[チューリヒ 22日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行)は22日、マイナス0.25%だった政策金利を75ベーシスポイント(bp)引き上げ0.5%とし、マイナス金利を脱した。75bpの利上げは過去15年で2度目。一段の利上げを排除できないとした。
ロイター調査では大半のエコノミストが0.5%への利上げを予想していた。
6月に続く追加利上げ決定の背景には、国内の物価上昇や他国の積極的な金融引き締めがある。8月の消費者物価上昇率は前年比で3.5%で1993年8月以来の高水準。中銀の目標レンジ(0─2%)を7カ月連続で上回った。
ジョルダン総裁は会見で利上げについて「インフレ圧力の再上昇と、これまで影響が少なかった商品やサービスへのインフレの広がりに対処している」と説明した。
「中期的な物価安定を確保するために、政策金利のさらなる引き上げが必要になる可能性を否定できない」とした。
中銀の新たな物価見通しでは、予想期間の終盤でインフレ上昇の動きが見られるとし「金融政策がさらに引き締められる可能性があることを明確に示している」と述べた。
また「適切な金融条件を提供するために、必要に応じて外為市場に積極的に関与していく意向だ」と表明。その意味について、スイスフランの「過度な上昇」を抑えるために外貨を購入することだとし「フランが下がれば、外貨売りも検討する」とした。前回6月の利上げ以降、フランは約7%上昇し、国内物価抑制に寄与していると指摘した。
金融政策運営をプラスの金利環境に適応させていると指摘。「このため有担保の短期のスイスフラン市場金利は中銀の政策金利に近い水準に維持される」とした。
中銀に預けられた銀行の要求払い預金は、一定の水準までは政策金利を適用し、これを超える分については金利をゼロとする方針を示した。また「流動性吸収手段も活用する」とした。
超低金利によりリターンを求める資産バブル助長が懸念されていたが、これは起こらなかったとエコノミストは指摘。UBSのアレッサンドロ・ビー氏は「金融システムに対するリスクは顕在化せず、フラン高と共存できることを経済は学んだ」と述べた。
スイス銀行協会は、マイナス金利で国内金融機関はフラン高への対応の矢面に立たされたと指摘。銀行協会のチーフエコノミストは「回復には時に劇薬が必要だが、銀行セクターはマイナス金利終了に胸をなでおろしている」と述べた。
メクラー中銀理事は短期金融市場金利を政策金利に近い水準に保つため、手形売出やレポ取引などを活用して流動性を吸収する考えを明らかにした。
「われわれは実施方法を調整している」とし、銀行が中銀に保有する要求払い預金に対する利息の調整とオペ(公開市場操作)による流動性吸収を新たな手段として用いると説明した。
Jサフラ・サラシンのエコノミスト、カルステン・ジュニウス氏は、中銀が今回、一段の利上げが必要になる可能性は否定できないと説明したのは他の中銀に比べてハト派的と指摘。中銀のインフレ率予想は24年は引き続き2%を下回り、再び2%に上昇するのは25年第2・四半期と想定していることから、12月に75ベーシスポイント(bp)の追加利上げの可能性は乏しいとの見方を示した。