[日本インタビュ新聞社] - ■時価総額100億円未満の銘柄が東証プライム市場から脱落
下世話では「捨てる神あれば拾う神あり」という。時価総額の大きい銘柄と小さな銘柄との明暗は、まさにこれだろう。時価総額の大きな銘柄の明は、前週13日、14日のトヨタ自動車<7203>(東証プライム)である。時価総額37兆円超と断トツの同社株が、1株純資産をクリアするPBR(株価純資産倍率)1倍となったと同時にそこからわずか2日間で株式分割を勘案した実質の上場来高値2358円まで300円高、小型株、新興市場株並みの急騰を演じた。
一方、暗の時価総額の小さい東証プライム市場の銘柄では、時価総額が、同市場の上場基準の100億円に遠く及ばず、東証プライム市場上場を諦めスタンダード市場上場を選択申請する銘柄が相次いだ。昨年4月の市場再編後、1年余も経って、なお東証プライム市場の家賃が高すぎことを思い知らされギブアップした結果であり、「捨てる神」は、選択申請発表とともに売りを優先し株価が急落するケースも続いた。
トヨタを「拾う神」は、折からの円安・ドル高、カーボンニュートラル関連の株主提案や会社側の取締役選任案に異議を表明した株主などが出席する株主総会の接近、さらに折よく6月13日付けの日本経済新聞で報道された全固体電池搭載の電気自動車(EV)投入などの好材料があれこれ加わって買い評価したことになる。
なかでも株価面では、PBR1倍クリアが海外投資家などを幅広く買い誘引したことは容易に察しがつく。東証は、今年3月に東証の全上場会社にPBR1倍の達成を要請した。これに応じて上場会社サイドも、非課税投資額が拡大される新NISA(少額投資非課税制度)の導入を控え、自己株式取得や株式分割の資本政策を活発化させていた。トヨタも、株式分割や自己株式取得を続け昨年7月に2206円とPBR1倍を示現する場面もあったが、以来この1年、1株純資産を前にすると上値が重くなり、それが今回のPBR1倍達成とともに株価急騰につながった。
相場全般も、これまで指数寄与度の大きい半導体関連の値がさ株への一本足打法、「一極相場」で日経平均株価が、3万3000円台とバブル相場崩壊後33年ぶりの高値までリバウンドしてきた。ただこの一本足打法も、トヨタの急騰とともにやや変換の兆しが出てきたようである。「一極相場」が、景気敏感株、円安関連株、バリュー(割安)株も同時に買い進まれる「多極相場」への多様化である。33年ぶりの高値水準までリバウンドした日経平均株価が、あのバブル相場のピークの3万8915円を目指すにはさらに幅広い銘柄のキャッチアップが必要なことは当然だろう。
そこで今週の当特集では、「第2トヨタ」へ追随が期待できる銘柄として、日経平均株価の構成銘柄のうち、PBR1倍割れでPER評価がトヨタの12.2倍を下回る割安銘柄に注目することにした。相場観というよりは比較感での銘柄スクリーニングで、これから株主総会を迎える会社がほとんどと状況も類似しているだけに、トヨタと同様にPBR1倍割れからPBR1倍クリアだけでもかなりの値幅効果が想定されるからだ。円安・ドル高関連株、景気敏感株、資源関連株、中国関連株などが幅広く浮上することになり、「第2のトヨタ」として相場全般をかさ上げ、牽引してくれることも期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)