執筆:Yasin Ebrahim
Investing.com -- ロシアのウクライナ侵攻により、インフレがさらに加速し、経済成長が頓挫する恐れがあるとの懸念が続く中、投資家資金はディフェンシブ株へと流れ、木曜日のS&P 500種指数は下落した。
S&P500は0.5%、ダウ平均は0.3%、96ポイント、ナスダック総合は1.6%、それぞれ下落した。
原油、小麦、貴金属の価格が上昇傾向にある中、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、さらなるインフレ圧力がかかるとの見方が広がる中、市場が堅実的な投資対象とみている公益事業株が最大の上昇セクターとなった。
インフレ期待の指標である米国物価連動債による5年ブレーク・イーブン・レート(BEI率:物価連動国債と普通国債との金利差)は3.23%に跳ね上がり、過去最高を記録した。
米国の原油価格は一時1バレル116ドルまで上昇し、米国の一部地域ではガソリン価格が1ガロン5ドルを超えた。ドイツのRobert Habeck経済相がロシアの石油、ガス、石炭の輸入禁止を支持しないと述べた後、原油価格は劇的な反転となり前日より値下がりして取引を終えた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は木曜日の議会証言で、インフレ上昇圧力は「少なくともしばらく」続く見通しだと述べ、ウクライナ危機がインフレの主要因となっているサプライ・チェーンの問題を長引かせるリスクを指摘した。
同氏は上院議員に対し、「船の荷揚げができないので、サプライ・チェーンの改善には全く役立たない」と述べた。
一方、ウクライナとロシアの協議では、民間人を避難させ、人道的物資を届けるための安全なルートを確保することで双方が合意したと報じられ、一定の進展がみられた。
しかし、フランスのマクロン大統領は、プーチン大統領が外交的または軍事的手段によって「完全な支配」を得ようと躍起になっているため、ウクライナは「最悪の事態がまだ続く」と警告したと伝えられている。
ハイテク株は前日の上昇に続いて上乗せすることができず、大型ハイテクがほとんど下落したほか、Nvidia (NASDAQ:NVDA)、Advanced Micro Devices Inc (NASDAQ:AMD)、Intelといった半導体大手の値動きも重しとなった。
Intel (NASDAQ:INTC)は、Morgan Stanleyが 「より実用的な投資機会は他にもある」として、同社株の評価をイコール・ウェイト(中立)からアンダーウェイト(弱気)に引き下げ、目標株価を55ドルから47ドルに下方修正したことなどを背景に1%以上下落した。
Intelの中核事業における長期的な方向転換能力はポジティブだが、「今後数年間は株価が横ばいで推移する可能性が高く、当社がカバーしている他の分野ではより投資行動が取り易い機会があると考えている」と {{0|Morgan Stanley} は述べている。
Snowflake (NYSE:SNOW)は、第4四半期決算が市場の予想を上回ったものの、見通しが下回り、今後の成長鈍化の懸念が高まり15%下落した。
Best Buy (NYSE:BBY)は、四半期収益と通期見通しがアナリスト予想を下回ったものの、約9%上昇した。
Kroger (NYSE:KR)は、1株当たり利益0.91ドル、売上331億ドルと、アナリスト予想の0.74ドルと329億ドルをそれぞれ上回り、見通しもコンセンサスよりも良かったことなどから11%急騰した。
市場が弱気であるのは、約60万人の雇用創出が見込まれるという予想がある2月の雇用統計の発表が金曜日に控えているためであろう。
「Aptus Capital Advisorsのポートフォリオ・マネジャーであるJohn Luke Tyner氏は、木曜日にInvesting.comとのインタビューで、「2月の雇用統計の発表は、来週発表を控えるインフレ関連データを前に、市場にとって大きな意味を持つことになる」とし、また「我々の予想では、雇用者数は50万人程度だが、もっと多い数字でも驚かない。」とみている。
「副業をしている人はまだたくさんいる。しかし景気刺激策や政府補助金の削減、賃金の上昇によって、働く気にさせることができるだろう」と同氏は付け加えた。