*16:51JST 澁澤倉庫 Research Memo(1):「中期経営計画2026」では営業利益53億円を目指す
■要約
1. 専門性、DX、業域拡大、モーダルシフトのノウハウに強みを持つ総合物流企業
澁澤倉庫 (TYO:9304)は、倉庫業を祖業とする総合物流企業である。
事業は物流事業と不動産事業に大別され、物流事業は国内ロジスティクスと国際ロジスティクス、情報システムに、不動産事業は不動産開発・賃貸や工事・ビルマネジメントサービスに分けられる。
同社は、“日本資本主義の父”と言われ、現在のサステナビリティ(持続的成長)に通じる精神を持った渋沢栄一(しぶさわえいいち)が1897年に創業した。
その後、昭和初期にかけ全国に支店を開設し、戦後は陸・海・空へと事業領域を拡大、平成に入って海外展開を加速するなど業容拡大を進めた。
同社の強みは、飲料・日用品など消費財物流や多品種少量貨物で培った専門性、車両・配車データのデジタル化や自動搬送機の導入などのDX、海外や物流周辺への業域の拡大、そして現在注目を集めるモーダルシフトのノウハウにある。
2. セカンドステージ「中期経営計画2026」では2027年3月期に営業利益53億円を目指す
同社は、創業者・渋沢栄一の「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という精神を基軸に「Shibusawa 2030 ビジョン」を策定した。
ビジョン達成へのファーストステージである3ヶ年の「中期経営計画2023」が順調に推移したため、2031年3月期の営業利益目標を60億円から65億円へと上方修正し、新たにROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目指すこととした。
セカンドステージとなる「中期経営計画2026」が2025年3月期にスタートしたが、収益力の強化、物流ネットワークの拡充、業域の拡大、不動産ポートフォリオの拡充、ESGへの取組み強化という5つの成長戦略を推進し、持続的価値を創造していく考えで、最終年度の2027年3月期には営業収益850億円、営業利益53億円、ROE7%以上を目指す。
3. 2024年3月期は海上・航空運賃の正常化などの要因で減益も、既存事業は順調に推移
「中期経営計画2023」最終年度の2024年3月期の業績は、営業収益が73,417百万円(前期比6.5%減)、営業利益が4,271百万円(同12.7%減)となった。
既存事業は順調だったが、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)などの影響で上昇していた海上・航空運賃が正常化に向けて下落に転じたこと、前期に不動産事業で計上した大型請負工事の解消があったことで減収となった。
また、R&D賃貸施設の稼働率向上や業務効率化が進んだ一方、処遇改善やDX投資など先行的費用の増加により営業減益となった。
「中期経営計画2023」は、上記要因により2024年3月期において営業利益のみ目標未達となったが、営業収益と経常利益は目標達成となり、また、前期には営業収益、各利益すべてで目標をクリアしているため、おおむね良好と言える。
4. 2025年3月期は増収2ケタ増益予想、「中期経営計画2026」は順調スタートの見通し
2025年3月期の業績に関して同社は、営業収益78,000百万円(前期比6.2%増)、営業利益4,700百万円(同10.0%増)を見込んでいる。
新設拠点では、千葉市と松戸市の拠点が通期フル稼働、危険物倉庫は神戸市および、茨木市で2024年4月に稼働を開始、横浜市の本牧倉庫も同年10月竣工に向けて順調に体制を構築している。
新規業務では、飲料の倉庫業務と陸上運送業務を併せた全国展開や、化粧品のEC業務を開始するなど、「中期経営計画2026」初年度は順調にスタートする見通しである。
「2024年問題」に関しては、既に対策を進めているうえ、同社のモーダルシフトのノウハウが業界の働き方改革に貢献すると見られる。
なお、業績順調を背景に、配当性向40%を目安に、年間配当金100.0円を下限とした累進的配当方針を導入した。
また、市場環境や資本の状況等を総合的に勘案して自己株式の取得を機動的に実施することとしており、2024年5月には発行済株式の4.5%の自己株式取得を実施した。
加えて、資本効率の向上に向け、政策保有株式の縮減への取組みを既に実施している。
■Key Points
・渋沢栄一のサステナビリティに通じる精神を受け継ぐ総合物流企業
・長期ビジョンを上方修正、「中期経営計画2026」で営業利益53億円を目指す
・2025年3月期は新設拠点と新規業務の貢献などにより2ケタ増益を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
1. 専門性、DX、業域拡大、モーダルシフトのノウハウに強みを持つ総合物流企業
澁澤倉庫 (TYO:9304)は、倉庫業を祖業とする総合物流企業である。
事業は物流事業と不動産事業に大別され、物流事業は国内ロジスティクスと国際ロジスティクス、情報システムに、不動産事業は不動産開発・賃貸や工事・ビルマネジメントサービスに分けられる。
同社は、“日本資本主義の父”と言われ、現在のサステナビリティ(持続的成長)に通じる精神を持った渋沢栄一(しぶさわえいいち)が1897年に創業した。
その後、昭和初期にかけ全国に支店を開設し、戦後は陸・海・空へと事業領域を拡大、平成に入って海外展開を加速するなど業容拡大を進めた。
同社の強みは、飲料・日用品など消費財物流や多品種少量貨物で培った専門性、車両・配車データのデジタル化や自動搬送機の導入などのDX、海外や物流周辺への業域の拡大、そして現在注目を集めるモーダルシフトのノウハウにある。
2. セカンドステージ「中期経営計画2026」では2027年3月期に営業利益53億円を目指す
同社は、創業者・渋沢栄一の「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という精神を基軸に「Shibusawa 2030 ビジョン」を策定した。
ビジョン達成へのファーストステージである3ヶ年の「中期経営計画2023」が順調に推移したため、2031年3月期の営業利益目標を60億円から65億円へと上方修正し、新たにROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目指すこととした。
セカンドステージとなる「中期経営計画2026」が2025年3月期にスタートしたが、収益力の強化、物流ネットワークの拡充、業域の拡大、不動産ポートフォリオの拡充、ESGへの取組み強化という5つの成長戦略を推進し、持続的価値を創造していく考えで、最終年度の2027年3月期には営業収益850億円、営業利益53億円、ROE7%以上を目指す。
3. 2024年3月期は海上・航空運賃の正常化などの要因で減益も、既存事業は順調に推移
「中期経営計画2023」最終年度の2024年3月期の業績は、営業収益が73,417百万円(前期比6.5%減)、営業利益が4,271百万円(同12.7%減)となった。
既存事業は順調だったが、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)などの影響で上昇していた海上・航空運賃が正常化に向けて下落に転じたこと、前期に不動産事業で計上した大型請負工事の解消があったことで減収となった。
また、R&D賃貸施設の稼働率向上や業務効率化が進んだ一方、処遇改善やDX投資など先行的費用の増加により営業減益となった。
「中期経営計画2023」は、上記要因により2024年3月期において営業利益のみ目標未達となったが、営業収益と経常利益は目標達成となり、また、前期には営業収益、各利益すべてで目標をクリアしているため、おおむね良好と言える。
4. 2025年3月期は増収2ケタ増益予想、「中期経営計画2026」は順調スタートの見通し
2025年3月期の業績に関して同社は、営業収益78,000百万円(前期比6.2%増)、営業利益4,700百万円(同10.0%増)を見込んでいる。
新設拠点では、千葉市と松戸市の拠点が通期フル稼働、危険物倉庫は神戸市および、茨木市で2024年4月に稼働を開始、横浜市の本牧倉庫も同年10月竣工に向けて順調に体制を構築している。
新規業務では、飲料の倉庫業務と陸上運送業務を併せた全国展開や、化粧品のEC業務を開始するなど、「中期経営計画2026」初年度は順調にスタートする見通しである。
「2024年問題」に関しては、既に対策を進めているうえ、同社のモーダルシフトのノウハウが業界の働き方改革に貢献すると見られる。
なお、業績順調を背景に、配当性向40%を目安に、年間配当金100.0円を下限とした累進的配当方針を導入した。
また、市場環境や資本の状況等を総合的に勘案して自己株式の取得を機動的に実施することとしており、2024年5月には発行済株式の4.5%の自己株式取得を実施した。
加えて、資本効率の向上に向け、政策保有株式の縮減への取組みを既に実施している。
■Key Points
・渋沢栄一のサステナビリティに通じる精神を受け継ぐ総合物流企業
・長期ビジョンを上方修正、「中期経営計画2026」で営業利益53億円を目指す
・2025年3月期は新設拠点と新規業務の貢献などにより2ケタ増益を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)