*11:06JST クラボウ Research Memo(6):最終年度を迎えた中計「Progress’24」では注力事業へ経営資源を集中
■中期経営計画「Progress’24」の進捗
1. 中期経営計画「Progress’24」の位置付けと基本戦略
クラボウ (TYO:3106)は、2019年に公表した「長期ビジョン2030」(2020年3月期〜2031年3月期)に基づき、「イノベーションと高収益を生み出す強い企業グループ」を目指しており、「成長市場における注力事業への経営資源の集中と基盤事業の収益力の強化」による「事業ポートフォリオの変革」を進めている。
現在の中期経営計画「Progress’24」(2023年3月期〜2025年3月期)は、その第2ステージに位置し、1) 成長・注力事業の業容拡大と基盤事業の収益力の強化、2) R&D活動の強化による新規事業創出と早期収益化、3) SDGs達成への貢献、4) 多様な人材の活躍推進を重点施策とし、次のステージに向けた土台づくりに取り組んでいる。
2. 数値計画
最終年度(2025年3月期)の業績目標として、売上高1,600億円、営業利益96億円、ROE7.0%などを目指している。
とりわけ、前述した重点施策1) を通じた収益力の強化に力点を置いており、売上高営業利益率は基準年度(2022年3月期)の5.7%から6.0%へ、ROEは5.9%から7.0%へと、それぞれ向上させる計画である。
また、3年間の投資計画は182億円、R&D予算は62億円を見込んでいる。
3. これまでの進捗
第1ステージの前中期経営計画「Creation’21」(2020年3月期~2022年3月期)については、想定外の新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、計画していた基盤事業(繊維、軟質ウレタン、住宅用建材等)の回復に遅れが生じ、数値計画を下回る結果となったが、第2ステージ「Progress’24」に入ってからは総じて計画どおりに進捗している。
特に成長市場として注力している半導体製造関連分野向け高機能樹脂製品や検査装置等の伸びが、繊維事業の回復の遅れをカバーするとともに、収益力の底上げに寄与しているところは注目すべき点と言える。
ROEは株式市場の高騰に伴うその他有価証券評価差額金(純資産)の増加によりマイナスの影響を受けているものの、売上高営業利益率は目標を上回る水準で推移している。
また、半導体製造関連分野のさらなる成長を見据え、高機能樹脂製品やシリコンウエハ洗浄装置の能力増強などに向けた投資にも取り組んでいる。
さらに重点施策2) で掲げた新規事業の創出についても、ロボットセンシング※やIn-Situ計測技術の開発などが実用化に向け進展した。
主な事業における取り組みと進捗状況については以下のとおりである。
※2023年10月にロボット用高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」のセンサーヘッド分離型の新機種を上市。
機能開発を進めるとともに、新規用途開拓にも注力している。
(1) 繊維事業
a) 独自技術を活用した高機能素材やサステナブル素材の販売拡大、b) サプライチェーン全体を意識したQR対応と生産性向上に取り組んでいる。
a) については、高機能コットン素材「ネイテック」が好調であったほか、ユニフォーム分野である防災・難燃素材「ブレバノ」「プロバン」やアップサイクルシステム「ループラス」もおおむね計画どおりに進捗し、自社評価は「〇」としている。
一方、b) については、生産計画管理のデジタル化などのスマートファクトリー化によりQRや生産性向上に取り組むも、受注減の影響により目立った成果を上げるには至らず、自社評価は「△」としている。
(2) 化成品事業
a) 半導体やエネルギー関連市場における注力事業への経営資源集中、b) 軟質ウレタンや住宅用建材など基盤事業の販売・生産体制の効率化と新規ビジネスの拡大に取り組んでいる。
a) については、高機能樹脂製品の生産・開発体制増強に向けて、熊本事業所の新棟建設に着工したほか、エネルギー関連市場(太陽電池)向け機能フィルムの製造ラインを新設するなど、今後の事業拡大につながる投資を実行し、自社評価は「◎」としている。
b) については、軟質ウレタンにおける生産拠点の移管・統合や、住宅用建材におけるスマートファクトリー化・DXなど、基盤事業の収益性・生産性改善に取り組み、自社評価は「〇」としている。
(3) 環境メカトロニクス事業
a) 商品力強化による競争優位性の獲得と海外市場への拡販、b) 社会課題の解決に貢献する商品群の市場投入に取り組んでいる。
a) については、前述のとおり、ロボットセンシングやIn-Situ計測技術の開発を進めたほか、バイオメディカル事業において攪拌脱泡装置が海外向けに伸長し、自社評価は「〇」としている。
一方、b) については、家畜排せつ物をサラサラでクリーンな堆肥に再生できる「FUNTO」が飼料高騰による酪農家の経営環境悪化により苦戦するも、排ガス処理設備は好調に推移した。
また、新エネルギー関連では、アンモニアを燃料とする熱焼炉への脱硝装置を初受注しており、自社評価は「〇」としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
1. 中期経営計画「Progress’24」の位置付けと基本戦略
クラボウ (TYO:3106)は、2019年に公表した「長期ビジョン2030」(2020年3月期〜2031年3月期)に基づき、「イノベーションと高収益を生み出す強い企業グループ」を目指しており、「成長市場における注力事業への経営資源の集中と基盤事業の収益力の強化」による「事業ポートフォリオの変革」を進めている。
現在の中期経営計画「Progress’24」(2023年3月期〜2025年3月期)は、その第2ステージに位置し、1) 成長・注力事業の業容拡大と基盤事業の収益力の強化、2) R&D活動の強化による新規事業創出と早期収益化、3) SDGs達成への貢献、4) 多様な人材の活躍推進を重点施策とし、次のステージに向けた土台づくりに取り組んでいる。
2. 数値計画
最終年度(2025年3月期)の業績目標として、売上高1,600億円、営業利益96億円、ROE7.0%などを目指している。
とりわけ、前述した重点施策1) を通じた収益力の強化に力点を置いており、売上高営業利益率は基準年度(2022年3月期)の5.7%から6.0%へ、ROEは5.9%から7.0%へと、それぞれ向上させる計画である。
また、3年間の投資計画は182億円、R&D予算は62億円を見込んでいる。
3. これまでの進捗
第1ステージの前中期経営計画「Creation’21」(2020年3月期~2022年3月期)については、想定外の新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により、計画していた基盤事業(繊維、軟質ウレタン、住宅用建材等)の回復に遅れが生じ、数値計画を下回る結果となったが、第2ステージ「Progress’24」に入ってからは総じて計画どおりに進捗している。
特に成長市場として注力している半導体製造関連分野向け高機能樹脂製品や検査装置等の伸びが、繊維事業の回復の遅れをカバーするとともに、収益力の底上げに寄与しているところは注目すべき点と言える。
ROEは株式市場の高騰に伴うその他有価証券評価差額金(純資産)の増加によりマイナスの影響を受けているものの、売上高営業利益率は目標を上回る水準で推移している。
また、半導体製造関連分野のさらなる成長を見据え、高機能樹脂製品やシリコンウエハ洗浄装置の能力増強などに向けた投資にも取り組んでいる。
さらに重点施策2) で掲げた新規事業の創出についても、ロボットセンシング※やIn-Situ計測技術の開発などが実用化に向け進展した。
主な事業における取り組みと進捗状況については以下のとおりである。
※2023年10月にロボット用高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」のセンサーヘッド分離型の新機種を上市。
機能開発を進めるとともに、新規用途開拓にも注力している。
(1) 繊維事業
a) 独自技術を活用した高機能素材やサステナブル素材の販売拡大、b) サプライチェーン全体を意識したQR対応と生産性向上に取り組んでいる。
a) については、高機能コットン素材「ネイテック」が好調であったほか、ユニフォーム分野である防災・難燃素材「ブレバノ」「プロバン」やアップサイクルシステム「ループラス」もおおむね計画どおりに進捗し、自社評価は「〇」としている。
一方、b) については、生産計画管理のデジタル化などのスマートファクトリー化によりQRや生産性向上に取り組むも、受注減の影響により目立った成果を上げるには至らず、自社評価は「△」としている。
(2) 化成品事業
a) 半導体やエネルギー関連市場における注力事業への経営資源集中、b) 軟質ウレタンや住宅用建材など基盤事業の販売・生産体制の効率化と新規ビジネスの拡大に取り組んでいる。
a) については、高機能樹脂製品の生産・開発体制増強に向けて、熊本事業所の新棟建設に着工したほか、エネルギー関連市場(太陽電池)向け機能フィルムの製造ラインを新設するなど、今後の事業拡大につながる投資を実行し、自社評価は「◎」としている。
b) については、軟質ウレタンにおける生産拠点の移管・統合や、住宅用建材におけるスマートファクトリー化・DXなど、基盤事業の収益性・生産性改善に取り組み、自社評価は「〇」としている。
(3) 環境メカトロニクス事業
a) 商品力強化による競争優位性の獲得と海外市場への拡販、b) 社会課題の解決に貢献する商品群の市場投入に取り組んでいる。
a) については、前述のとおり、ロボットセンシングやIn-Situ計測技術の開発を進めたほか、バイオメディカル事業において攪拌脱泡装置が海外向けに伸長し、自社評価は「〇」としている。
一方、b) については、家畜排せつ物をサラサラでクリーンな堆肥に再生できる「FUNTO」が飼料高騰による酪農家の経営環境悪化により苦戦するも、排ガス処理設備は好調に推移した。
また、新エネルギー関連では、アンモニアを燃料とする熱焼炉への脱硝装置を初受注しており、自社評価は「〇」としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)