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生化学工業は売られ過ぎ感、23年3月期予想は未定

発行済 2022-05-26 08:43
更新済 2022-05-26 09:05
© Reuters.  生化学工業は売られ過ぎ感、23年3月期予想は未定

 生化学工業<4548>(東証プライム)は、関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野を主力とする医薬品メーカーである。22年3月期はコロナ禍影響からの需要回復、海外医薬品の前倒し出荷、医薬品受託製造の増加、受取ロイヤリティーの増加で大幅増収増益だった。23年3月期連結業績予想は、関節機能改善剤ジョイクルのショック、アナフィラキーの発現に関する原因究明の進捗を見極める必要があるため未定としている。なお自己株式取得を発表している。株価は23年3月期業績予想未定を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。自己株式取得も評価して反発を期待したい。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。

 22年3月期セグメント別構成比(22年3月期から受取ロイヤリティーを営業外収益から売上高に表示区分変更、販売手数料等を販管費計上から売上高控除に変更)は、売上高が医薬品事業74%(国内医薬品33%、海外医薬品22%、医薬品原体・医薬品受託製造7%、ロイヤリティー11%)でLAL事業26%、営業利益が医薬品事業49%、LAL事業51%だった。

 20年3月には海外製造拠点としてカナダのダルトン社を子会社化した。なおダルトン社を買収する際に中間持株会社として設立したSEC社、および買収目的会社として設立したSAC社が特定子会社に該当することになったため、ダルトン社とSAC社が現地法に基づく新設合併を行い、新設された新ダルトン社が旧ダルトン社から商号および事業を引き継いだ。

 20年8月には、ダルトン社がサスカチュワン大学の研究機関であるVIDO-InterVacと、VIDO-InterVacがカナダ政府およびサスカチュワン州から支援を受けて開発を進めているCOVID-19ワクチンの製造に関して、業務提携に合意した。ダルトン社は本提携により、COVID-19ワクチンの初期段階の臨床試験で投与される治験薬の調合、充填、製剤化を担う。

 21年4月にはLAL事業の海外子会社である米ACC社が、遺伝子組み換えエンドトキシン測定用試薬「パイロスマート ネクストジェン」の販売を開始した。21年8月には単回投与の関節機能改善剤ハイリンクについて、台湾のTCM社を通じて台湾における販売を開始した。

 21年11月には海外子会社のACC社が、遺伝子組み換えエンドトキシン測定用試薬「パイロスマート ネクストジェン」について、Pharma Manufacturing 2021 Innovation Awardを受賞した。

 21年1月にはダルトン社の100%出資子会社として、カナダに現地法人SEIKAGAKU NORTH AMERICA CORPORATIONを設立した。北米に開発拠点を有することで、現地の医療環境に即したプランの立案、FDA(米国食品医薬品局)や治験施設との円滑なコミュニケーション実現など、医薬品・医療機器開発および承認取得の加速を目指す。

 21年10月には海外子会社のACC社がカブトガニ保全活動において、この種の取り組みでは初めてとなるアメリカ産カブトガニ累計100万匹放流を達成した。また21年12月には会社HPにサステナビリティページを開設し、各種取組を紹介している。

■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞っている。開発パイプラインには、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603、変形性膝関節症改善剤SI-613、腱・靱帯付着部症を適応症とするSI-613-ETP、ドライアイ治療剤SI-614、間質性膀胱炎を適応症とするSI-722、癒着防止材SI-449がある。

 SI-6603は日本では18年3月製造販売承認を取得し、科研製薬<4521>が18年8月販売開始(腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア)した。またスイスのフェリング社と日本を除く全世界におけるライセンス契約を締結している。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大95百万米ドル(うち契約一時金5百万米ドル)である。米国では第3相臨床の追加試験において、22年3月に被験者組み入れが完了した。1年間の経過観察を実施する。

 SI-613は小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する契約を締結し、21年3月に変形性関節症治療剤ONO-5704/SI-613(ジョイクル関節注30mg)が変形性関節症(膝関節、股関節)の効能または効果で国内製造販売承認を取得し、21年5月に小野薬品工業が販売開始した。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大120億円(うち契約一時金20億円)である。また20年9月にエーザイ<4523>と韓国における販売提携に関する契約を締結した。エーザイの韓国子会社が韓国におけるSI-613独占的販売権を取得して製造販売申請を行う。承認取得後は製品をエーザイに供給する。契約一時金と販売マイルストーンを受け取る。エーザイとは20年4月に中国における共同開発および販売提携に関する契約を締結しており、2ヶ国目の提携となる。

 その後、ジョイクル投与後にショック、アナフィラキーの発現が複数報告されたため、21年6月1日付で安全性速報(ブルーレター)を発出し、小野薬品工業と連携して副作用報告等の情報収集や安全性に関する情報提供に努めている。また原因究明に向けて医師主導の臨床研究を開始した。

 今後の方針としては、米国・中国・韓国におけるSI-613(変形性膝関節症)の開発方針を検討中で、日本におけるSI-613-ETP(腱・靭帯付着部症、小野薬品工業とのSI-613の契約に含む)の開発を22年2月に中断している。ジョイクルのショック、アナフィラキー発現に関する原因究明を優先する。

 SI-614は22年5月に米国で第3相臨床試験を開始した。有効性、安全性の評価を行う。SI-722は19年11月米国における第1・2相臨床試験を開始、20年3月被験者投与を開始、21年1月被験者組み入れが完了した。主目的である忍容性を確認し、次相試験を検討中である。SI-449は、20年5月に国内ピボタル試験(消化器外科領域)を開始し、さらに21年11月には国内パイロット試験(婦人科領域)を開始した。適用範囲の拡大を目指す。

■次期・中期経営計画は22年秋頃公表予定

 前・中期経営計画の目標は、22年3月期(想定為替レート1米ドル=105円)の売上高283億円、経常利益45億円、SKK EBITDA(営業利益に減価償却費、受取ロイヤリティーを加えた利益指標)50億円、海外売上高比率50.0%を掲げていた。そして22年3月期実績は、全ての指標で目標を達成した。

 次期・中期経営計画については、ジョイクルのショック、アナフィラキー発現に関する原因究明の進捗や、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の動向により、経営計画や将来的な業績予想が大きく変動するため22年5月時点での公表を見送り、22年秋頃の公表を予定している。

■22年3月期大幅営業・経常増益、23年3月期予想は未定

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用で前年も遡及適用、利益への影響なし、受取ロイヤリティーの表示区分を従来の営業外収益から売上高に変更)は、売上高が21年3月期比25.7%増の348億51百万円、営業利益が99.9%増の44億95百万円、経常利益が78.4%増の53億95百万円、親会社株主帰属当期純利益が前期の繰延税金資産計上の反動で12.4%減の37億33百万円だった。配当は21年3月期比6円増配の30円(第2四半期末15円、期末15円、いずれも普通配当15円+特別配当5円)とした。

 コロナ禍影響からの需要回復、海外医薬品の販売好調と前倒し出荷、医薬品受託製造の増加、受取ロイヤリティーの増加などで大幅営業・経常増益だった。米国で実施中の腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI―6603追加臨床試験の進捗などで研究開発費が増加(24.9%増の90億05百万円)したが、増収効果などで吸収した。営業外収益では為替差益が増加した。

 医薬品事業は売上高が23.6%増の256億96百万円、営業利益が2.0倍の22億13百万円だった。売上高の内訳は国内医薬品が0.0%減の114億47百万円、海外医薬品が12.9%増の76億52百万円、医薬品原体・医薬品受託製造が41.2%増の26億07百万円、受取ロイヤリティーが5.6倍の39億89百万円だった。

 国内は主力の関節機能改善剤アルツの薬価引き下げなどで微減収だった。なお関節機能改善剤ジョイクル(21年5月発売)は、本剤投与後にショック、アナフィラキーの発現が複数報告されたため安全性速報(ブルーレター)を発出した。海外は米国においてコロナ禍影響から市場がほぼ回復し、流通リスク回避に向けた前倒し出荷も寄与して好調だった。中国向けも現地販売本数が増加し、包装資材変更に伴う前倒し出荷も寄与した。医薬品原体・医薬品受託製造は医薬品原体が減少したが、ダルトン社の医薬品受託製造が増加した。

 LAL事業は売上高が31.9%増の91億55百万円で、営業利益が95.6%増の22億81百万円だった。ACC社におけるエンドトキシン測定用試薬、グルカン測定体外診断用医薬品、受託試験サービスが伸長した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高117億84百万円で営業利益44億46百万円、第2四半期は売上高87億46百万円で営業利益15億92百万円、第3四半期は売上高76億15百万円で営業利益1億96百万円、第4四半期は売上高67億06百万円で営業利益17億39百万円の赤字だった。第1四半期に受取ロイヤリティー35億50百万円を計上し、第3四半期以降は研究開発費が増加した。

 23年3月期連結業績予想については、関節機能改善剤ジョイクルのショック、アナフィラキーの発現に関する原因究明の進捗を見極める必要があるため未定としている。配当予想は8円減配の22円(第2四半期末11円、期末11円)としている。

 現時点での想定は、22年4月以降の薬価引き下げ(国内医薬品全体の加重平均)が約▲11%(アルツは▲12.6%、オペガンは▲7%)で、ロイヤリティーが前期の一過性増加の反動で減少、研究開発費が米国で実施中の腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI―6603追加臨床試験の被験者組み入れ完了で減少、コロナ禍の影響は22年3月期水準としている。

■株価は売られ過ぎ感

 5月13日に自己株式取得を発表した。上限200万株・15億円で、取得期間は22年5月16日~22年12月30日としている。

 株価は23年3月期業績予想未定を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。自己株式取得も評価して反発を期待したい。5月25日の終値は764円、今期予想配当利回り(会社予想の22円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1179円46銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約434億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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