*16:07JST ダイキアクシス Research Memo(7):2023年12月期はM&A効果を含めて増収も、先行投資等により減益
■業績動向
1. 2023年12月期の業績概要
ダイキアクシス (TYO:4245)の2023年12月期の連結業績は、売上高が前期比8.1%増の42,681百万円、営業利益が同20.1%減の660百万円、経常利益が同28.6%減の837百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同64.3%減の205百万円と、増収ながら減益となった。
2023年8月に公表した修正予想に対しては、売上高、営業(及び経常)利益ともに上回る着地となった。
売上高は、2件のM&Aによる上乗せ分を含め伸長した。
主力の「環境機器関連事業」では、海外が一過性プロジェクトのはく落※により一旦落ち込むも、国内では設備投資需要の回復により修繕工事が増加したほか、メンテナンス契約の増加が増収に寄与した。
「住宅機器関連事業」については、海外部品調達難に起因するメーカーからの出荷制限が解消され、都市圏マンションなどへの建設関連業者向けが大きく回復したほか、空調工事を手掛けるアドアシステムの連結化により住機部門工事も底上げされた。
「再生可能エネルギー関連事業」については、メデアの連結化により、太陽光発電事業(売電、発電施設の販売)が順調に拡大した。
※イラクにおけるJICA支援プロジェクト(大型案件)の終了によるもの。
ただし、想定内のことである。
利益面では、仕入価格及び外注費の上昇分を価格転嫁の遅れにより十分に吸収できなかったことや、ベースアップによる人件費増や今後に向けた先行投資(ITツールの導入、M&A関連費用など)などにより販管費が増加したことで営業減益となった。
営業利益率も1.5%(前期は2.1%)に低下した。
なお、親会社株主に帰属する当期純利益が修正予想を下回ったのは、一部の固定資産に対して減損損失(195百万円)を計上したことが主因である※。
※なお、2023年8月に公表した製品不具合対応費用(特別損失198百万円)については、開発元企業からの求償金受入れ(特別利益179百万円)によりほぼ回収できている。
財政状態については、「環境機器関連事業」におけるインド工場の設備増設、並びに「再生可能エネルギー関連事業」における設備増設(FIT設備、並びにPPAモデルの事業開始による機械装置及び土地の取得)のほか、M&Aに伴うのれんの増加などにより、総資産は前期末比6.8%増の34,071百万円に拡大した。
一方、自己資本については配当支払などにより前期末とほぼ横ばいの9,523百万円で推移したことから、自己資本比率は28.0%(前期末は29.8%)に若干低下した。
資本収益性を示すROEについても先行投資などによる利益圧迫で2.2%(前期は6.3%)に低下している。
キャッシュ・フローの状況については、営業キャッシュ・フローが1,344百万円のプラス、投資キャッシュ・フローが2,452百万円のマイナス、財務キャッシュ・フローが574百万円のプラスとなり、その結果、現金及び現金同等物の残高は6,670百万円(前期末比467百万円減)に減少した。
なお、投資キャッシュ・フローのマイナスは、M&Aのほか、海外事業や「再生可能エネルギー関連事業」への投資などによるものである。
主力事業の業績は以下のとおりである。
(1) 環境機器関連事業
売上高は前期比2.6%増の21,010百万円、セグメント利益は同4.9%減の1,424百万円となった。
設備投資需要の回復及び案件の大型化などを追い風として、浄化槽・排水処理システムにおける修繕工事の増加や大型案件の工事進捗、メンテナンス契約の積み上げなどが増収に寄与した。
また、地下水飲料化についても、新規契約や販売後のメンテナンス契約の増加により大きく伸びた。
ただ、事業全体で緩やかな増収率に留まったのは、一過性要因(イラクでのJICAプロジェクト)のはく落や、中国・インドネシアにおける大型案件の減少等に伴い、海外事業が一旦後退したことが理由である。
もっとも、注力するインド・スリランカについては着実に事業拡大に向けた体制が整ってきた※。
一方、利益面では、材料費や外注費が上昇するなかで、一部案件における価格転嫁の遅れが生じたことや、海外における先行費用資の拡大により減益となった。
※2022年10月にスリランカの小型浄化槽の組立工場、2022年11月にインドの中大型浄化槽の製造工場が完成(インドは委託生産工場に続く2工場目)し、それぞれ稼働を開始した。
2023年12月期については、インドでの受注台数が288台(前期比72台増)、出荷台数が235台(同6台増)と工員育成のもたつきからまだ出荷台数が追いついていないが、足元では着々と軌道に乗ってきたようだ。
また、スリランカでは受注台数が106台(同15台増)、出荷台数が117台(同60台増)と伸びているものの、3ヶ月遅れの決算取り込みのため、2023年12月期には十分に反映されていないようだ。
(2) 住宅機器関連事業
売上高は前期比11.5%増の18,302百万円、セグメント利益は同13.6%減の278百万円となった。
海外部品調達難に起因するメーカーからの商品出荷制限が解消されるなかで、都市圏マンション・賃貸物件が堅調な建設関連業者等向けが伸びたほか、住機部門工事についても、空調工事等を手掛けるアドアシステムの連結化や設備投資需要の回復により大きく拡大した。
一方、利益面では、仕入価格及び外注費の上昇分の販売価格への転嫁の遅れにより減益となった。
(3) 再生可能エネルギー関連事業
売上高は前期比41.7%増の2,746百万円、セグメント利益は同31.6%増の259百万円となった。
売電事業による安定収益に加え、売電事業及び発電施設の販売を手掛けるメデアの連結化が増収に大きく寄与した。
また、バイオディーゼル燃料についても、B5軽油※の契約件数の伸びにより堅調に推移している。
利益面でも、売電収益の底上げや子会社による発電施設の売却等により増益を確保した。
※軽油に「D・OiL」を5%混合したものであり、国の定める軽油の強制規格を満たしている。
2. 2023年12月期の総括
以上から、2023年12月期を総括すると、売上高はM&A効果を含めて、期初計画及び修正計画を上回る着地となり、評価できる結果と言える。
2025年12月期を最終年度とする中期経営計画に対しても売上高はハイペースで進捗している。
一方、利益面での減益をどう評価するかがポイントである。
仕入価格上昇分の価格転嫁の遅れは気になるものの、人的資本や海外事業への投資、M&Aの実現などによる先行費用の増加は、今後の成長につながるものであり、将来に対する自信や手応えの現れという見方もできるだろう。
特にM&Aによる事業基盤の強化に加え、インド・スリランカでの新工場の稼働、バングラデシュへの子会社設立など、戦略面では今後に向けて一定の成果を残したと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
1. 2023年12月期の業績概要
ダイキアクシス (TYO:4245)の2023年12月期の連結業績は、売上高が前期比8.1%増の42,681百万円、営業利益が同20.1%減の660百万円、経常利益が同28.6%減の837百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同64.3%減の205百万円と、増収ながら減益となった。
2023年8月に公表した修正予想に対しては、売上高、営業(及び経常)利益ともに上回る着地となった。
売上高は、2件のM&Aによる上乗せ分を含め伸長した。
主力の「環境機器関連事業」では、海外が一過性プロジェクトのはく落※により一旦落ち込むも、国内では設備投資需要の回復により修繕工事が増加したほか、メンテナンス契約の増加が増収に寄与した。
「住宅機器関連事業」については、海外部品調達難に起因するメーカーからの出荷制限が解消され、都市圏マンションなどへの建設関連業者向けが大きく回復したほか、空調工事を手掛けるアドアシステムの連結化により住機部門工事も底上げされた。
「再生可能エネルギー関連事業」については、メデアの連結化により、太陽光発電事業(売電、発電施設の販売)が順調に拡大した。
※イラクにおけるJICA支援プロジェクト(大型案件)の終了によるもの。
ただし、想定内のことである。
利益面では、仕入価格及び外注費の上昇分を価格転嫁の遅れにより十分に吸収できなかったことや、ベースアップによる人件費増や今後に向けた先行投資(ITツールの導入、M&A関連費用など)などにより販管費が増加したことで営業減益となった。
営業利益率も1.5%(前期は2.1%)に低下した。
なお、親会社株主に帰属する当期純利益が修正予想を下回ったのは、一部の固定資産に対して減損損失(195百万円)を計上したことが主因である※。
※なお、2023年8月に公表した製品不具合対応費用(特別損失198百万円)については、開発元企業からの求償金受入れ(特別利益179百万円)によりほぼ回収できている。
財政状態については、「環境機器関連事業」におけるインド工場の設備増設、並びに「再生可能エネルギー関連事業」における設備増設(FIT設備、並びにPPAモデルの事業開始による機械装置及び土地の取得)のほか、M&Aに伴うのれんの増加などにより、総資産は前期末比6.8%増の34,071百万円に拡大した。
一方、自己資本については配当支払などにより前期末とほぼ横ばいの9,523百万円で推移したことから、自己資本比率は28.0%(前期末は29.8%)に若干低下した。
資本収益性を示すROEについても先行投資などによる利益圧迫で2.2%(前期は6.3%)に低下している。
キャッシュ・フローの状況については、営業キャッシュ・フローが1,344百万円のプラス、投資キャッシュ・フローが2,452百万円のマイナス、財務キャッシュ・フローが574百万円のプラスとなり、その結果、現金及び現金同等物の残高は6,670百万円(前期末比467百万円減)に減少した。
なお、投資キャッシュ・フローのマイナスは、M&Aのほか、海外事業や「再生可能エネルギー関連事業」への投資などによるものである。
主力事業の業績は以下のとおりである。
(1) 環境機器関連事業
売上高は前期比2.6%増の21,010百万円、セグメント利益は同4.9%減の1,424百万円となった。
設備投資需要の回復及び案件の大型化などを追い風として、浄化槽・排水処理システムにおける修繕工事の増加や大型案件の工事進捗、メンテナンス契約の積み上げなどが増収に寄与した。
また、地下水飲料化についても、新規契約や販売後のメンテナンス契約の増加により大きく伸びた。
ただ、事業全体で緩やかな増収率に留まったのは、一過性要因(イラクでのJICAプロジェクト)のはく落や、中国・インドネシアにおける大型案件の減少等に伴い、海外事業が一旦後退したことが理由である。
もっとも、注力するインド・スリランカについては着実に事業拡大に向けた体制が整ってきた※。
一方、利益面では、材料費や外注費が上昇するなかで、一部案件における価格転嫁の遅れが生じたことや、海外における先行費用資の拡大により減益となった。
※2022年10月にスリランカの小型浄化槽の組立工場、2022年11月にインドの中大型浄化槽の製造工場が完成(インドは委託生産工場に続く2工場目)し、それぞれ稼働を開始した。
2023年12月期については、インドでの受注台数が288台(前期比72台増)、出荷台数が235台(同6台増)と工員育成のもたつきからまだ出荷台数が追いついていないが、足元では着々と軌道に乗ってきたようだ。
また、スリランカでは受注台数が106台(同15台増)、出荷台数が117台(同60台増)と伸びているものの、3ヶ月遅れの決算取り込みのため、2023年12月期には十分に反映されていないようだ。
(2) 住宅機器関連事業
売上高は前期比11.5%増の18,302百万円、セグメント利益は同13.6%減の278百万円となった。
海外部品調達難に起因するメーカーからの商品出荷制限が解消されるなかで、都市圏マンション・賃貸物件が堅調な建設関連業者等向けが伸びたほか、住機部門工事についても、空調工事等を手掛けるアドアシステムの連結化や設備投資需要の回復により大きく拡大した。
一方、利益面では、仕入価格及び外注費の上昇分の販売価格への転嫁の遅れにより減益となった。
(3) 再生可能エネルギー関連事業
売上高は前期比41.7%増の2,746百万円、セグメント利益は同31.6%増の259百万円となった。
売電事業による安定収益に加え、売電事業及び発電施設の販売を手掛けるメデアの連結化が増収に大きく寄与した。
また、バイオディーゼル燃料についても、B5軽油※の契約件数の伸びにより堅調に推移している。
利益面でも、売電収益の底上げや子会社による発電施設の売却等により増益を確保した。
※軽油に「D・OiL」を5%混合したものであり、国の定める軽油の強制規格を満たしている。
2. 2023年12月期の総括
以上から、2023年12月期を総括すると、売上高はM&A効果を含めて、期初計画及び修正計画を上回る着地となり、評価できる結果と言える。
2025年12月期を最終年度とする中期経営計画に対しても売上高はハイペースで進捗している。
一方、利益面での減益をどう評価するかがポイントである。
仕入価格上昇分の価格転嫁の遅れは気になるものの、人的資本や海外事業への投資、M&Aの実現などによる先行費用の増加は、今後の成長につながるものであり、将来に対する自信や手応えの現れという見方もできるだろう。
特にM&Aによる事業基盤の強化に加え、インド・スリランカでの新工場の稼働、バングラデシュへの子会社設立など、戦略面では今後に向けて一定の成果を残したと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)