駆動力とするため、針を用いることなく薬剤を接種することが可能となる。
ダイセルは2020年3月に大阪大学とアンジェスのDNAワクチン共同開発に、同技術で参画していた。


1回当たり用量や接種間隔・回数を5つにグループ化し、それぞれ80例の試験を行う。
筋肉注射では従来、2回接種で合計接種量が4mgであったが、今回は筋肉内接種で6mg、8mg、16mgと増量している。
一方、皮内接種では合計投与量が2mg、3mgと前回よりも少ない接種量での試験となる。
皮内接種で良いデータが得られれば、薬剤コストも低減できることになり、その結果が注目される。


今回の臨床試験を行う施設は6ヶ所を予定しており、2021年内の終了を目指している。
ただ、既にワクチン接種が進んでいる現状において、被験者登録がどの程度のペースで進むかは見通し難く、終了時期が2022年にずれ込む可能性もある。
臨床試験の結果が良好であれば第3相臨床試験に進むことになるが、ICMRA※が公表したガイドラインに基づけば、海外も含めて3~4千人規模の臨床試験となる可能性が高い。
臨床試験費用としては多額となるため、大規模治験に進むためには日本政府からの補助金の継続、または資金力のある大手企業との共同開発ができるかどうかが条件となってくる。
なお、現在開発を進めているワクチンは、当初中国で感染拡大した武漢型と呼ばれるものに対応したものとなり、デルタ株等の変異株への対応については、プラスミドに導入する遺伝子を変えるだけで済むため、比較的迅速に開発することは可能となっている。


※ICMRA (International Coalition of Medicines Regulatory Authorities)とは、各国の医薬品規制当局のリーダーの自発的な連合であり、協力の強化、コミュニケーションの改善、及び効果的な世界的な危機対応メカニズムのための戦略的方向性を提供する。



現在のワクチンの開発や量産体制構築に向けた費用については、国の補助金等で賄われている。
具体的には、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に2020年5月に採択され、研究開発費20億円(直接経費、研究開発期間:2020年6月−2021年3月)の支援を受けているほか、厚生労働省が公募した「令和2年度ワクチン生産体制等緊急整備事業」にも同年8月に採択され、約93億円の交付金(事業期間:2020年8月−2022年3月)を受けて、タカラバイオ (T:4974)が中心となって大規模生産体制の構築を進めている。
さらに、AMEDが公募した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」(2次公募、研究開発予定期間:2020~2021年度目途)にも同年8月に採択されている(金額は非開示)。
これら補助金については、AMED及び厚生労働省から一部が入金されており、2021年6月末時点では前受金として5,760百万円を貸借対照表上に計上している。
期間損益上では、研究開発費に計上されているが、今後、同社が提出したプロジェクトの報告書の審査をAMEDや厚生労働省等が行い、適切と認証された時点で補助金収入として営業外収益に計上されることになっている。
現在は、2020年度分のプロジェクト報告書を提出し、審査中の状態となっている。


なお、同社のワクチン共同開発プロジェクトについては、多くの企業が参画している。
ワクチンの製造に関してはタカラバイオをはじめ、Kaneka Eurogentec S.A.、AGC Biologics S.p.A.、シオノギファーマ(株)、Cytivaなどが大規模治験に向けた体制整備に取り組んでいる。
また、次世代ワクチンの開発についても前述したダイセルの薬剤送達デバイスのほか、様々な研究開発が行われている。
最近国内でも猛威を振るっている変異株に対する効果の高いDNAワクチンの開発についても、共同開発先の大阪大学で進めている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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