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かっこ Research Memo(3):データサイエンスを軸に不正検知サービスを提供(2)

発行済 2022-05-25 15:23
更新済 2022-05-25 15:30
© Reuters.
■会社概要

3. 事業内容
同社は創業以来培ってきたデータサイエンスに関する知見を武器に不正検知サービス、決済コンサルティングサービス、データサイエンスサービスといったサービスをEC事業者、金融機関、BNPL事業者、製造業、小売業など、幅広い顧客に提供している。


(1) 不正検知サービス
同社の不正検知サービスは、EC事業者、BNPL事業者向けに不正注文検知サービスを提供する「O-PLUX」と金融機関、チケット販売会社などに不正アクセス検知サービスを提供する「O-MOTION」に分かれている。


名寄せ処理(表記の異なる同一住所や姓名を正規化処理して活用する技術)、デバイス情報、外部DB(データベース:空室情報など第三者が保有している情報)、行動分析(不正者に顕著な情報や行動パターンを分析)、共有ネガティブ(企業間で共有されているネガティブ情報)などを活用することにより、「O-PLUX」は独自の審査モデルでECにおける不正注文をリアルタイムに検知。
顧客が抱えるカード会社からのチャージバック※による売り上げ機会の損失や不正注文監視に割く工数増大、製品の転売、なりすましなど同一人物による複数アカウントの使用などの問題を解決している。


※ クレジットカードが不正利用されたなどの理由でカード所有者が支払いに同意しない場合、販売元がカード会社に売上代金を返金しなければならないことを指す。
商材は戻らないので、販売元に損失が発生する。



データサイエンスによる不正検知は、多くのデータを分析すればするほどその精度が上がっていくことが特徴だ。
「O-PLUX」においては、大量のデータを蓄積・検証→検知精度向上→導入顧客数の拡大→蓄積・検証データの増大→検知精度の向上という好循環が生まれている。
顧客の増大が精度の向上を実現し、さらなる顧客を引き込む。
この好循環を同社は市場黎明期からファーストムーバーとして構築しており、今後市場が成長期に移行するなかで、他社に対する強力な競争優位になっていくと弊社は見ている。


また、海外サービスの販売代理店のような形式をとるのでなく、サービスをゼロから自社で開発している点も特徴だ。
これにより、不正検知ロジックの変更、外部DBの導入などに関する意思決定を迅速に行い、不正手段の進化に合わせて速やかにサービスの質を向上させることが可能になっている。
不正手段が日々進化していくことを考えると、自社開発によるスピーディーな対応は顧客にとっても魅力的であり、同社にとっても強みの1つになっていると言えるだろう。


さらに、顧客からの料金徴収方法も特徴の1つだ。
「O-PLUX」は月額料金と審査件数毎に料金を徴収する従量課金制度の2段構成で収益を上げている。
月額料金で安定した収益を確保しながら、EC取引が活発になればなるほど従量課金による収益が拡大する仕組みだ。
今後は、顧客の拡大に伴う月額料金の増加に加え、EC取引拡大による審査料金の急伸も期待できると弊社は見ている。
加えて同社は、パートナー・アライアンス企業の拡大にも積極的で、顧客のサービス導入障壁の解消に努めている。
GMOメイクショップ(株)のGMOクラウドEC、(株)イーシーキューブのEC-CUBEをはじめとするECパッケージ・ショッピングカート事業者と連携することにより、これらのサービスを利用してECサイトを構築する事業者が簡単に同社のEC不正検知サービスを利用できる体制を整えている。
こうした特徴と企業努力により、(株)アニメイト、NECパーソナルコンピュータ(株)、(株)ラコステジャパン、(同)DMM.comなど数多くの企業への導入実績を誇っている状況だ。
最近では、業界特化型の「O-PLUX forトラベル」「O-PLUX forチケット」「O-PLUX for Webサービス」なども市場に投入し、さらなる顧客層の拡大に努めている。


不正アクセス検知サービスである「O-MOTION」は、端末特定技術、操作情報(ユーザー操作から不正傾向を判定)、ホワイト・ブラックリスト管理などの機能を活用し、独自の審査モデルによってなりすましによる不正アクセスを検知する。
顧客の抱える情報漏えいリスク、アフィリエイト収入の獲得など不正を目的とした会員登録などの問題解決に貢献しており、ぴあ (TYO:4337)、オルビス(株)、その他大手金融機関などへの導入実績もある。


(2) 決済コンサルティングサービス
BNPLサービスの提供を検討しているEC事業者・決済事業者向けにBNPL事業の検討・立ち上げから決済システムの開発・運用サポートまで一貫して支援しており、2022年12月期下期には、それらをSaaS型で提供する「後払いパッケージ」のリリースを予定している。
同サービスの特徴は、多くのBNPL事業の立ち上げ・システム開発実績がある同社が、事業検討から運用サポートまで一貫して支援すること、不正注文検知で実績を誇る「O-PLUX」を組み入れることによりセキュアな決済システムを提供していることであり、さらに「後払いパッケージ」においては、SaaS型で提供することにより初期導入費用を抑えることができることが挙げられる。
前述のように、今後はBNPL市場の急拡大が予想されることから、同サービスの業績も好調に推移していくものと弊社は見ている。


(3) データサイエンスサービス
小売業、流通業、製造業、サービス業などをはじめとする幅広い顧客に対して、AI・統計学などを駆使したデータサイエンスサービスを展開している。
「あらゆる人がデータサイエンスの知見を享受することができる社会を目指す」を合言葉に、データサイエンスのノウハウを持たない企業に代わって、顧客が持つデータを分析する。
統計解析に基づく意思決定、データに基づく作業の効率化、本当に重要なKPIの探索と設定などの価値を提供している。


このサービスの特徴は、他の「O-PLUX」「O-MOTION」と相互に補完し合っている点だ。
多様な業種のデータを分析するなかで不正検知サービスの精度向上に役立つデータを発見し、DB連携を行うことにより「O-PLUX」「O-MOTION」の検知精度の向上を実現するという好循環を生んでいる。


データに基づく意思決定の重要性が企業に認識されはじめているなか、この分野に対する顧客のニーズは今後も増大していくと弊社は考えている。
経済産業省が行った令和3年版「我が国におけるIT人材の動向」によると、ユーザー企業にIT人材が相対的に少ない点が指摘されている。
これらの事実を踏まえれば、データサイエンスサービスに対する引き合いは好調に推移するだろう。


4. 同社の強み
データサイエンスを軸に不正検知サービスを提供している同社の強みに関して、同社が自身の強みとして認識している 「蓄積され続けるデータサイエンスに関する知見」「不正検知サービス導入実績が国内第1位」「低い解約率と安定した収益構造」の3つのポイントに加えて、さらに「サービス間の相乗効果」「システム、アルゴリズムをゼロから自社開発が可能」の2つの強みがあると弊社では見ている。


(1) 蓄積され続けるデータサイエンスに関する知見
まず同社の強みとして挙げることができるのが、データサイエンスの知見が社内に蓄積されていることだ。
代表取締役社長の岩井裕之(いわいひろゆき)氏の前職であるデータサイエンスプロジェクト責任者としての経験や、設立当初からデータサイエンス関連コンサル企業とプロジェクトマネジメントの立場で一緒に事業を行ってきたことなどによりデータサイエンスに関する知見やノウハウがあったことに加え、同社で活躍しているデータサイエンティストが業務を通じて新たな知見を日々発見している。


(2) 不正検知サービス導入実績が国内第1位
データサイエンスに関する知見があるだけでなく、多くのデータが同社に集まってくる点も強みとして挙げることができる。
より多くのデータを蓄積し分析することによって、他社が見つけることのできない有意義な傾向や洞察を発見することができるようになるためだ。
これにより、同社の「O-PLUX」「O-MOTION」の検知精度が向上し、さらなる顧客の獲得につながっていると言えるだろう。


(3) 低い解約率と安定した収益構造
2021年12月期時点で「O-PLUX」の月次解約率は年間平均0.24%、売上に占めるストック収益の割合は72.5%となっている。
SaaS型ビジネスにおいて、一般的には解約率が1%程度でも低いと言われるため、0.24%は非常に優秀な数値であることが分かる。
解約率が低い要因は、不正対策は一旦行えば終了というものではなく、継続的に企業側も対策する必要があること(顧客のなかには7年弱契約している企業もある)、不正検知サービス導入による効果とそれでも不正件数がゼロにはならない現実について、定期的なレポート発行により顧客の理解を得ていることなどがある。


さらにSaaS型ビジネスの特徴の1つとして、安定して収益の発生が見込めるストック型収益の比率が高い点も魅力的だ。
将来の安定したキャッシュ・フローを見込むことができれば、それだけ事業拡大に向けた投資を積極的に行い、成長スピードを伸ばしていくことができると弊社は見ている。


これらの強みが互いに関連し合うことにより、6期連続での増収増益、2021年12月期の営業利益率が18.8%と高利益率体質を実現していると弊社は考えている。


(4) サービス間の相乗効果
この強みは主にデータサイエンスサービスと不正検知サービスの相乗効果のことである。
データサイエンスサービスにおいて多様な業種に対してコンサルテーションを提供するなかで得た知見やデータを不正検知サービスにフィードバックし、同サービスの精度を向上させるというプラスの循環を生むことを可能にしている。
また、データサイエンスサービスは将来事業を拡大するにあたって、魅力的な市場を探し出し、新サービスを考える際の出発点になるといった役割も担っている。
この意味でも重要なサービスセグメントであると弊社は考えている。


(5) システム、アルゴリズムをゼロから自社開発
同社は、システム、アルゴリズムをゼロから自社開発していることより、海外のシステムを販売するだけの場合に比べて、外部DBとの連携、アルゴリズムの変更などに関して迅速な意思決定を行うことを可能にしている。
また、日本の顧客ニーズに沿ったシステム開発が可能になるなどの利点もあるだろう。
不正の手口が変化していくなかで、それらに対して迅速に対応できる体制が整っているということは、顧客に対する訴求力になると言える。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)


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