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クラボウ Research Memo(2):暮らしや産業を支える幅広い分野に事業領域を展開。より良い未来社会づくりに貢献

発行済 2024-09-03 11:02
更新済 2024-09-03 11:15
© Reuters.
*11:02JST クラボウ Research Memo(2):暮らしや産業を支える幅広い分野に事業領域を展開。
より良い未来社会づくりに貢献 ■事業内容

クラボウ (TYO:3106)は、1888年創業の大手繊維メーカーである。
「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します」を経営理念とし、創業以来、常に時代の先を見据えながら、新しい価値の創造に挑み続けてきた。
現在は、暮らしを支える繊維、自動車、住宅、バイオメディカル、食品や、産業を支えるエレクトロニクス、半導体、環境プラントなど幅広い分野に事業領域を展開している。


事業セグメントは、同社の祖業である「繊維事業」のほか、「化成品事業」「環境メカトロニクス事業」「食品・サービス事業」「不動産事業」の5つに区分される。
2024年3月期の売上構成比は、「繊維事業」が33.8%、「化成品事業」が40.5%、「環境メカトロニクス事業」が16.9%、「食品・サービス事業」が6.3%、「不動産事業」が2.5%となっている。


(1) 繊維事業
「繊維事業」は、「カジュアル衣料素材」「ユニフォーム衣料素材」「タオル・靴下・インナー素材」を主力とするほか、新分野として「作業環境支援ツール」も展開している。
紡績、織布、染色・加工、縫製における独自の高度な技術を生かし、綿を主力とした天然繊維をベースにした高機能・高感度な繊維製品を開発するとともに、ユニフォームやデニム、カジュアルなどの厚手素材では確固たる地位を確立してきた。
繊維業界を取り巻く環境は、国内カジュアル衣料分野の需要低迷や海外製品との価格競争激化など厳しい状況が続いているが、AI及びIoTを活用したスマートファクトリーの実現や繊維の再資源化によるサステナブルな取り組みのほか、独自技術を生かした新商品・サービスの開発により、新しい価値を提供するビジネスモデルへの変革を進めている。
注目される商品として、タオル・靴下・インナー素材では、天然繊維に様々な機能を持たせることができる「NaTech」(ネイテック)※1、カジュアル素材では“断裁くず”のアップサイクルシステム「L∞PLUS」(ループラス)※2、ユニフォーム分野では防災・難燃素材の「BREVANO」(ブレバノ)、「PROBAN」(プロバン)のほか、作業環境支援ツールでは現場作業者のリスク管理システム「Smartfit(スマートフィット)for work」※3がある。


※1 独自の技術で天然繊維等に機能性を持たせた素材。
暖かさ、呼吸湿、消臭、保湿などの機能素材を展開しており、各機能は洗濯耐久性にも優れる。

※2 服を作る時に発生する“裁断くず”を、服や雑貨などへとアップサイクルするサステナブルな取り組みと、その取り組みから生まれる製品の総称である。

※3 ウェアラブルデバイスから取得した作業者の生体情報と作業現場の気象情報などを解析・評価し、作業者の「暑熱環境下での作業リスク」や「体調変化」などの情報をリアルタイムに通知することで、リスク管理をサポートする。


(2) 化成品事業
「化成品事業」では、自動車内装材や住宅用建材・断熱材、半導体製造装置向け高機能樹脂製品、機能フィルム、産業資材用不織布など、独自の樹脂配合と成形技術を生かして多彩な製品を提供している。
半導体製造装置向け高機能樹脂製品、機能フィルムを注力事業と位置づけ、成長市場に向けて業容拡大に取り組んでいる。
R&Dにも積極的であり、各分野で新商品開発に注力している。
具体的には、「住宅用建材分野」では、再生木粉樹脂などを利用した環境配慮製品の開発、「機能フィルム分野」では、半導体・自動車・電子部品用途での新規機能付与や生産技術、「半導体製造装置向け高機能樹脂製品分野」では、高機能樹脂製品の生産技術向上や高性能化、「高機能複合素材分野」では、熱可塑性炭素複合シート「KURAPOWER SHEET(クラパワーシート)」の生産・成形・加工技術の開発に取り組んでいる。


(3) 環境メカトロニクス事業
「環境メカトロニクス事業」は、「エレクトロニクス事業」「エンジニアリング事業」「バイオメディカル事業」などに分類される。
「エレクトロニクス事業」では、色のセンシング技術を軸として、半導体回路基板やフィルムなど幅広い業界向けに検査・計測・制御システム等を提供し、モノづくりの品質向上に貢献している。
特に、今後の成長分野として、画像処理及び情報処理技術を活用したインフラ検査システムやロボットビジョンシステム(産業用ロボットのセンシングデバイス)※、光応用計測技術を用いた半導体洗浄システムや膜厚計測システムの研究開発、商品開発などにも取り組んでいる。
一方、「エンジニアリング事業」では、排水・排ガス処理技術などの環境プラント技術を基盤にバイオマス発電分野にも進出している。
「バイオメディカル事業」では、創薬、化粧品開発、前臨床研究の領域で研究試薬や機器、サービスを提供している。


※ ロボットが、動いている物体や形が定まらない柔らかい素材をハンドリングするために、瞬時につかむ位置を探す“ロボットの目”や、AIを活用して対象物を的確に認識する技術を開発している。
なお、ロボット産業は、危険な作業や人手の足りない介護医療の現場などでの実用化が進められており、今後の成長分野として注目されている。


(4) 食品・サービス事業
「食品・サービス事業」では、フリーズドライ(真空凍結乾燥)食品の製造・販売、ホテル等の運営を行っている。
「食品分野」は、わが国で初めてフリーズドライ食品を工業化したグループ会社・日本ジフィー食品(株)が展開しており、安全で高品質な商品の提供を通して、人々の健康と食文化の向上に貢献している。
一方、「サービス分野」では、同社設立当時の工場をコンバージョンした複合文化施設である「倉敷アイビースクエア」(ホテル・レストラン・宴会場等)の運営のほか、「クラボウドライビングスクール」(自動車教習所)の経営を通じて地域の“安全”に貢献している。
赤煉瓦と蔦の外観が特徴的な「倉敷アイビースクエア」は倉敷美観地区内にあり、宿泊できる文化施設として高い集客力と根強い人気を誇っている。


(5) 不動産事業
「不動産事業」では、工場跡地等の遊休資産の有効活用による長期安定収益の確保を目指し、オフィスや商業施設、大規模メガソーラー用地等の不動産賃貸を展開している。
同事業は、不況時にも少ないコストで確実に20億円超の営業利益を稼ぎ出す、高い収益性を維持しており、安定収益源として業績を支えている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

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