*12:27JST スカラ Research Memo(7):M&A効果によりIT/AI/IoT/DX事業の売上収益は大幅増収に(1)
■スカラ (TYO:4845)の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) IT/AI/IoT/DX事業
IT/AI/IoT/DX事業の売上収益は前期比36.1%増の6,073百万円、営業利益は同11.9%減の409百万円と増収減益となったが、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業利益では同1.1%増の1,062百万円と若干ながら増益を確保した。
売上形態別で見ると、月額課金収入が前期比11.7%増の2,656百万円、従量課金収入が同64.9%増の1,121百万円、受託開発等の一時売上が同63.7%増の2,295百万円といずれも増加したが、エッグの売上が通年で寄与したことが主な増収要因となった。
エッグに関しては、ふるさと納税システムに加えて政府が実施した全国旅行支援事業関連や、鳥取県国民健康保険団体連合会から受託した医療介護データベースの分析システム「とっとり健康+(プラス)」※1の開発保守、鳥取県米子市及び境港市から受託したマイナンバーカード普及促進事業※2の売上が貢献した。
※1 医学的知見を踏まえた効果的な保健指導・保健師等の専門職の事務効率化・住民の行動変容につなげるための効果的な情報提示を行うシステムで、被保険者の将来予測を含めた保健指導を実施するためのツールとして開発された。
現在、鳥取県の国民健康保険加入者を対象とした健康アプリも開発中となっている。
※2 マイナンバーカード申請ページの導線となるランディングページの制作やテレビCM、YouTube、SNS、キャンピングカー等を活用した広報の企画、設計、商業施設への出張申請ブース開設業務等を受託した。
既存事業ベースで見ると、売上高は主力サービスの「i-シリーズ」を中心に堅調に推移したが、利益面では新規共創案件に係る開発費用の増加等により減益となったようだ。
四半期ベースの売上推移では、ふるさと納税システムや旅行支援事業関連の寄与が大きかった第2四半期が1,808百万円とピークとなっており、M&A効果が一巡し旅行支援事業が縮小した第4四半期には前年同期比18.9%減の1,277百万円と減収に転じている。
共創案件の取り組み状況については、以下のとおり。
a) 「スマートヘルスケアプラットフォーム」
スカラコミュニケーションズ、大塚製薬(株)、損害保険ジャパン(株)の3社で、ヘルスケア領域における「スマートヘルスケアプラットフォーム」の開発を進めている。
大塚製薬が販売している特定保健用食品を利用するユーザーを対象とし、摂取状況や自身の生活習慣(睡眠時間、運動時間等)、体の状態(体重等)などをスマートフォンアプリに記録することで生活習慣の改善を促し、健康の維持・増進を図るためのサービスとなる。
現在、3社の従業員による実証実験が行われており、2024年早々にも本格的なサービス提供を開始する予定となっている。
同社はアプリの開発・運営を行い、月額利用料を売上として計上する。
b) 「U-メディカルサポート」
畜産DXとして、デザミス(株)、三井住友海上火災保険(株)と共同で、牛の遠隔診療や電子カルテ、指示書作成等の機能を備えた総合診療サポートツール「U-メディカルサポート」を開発、2023年1月より提供を開始している。
デザミスが開発した牛の行動モニタリングシステム「U-motion(R)※1」を通じて牛の健康状態を把握し、異変を察知してすぐに獣医師が往診できない場合に、「U-メディカルサポート」を利用することで診断遅れによる牛の健康状態の悪化を防ぐ効果が期待されている。
また、獣医師にとっても同ツールを利用することで業務負荷が軽減するといったメリットがある。
国内で飼育されている乳用牛は約137万頭、このうち約10万頭で「U-motion(R)」が利用されており、デザミスを通じて「U-メディカルサポート」の拡販を進めていく。
「U-メディカルサポート」は、獣医師が支払う月額利用料※2のうち一定比率を同社の売上として計上するため提供開始直後の業績寄与は少ないが、導入施設数の増加や横展開により安定収益源としての貢献が期待される。
現在、契約件数は徐々に増えている状況だ。
また、デザミスとは別のサービスの開発についても検討を進めている。
※1 牛の首に取り付けたセンサーが反芻・動態・横臥・起立等の主要な行動を24時間365日記録することで、牛の健康状態をリアルタイムに把握できるサービス。
※2 月額料金は1アカウント2万円、1事業所で5万円だが、酪農家は無料で利用できる。
機能の追加により価格が変更となる可能性もある。
ちなみに、畜産に関わる動物の診療施設数は全国で約4,000施設ある。
c)自治体向け「施設予約システム」
マイナンバーカードソリューションを展開しているxID(株)とデジタルIDと連携した「施設予約システム」の開発を進めており、全国の自治体に向けSaaS/ASPでの提供準備を進めている段階にある。
公民館や体育館等の公共施設の予約や解錠等をマイナンバーで行うソリューションとなる。
既に、自治体から1件受注しており、今後の普及拡大が期待される。
(2) カスタマーサポート事業
カスタマーサポート事業の売上収益は前期比11.2%減の1,204百万円、営業損失は61百万円(前期は31百万円の損失)、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業損失は52百万円(同28百万円の損失)となった。
電気通信事業法改正に向けた対応により、主力案件の活動を停止したことが減収要因となったが四半期ベースで見ると第2四半期の288百万円を底に第3四半期以降は300百万円以上の水準をキープするなどようやく下げ止まったものと見られる。
営業活動の強化により新規受注を獲得していることが要因で、2024年6月期は緩やかな回復が見込まれている。
利益面でも、売上減に伴い損失が続いたが、沖縄の自社コールセンターへの移管を進めることで損益改善を図っていくことにしている。
なお、事業規模が小さいこともあり2024年6月期からはIT/AI/IoT/DX事業のなかに組み込まれることとなった。
(3) 人材・教育事業
人材・教育事業の売上収益は前期比16.1%増の1,704百万円、営業利益は同229.2%増の203百万円、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業利益では同30.0%増の295百万円と好調な業績となった。
人材事業が2ケタ増収と好調で、業績のけん引役となった。
2020年4月に同事業をグループ化して以降、コロナ禍の影響で苦戦してきたが、売上高もグループ化前の水準に迫るところまで回復し、営業利益については最高益を更新した※。
※人材・教育事業を展開していたグリッドグループホールディングスの2019年5月期連結業績は売上高1,999百万円、営業利益31百万円(いずれも参考値)の水準であった。
採用支援サービスは、コロナ禍からの経済再開や人手不足を背景とした採用意欲の高まりにより、合同企業説明会への参加企業が高水準で推移し、好調な売上につながった。
一方、保育・教育サービスでは2023年4月に幼保園「Universal Kids品川」(直営)及び「Universal Kids バンコク」(他社運営でプログラムの提供のみ)を開園したが、売上への寄与は軽微だったようだ。
一方、学童に関しては英語学習に特化した「Global Education Center」を2023年4月に開校し、好評により定員に達したことから10月にクラスの増設を予定している。
2022年3月に子会社化したブロンコス20では、プロバスケットボールチーム「さいたまブロンコス」のファンクラブサイトをプレオープンし、会員募集を開始した。
同サイトではメンバーシップNFT(非代替トークン)を活用した「新しい形のファンクラブ」を運営する予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
2. 事業セグメント別動向
(1) IT/AI/IoT/DX事業
IT/AI/IoT/DX事業の売上収益は前期比36.1%増の6,073百万円、営業利益は同11.9%減の409百万円と増収減益となったが、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業利益では同1.1%増の1,062百万円と若干ながら増益を確保した。
売上形態別で見ると、月額課金収入が前期比11.7%増の2,656百万円、従量課金収入が同64.9%増の1,121百万円、受託開発等の一時売上が同63.7%増の2,295百万円といずれも増加したが、エッグの売上が通年で寄与したことが主な増収要因となった。
エッグに関しては、ふるさと納税システムに加えて政府が実施した全国旅行支援事業関連や、鳥取県国民健康保険団体連合会から受託した医療介護データベースの分析システム「とっとり健康+(プラス)」※1の開発保守、鳥取県米子市及び境港市から受託したマイナンバーカード普及促進事業※2の売上が貢献した。
※1 医学的知見を踏まえた効果的な保健指導・保健師等の専門職の事務効率化・住民の行動変容につなげるための効果的な情報提示を行うシステムで、被保険者の将来予測を含めた保健指導を実施するためのツールとして開発された。
現在、鳥取県の国民健康保険加入者を対象とした健康アプリも開発中となっている。
※2 マイナンバーカード申請ページの導線となるランディングページの制作やテレビCM、YouTube、SNS、キャンピングカー等を活用した広報の企画、設計、商業施設への出張申請ブース開設業務等を受託した。
既存事業ベースで見ると、売上高は主力サービスの「i-シリーズ」を中心に堅調に推移したが、利益面では新規共創案件に係る開発費用の増加等により減益となったようだ。
四半期ベースの売上推移では、ふるさと納税システムや旅行支援事業関連の寄与が大きかった第2四半期が1,808百万円とピークとなっており、M&A効果が一巡し旅行支援事業が縮小した第4四半期には前年同期比18.9%減の1,277百万円と減収に転じている。
共創案件の取り組み状況については、以下のとおり。
a) 「スマートヘルスケアプラットフォーム」
スカラコミュニケーションズ、大塚製薬(株)、損害保険ジャパン(株)の3社で、ヘルスケア領域における「スマートヘルスケアプラットフォーム」の開発を進めている。
大塚製薬が販売している特定保健用食品を利用するユーザーを対象とし、摂取状況や自身の生活習慣(睡眠時間、運動時間等)、体の状態(体重等)などをスマートフォンアプリに記録することで生活習慣の改善を促し、健康の維持・増進を図るためのサービスとなる。
現在、3社の従業員による実証実験が行われており、2024年早々にも本格的なサービス提供を開始する予定となっている。
同社はアプリの開発・運営を行い、月額利用料を売上として計上する。
b) 「U-メディカルサポート」
畜産DXとして、デザミス(株)、三井住友海上火災保険(株)と共同で、牛の遠隔診療や電子カルテ、指示書作成等の機能を備えた総合診療サポートツール「U-メディカルサポート」を開発、2023年1月より提供を開始している。
デザミスが開発した牛の行動モニタリングシステム「U-motion(R)※1」を通じて牛の健康状態を把握し、異変を察知してすぐに獣医師が往診できない場合に、「U-メディカルサポート」を利用することで診断遅れによる牛の健康状態の悪化を防ぐ効果が期待されている。
また、獣医師にとっても同ツールを利用することで業務負荷が軽減するといったメリットがある。
国内で飼育されている乳用牛は約137万頭、このうち約10万頭で「U-motion(R)」が利用されており、デザミスを通じて「U-メディカルサポート」の拡販を進めていく。
「U-メディカルサポート」は、獣医師が支払う月額利用料※2のうち一定比率を同社の売上として計上するため提供開始直後の業績寄与は少ないが、導入施設数の増加や横展開により安定収益源としての貢献が期待される。
現在、契約件数は徐々に増えている状況だ。
また、デザミスとは別のサービスの開発についても検討を進めている。
※1 牛の首に取り付けたセンサーが反芻・動態・横臥・起立等の主要な行動を24時間365日記録することで、牛の健康状態をリアルタイムに把握できるサービス。
※2 月額料金は1アカウント2万円、1事業所で5万円だが、酪農家は無料で利用できる。
機能の追加により価格が変更となる可能性もある。
ちなみに、畜産に関わる動物の診療施設数は全国で約4,000施設ある。
c)自治体向け「施設予約システム」
マイナンバーカードソリューションを展開しているxID(株)とデジタルIDと連携した「施設予約システム」の開発を進めており、全国の自治体に向けSaaS/ASPでの提供準備を進めている段階にある。
公民館や体育館等の公共施設の予約や解錠等をマイナンバーで行うソリューションとなる。
既に、自治体から1件受注しており、今後の普及拡大が期待される。
(2) カスタマーサポート事業
カスタマーサポート事業の売上収益は前期比11.2%減の1,204百万円、営業損失は61百万円(前期は31百万円の損失)、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業損失は52百万円(同28百万円の損失)となった。
電気通信事業法改正に向けた対応により、主力案件の活動を停止したことが減収要因となったが四半期ベースで見ると第2四半期の288百万円を底に第3四半期以降は300百万円以上の水準をキープするなどようやく下げ止まったものと見られる。
営業活動の強化により新規受注を獲得していることが要因で、2024年6月期は緩やかな回復が見込まれている。
利益面でも、売上減に伴い損失が続いたが、沖縄の自社コールセンターへの移管を進めることで損益改善を図っていくことにしている。
なお、事業規模が小さいこともあり2024年6月期からはIT/AI/IoT/DX事業のなかに組み込まれることとなった。
(3) 人材・教育事業
人材・教育事業の売上収益は前期比16.1%増の1,704百万円、営業利益は同229.2%増の203百万円、Non-GAAP指標での全社費用配賦前営業利益では同30.0%増の295百万円と好調な業績となった。
人材事業が2ケタ増収と好調で、業績のけん引役となった。
2020年4月に同事業をグループ化して以降、コロナ禍の影響で苦戦してきたが、売上高もグループ化前の水準に迫るところまで回復し、営業利益については最高益を更新した※。
※人材・教育事業を展開していたグリッドグループホールディングスの2019年5月期連結業績は売上高1,999百万円、営業利益31百万円(いずれも参考値)の水準であった。
採用支援サービスは、コロナ禍からの経済再開や人手不足を背景とした採用意欲の高まりにより、合同企業説明会への参加企業が高水準で推移し、好調な売上につながった。
一方、保育・教育サービスでは2023年4月に幼保園「Universal Kids品川」(直営)及び「Universal Kids バンコク」(他社運営でプログラムの提供のみ)を開園したが、売上への寄与は軽微だったようだ。
一方、学童に関しては英語学習に特化した「Global Education Center」を2023年4月に開校し、好評により定員に達したことから10月にクラスの増設を予定している。
2022年3月に子会社化したブロンコス20では、プロバスケットボールチーム「さいたまブロンコス」のファンクラブサイトをプレオープンし、会員募集を開始した。
同サイトではメンバーシップNFT(非代替トークン)を活用した「新しい形のファンクラブ」を運営する予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)