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いちご Research Memo(1):2022年2月期は親会社株主に帰属する当期純利益が前期比2ケタ増

発行済 2022-06-16 16:01
更新済 2022-06-16 16:15
© Reuters.

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■要約

いちご (TYO:2337)は、オフィス、商業施設、ホテル、レジデンスなど幅広いタイプの不動産を対象とし、不動産価値向上ノウハウを駆使し、投資・運用を行う心築(しんちく)を強みとする。
不動産ファンド運営会社及び資産流動化などを行う会社を前身とし、2000年に事業をスタート。
2002年には大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場へ上場、後に東京証券取引所(以下、東証)JASDAQ市場へ市場替えし、私募不動産ファンドなどを通じて事業拡大を加速させた。
リーマンショックを契機に、いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッドが大株主となり、資産運用ビジネスをコアとした事業の選択と集中を行った。
その後、2008年に持株会社制に移行し、2011年にJ-REITの運用会社2社を子会社化して、J-REITへ参入。
また、2012年にはクリーンエネルギー事業に参入した。
2015年11月にはホテルリート、2016年12月にはインフラ投資法人を上場させ、現存不動産に新しい価値を創造する心築事業とともに、アセットマネジメント事業、クリーンエネルギー事業においても発展を遂げている。
2015年11月に東証1部に昇格、2016年8月にはJPX日経インデックス400の構成銘柄に選定され、その地位を現在も維持している。
また同社は、不動産価値向上技術・ノウハウを軸にオフィス、ホテル、再生可能エネルギー発電施設の3つの投資法人と連携するユニークな企業グループである。
同社はすべての事業において社会貢献を目指しており、心築事業における環境負荷低減やクリーンエネルギーの創出など本業を通じた貢献に加え、Jリーグのトップパートナーとして地域活性に参画し、「RE100」や「国連グローバル・コンパクト」に加盟するなど多面的な活動を通じて、サステナブルな社会の実現に力を注いでいる。
2022年4月の東証市場再編においてはプライム市場へ移行した。


1. 事業概要
事業セグメントはアセットマネジメント事業、心築事業、クリーンエネルギー事業の3つである。


アセットマネジメント事業は、3つの上場投資法人(いちごオフィスリート投資法人 (TYO:8975)(2005年10月上場。
以下、いちごオフィス)、いちごホテルリート投資法人 (TYO:3463)(2015年11月上場。
以下、いちごホテル)、いちごグリーンインフラ投資法人 (TYO:9282)(2016年12月上場。
以下、いちごグリーン))に対して、投資対象資産の発掘及び供給、運用・管理などを行う。
資産の入替などを含めた資産規模の拡大や賃料収入の増加、適正なコストコントロールなどにより、同社の運用フィーは安定的に成長している。
また、いちごオフィス、いちごホテルの運用報酬については、同社によるとJ-REITで唯一となる完全成果報酬制度を採用している。


心築事業は同社事業の柱であり、不動産価値向上ノウハウは同社のコアコンピタンスである。
保有不動産の賃貸収益等(ストック収益)と譲渡収益(フロー収益)がバランス良く成長しているのが同社の特徴となっている。
同社が重要視している「ストック収益固定費カバー率」は、より安定的な収益であるストック収益が事業継続に必要な固定費をどれほど上回っているかを示すもので、200%弱となっており、堅固な事業基盤を構築している。
賃貸収益は自己保有資産(2,475億円)から生み出され、2022年2月期の粗利ベース収益で4,842百万円(前期比1,377百万円減)と、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響によるホテルの宿泊ニーズの低下及び大規模オフィスの空室により一時的な影響を受けた。
譲渡収益は不動産売却における譲渡益であり、オフィス、ホテル等のマルチアセット及びいちごオーナーズ(株)によるレジデンス物件売却による収益で、2022年2月期のALL-IN※ベースの粗利益は9,515百万円(前期比65.5%増)となった。
順調なレジデンスに加えオフィスは売買環境が正常化し、ホテルや商業施設もプレーヤーやエリアは限定されるものの、コロナ前の水準での売却を実現した。
クリーンエネルギー事業は2012年に開始され、全国65ヶ所、195MWの太陽光及び風力発電所プロジェクトをグループで開発・運営するまでに成長した。
2022年4月19日時点では、売電開始済が62ヶ所、172.9MW(うち、いちごグリーンは15発電所、29.4MW)、開発中の発電所が3ヶ所、22.0MWであり、今後は、さらなる太陽光発電所の開発に加え、同社が開発を進めている国内の間伐材を活用した木質バイオマスによる発電が加算されていく。


※ALL-IN:同社はキャッシュ・フロー経営を徹底しており、心築資産の80%強を固定資産として保有し、税効果によるキャッシュ創出を実現している。
同社の心築事業はコア事業の1つであり、販売用不動産、固定資産の会計上の科目を問わず心築資産として心築を施すが、固定資産の売却利益は特別利益に計上されることからこれを営業利益に戻し入れ、「ALL-IN」指標とすることで心築事業で創出している利益を可視化している。



2. 業績動向
2022年2月期通期は、売上高が前期比7.2%減の56,934百万円、営業利益が同3.6%増の10,018百万円、経常利益が同4.1%増の7,471百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同28.8%増の6,473百万円と、順調に各利益を伸ばした。
心築事業、アセットマネジメント事業、クリーンエネルギー事業ともに順調であった。
主力の心築事業は、ALL-INベースの売上総利益で前期比20.0%増の14,358百万円となった。
不動産譲渡収益であるフロー収益は、引き続き堅調なレジデンス市場を背景としたいちごオーナーズによる売却に加え、オフィスやホテル等のマルチアセットでも一部の物件でコロナ前の水準での売却が実現し始めた。
不動産賃貸損益であるストック収益は、コロナの影響によりホテルの賃貸収益が低調に推移したのに加え、大規模オフィスでの空室が影響し、一時的な減収となった。
アセットマネジメント事業は、ベース運用フィーが堅調に推移したことに加え、いちごオフィスにおいて物件売却に伴う増益に連動した報酬が増加したこと等により増収増益となった。
クリーンエネルギー事業は、2021年2月期に竣工した発電所の売電収入が通期で寄与したことや新たに9ヶ所の発電所が売電を開始したことなどにより、堅調に利益を積み増した。
同社グループの売上総利益率が上昇した要因は、フロー収益(不動産譲渡損益)におけるマルチアセット物件の売却益の構成比が上昇したためであり、オフィス・ホテル物件の売却において、一部でコロナ前の水準での売却が可能となった。
以前より同社は、循環的な景気後退に対応できる盤石な財務体質の整備を進め、また高いストック収益固定費カバー率による堅固な事業基盤を構築してきた。
同社にとっては、市場が低迷している時期に安値での売却(フロー収益確保)を行う必要はなく、今回のように事業環境が回復するまでじっくりと待つ戦略をとれるのも、同社の強みと言えるだろう。


2023年2月期通期の業績予想は、ホテル等の一部不動産の売買市況の本格的な回復時期が引き続き不透明であることから、前期同様にレンジの予想となった。
営業利益で前期比5.8%増~3.2%減の10,600百万円~9,700百万円、経常利益で同1.7%増~10.3%減の7,600百万円~6,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同31.3%~0.4%増の8,500百万円~6,500百万円としている。
アセットマネジメント事業では、セグメント利益で1,100百万円(前期比40.2%減)とした。
前期に発生したオフィス売却による売却益に連動した一時的なフィー収益の剥落、2023年2月期中のホテル売上の回復を見込まず、運用資産残高も変わらない前提条件であり、保守的になっている。
クリーンエネルギー事業はコロナによる影響を受けず、セグメント利益で2,200百万円(前期比3.1%増)と従来どおりの安定成長を予想する。
心築事業のストック収益は、ホテルへのコロナの影響の継続及び大規模オフィス(お台場)の空室による一時的な減収を想定し、前期比で減益予想としている。
心築事業のフロー収益に関しては、ホテルと商業施設の売買市況が期中に一定程度回復する前提がレンジの上限となり、前期と同様の状況が継続する場合はレンジの下限となる。
セグメント利益(ALL-INベース)は、レンジの下限が9,400百万円(前期比0.9%増)、レンジの上限が12,300百万円(前期比32.0%増)である。
ちなみにこの上限の水準は、コロナ前となる2020年2月期実績(23,971百万円)のほぼ2分の1であり、回復傾向ではあるが活況とは言えない市況環境を想定した保守的な予想値と考えられる。
売買市況に関しては、レジデンスが盛況を維持し、オフィスが2022年2月期に正常化したため、ホテル及び商業施設の回復動向がカギとなる。
ホテルと商業施設に関しては回復の兆しがあり、2023年2月期中に回復基調が鮮明になると弊社では予想する。
ホテルについては、国内需要が先行して回復してきており、インバウンドが戻る目途が立てば売買環境は正常化に向かうと考えられる。
投資家の意欲は積極的な状況が続くだろう。
特に海外の投資家にとっては、円安傾向もあり、日本の不動産の魅力は相対的に上がるだろう。
金融機関の支援姿勢も変わっていない。
これらの要因を勘案し、弊社では上限に近い利益水準の可能性が高いと考えている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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