[ワシントン/リヤド 11日 ロイター] - バイデン米政権は、サウジアラビアに対する攻撃用の兵器売却禁止措置を解除する可能性について議論している。ただ最終的な決定はサウジがイエメン内戦の停戦に向け、軍事介入を打ち切る姿勢を明確にするかどうかに左右されるとみられている。事情に詳しい4人の消息筋が明らかにした。
バイデン大統領は今週、サウジを訪問する予定。これに先立ち消息筋の3人は、サウジ側がここ数か月の米国との数回にわたる政府高官レベルの協議で、サウジに防衛用と見なされる兵器のみ米国が売却するという方針の撤回を迫っていたと語った。例えば消息筋の1人によると、サウジの防衛副大臣が5月にワシントンを訪れた際、サウジ側が売却制限をなくしてほしいとの要望を出していた。
ただ、2人の消息筋によると、米政権内の議論は非公式で初期的な段階にあり、すぐに決定が出ることはない。サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は11日の記者会見でサウジへの武器売却制限解除の検討について問われ、「現状では具体的なものはない」と発言している。
それでもバイデン氏は今回のサウジ訪問を前に、同国との緊張関係の「リセット」を探っているとのシグナルを送っている。背景には世界的なエネルギー需給ひっ迫の折、米国としてペルシャ湾岸諸国に原油の供給拡大を望んでいることや、イランに対抗する上でイスラエルとアラブ諸国が安全保障上の連携を強めてほしいと考えているという事情がある。
一方、米議会スタッフらによると、サウジへの攻撃兵器売却を認めれば議会の反対を招くのは間違いない。与党・民主党だけでなく野党・共和党の議員もずっとサウジを声高に批判している。消息筋らは、今週のバイデン氏のサウジ訪問中に関連の発表がある見込みはないと強調した。
バイデン氏も昨年の初めの就任早々、サウジに厳しく接する外交姿勢を選択。サウジが主導する有志連合軍によるイエメンの親イラン武装組織フーシ派への軍事攻撃で多数の民間人犠牲者が発生していることや、サウジの反体制派記者殺害などの国内人権侵害問題を受け、バイデン氏は歴代米政権が承認してきた攻撃兵器売却の停止を昨年2月に宣言した。
ところがロシアのウクライナ侵攻以降、バイデン氏のサウジに対する強硬姿勢は和らぎ、米国をはじめとする西側諸国も世界最大の石油輸出国であるサウジにロシアの穴を埋める形で供給を増やしてほしいと働きかけるようになった。
サウジが6月上旬、国連が仲介したイエメンでの休戦協定を2カ月延長することに同意すると、米政府はこれを称賛。米国はこれが恒久的な停戦につながる展開を期待している。